153 / 237
第4章 最高神 編
第154話 【攻略対象 最高神リュザス】聖女レーナ誕生
しおりを挟む王城、謁見の間。
そこは訪れる者に権威を誇示し、畏怖を植え付けるために造られた場所だ。
城の中で一際豪奢な扉を開け放てば左右に巨大な柱が立ち並び、その背後の大きな窓から陽の光が差し込んで空間を荘厳に演出する。ホールの中央を色鮮やかな緋色の絨毯が真っすぐに貫き、玉座の据えられた最奥の壇上にまで一直線に伸びる。
中央を貫いた緋色は、踏み入れた者を否応なく奥へと誘う圧を持って迫り、その両脇には王侯貴族がずらりと居並んで、流れ行く異物に値踏みする視線を集中させる。
目的地である玉座の前まで、実際の距離よりも随分疲労を感じる道のりだ。
だが既に国王が座している以上、諦め悪く牛の歩みを決め込んでのったりと進むのは更なる心証の悪化に結び付きかねない。覚悟を決めて平凡村娘なりに美しい所作を心掛けて足を運ぶ。
「視線が痛すぎるわ……」
『蔓草で良ければ覆い隠してあげるけど?』
プチドラの言葉が終わらぬうちに、踝までの長いスカートの裾から蔓薔薇の茎が這い上り始め、両脇の貴族らからざわめきが起きる。
「ご先祖様、更に騒ぎを起こすのはお控えください」
レーナの左隣に立つエドヴィンが苦々し気な視線を向ければ、プチドラは『分かったわよぅ』としぶしぶ呟いて蔓の成長を止めてくれた。だが、何の変哲もない白色の簡素なドレスに天然の薔薇の蔓が這って葉を伸ばし、腰から下がクリノリンを付けた様に広がっているのはそのままだ。
ただ国王の前まで静かに歩くだけなのに、それすらスマートに出来ないのはヒロインではないからなのだろう。そうげんなりしているレーナに、右隣のアルルクが輝かんばかりの力強い笑顔を向けて来る。
「レーナが主役なんだから、どーどーとしてれば良いんだよ。その服だって凄く綺麗だし、レーナはカッコ良いからな!」
女性に向けての言葉としては落第点な発言だったのだが、蔓薔薇での装飾を褒められたプチドラは嬉しかったらしい。白地に緑の模様だったはずのスカート部分に、今度は大振りな薔薇の花が次々に咲き始めてしまった。しかもプリンセスピンクの花が一斉に満開となって、楚々とした素朴なドレスは、ガラリと印象を変えてこの世に二つとない華やかなものとなっている。
今回の訪城は、王城の宝珠に強引に近寄ったことへの謝罪の意味もある。だから真摯な反省の意を示して純白を纏ったのに、寸前で華美に路線変更することになってしまった。
(厳粛な場を乱す、ふざけた行いだって怒られるわよね。もぉ……)
頭を抱え込みたい衝動に駆られつつも歩を進めるレーナら一行は、程なく謁見の間の最奥へ辿り着いた。
玉座は僅か5段の階段を上がった高さ。けれど、謁見の間全体を睥睨するよう計算され尽くした場は、前に立つ者に現実以上の距離と緊張感を感じさせる。どんなお叱りの言葉を掛けられるかと、レーナの身は自然強張る。
「聖女レーナ。噂通りの稀有なる能力、しかと目にしたぞ」
満を持して発せられた国王の声は、どこか楽し気だ。そして何気なく国王が口にした「聖女」の冠詞に、何も聞かされていなかった貴族らがざわめく。それ以上に、呼び掛けられたレーナ自身が肝を冷やしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら
渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!?
このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!!
前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡
「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」
※※※
現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。
今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました!
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる