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第4章 最高神 編
第155話 【攻略対象 最高神リュザス】自称「朧気に宝珠の状態を把握できる」聖女
しおりを挟む(聖女って!? 今日は謝るために来たのよね? 辺境伯に、宝珠に接近した騒ぎを無かったことに出来ないから、ケジメは付けなきゃって言われて……あれは謝罪しろって意味じゃなかったの!?)
その辺の難しい遣り取りは、王家とエドヴィンの父――ドリアーデ辺境伯に任せきりにしていたレーナだ。プロムナードの日、騒ぎを起こした彼らは騎士らに追われてシュルベルツ領へ逃げ帰ったのだ。それから交渉云々の話になり、難しいことは解らないと、逃げたツケが回って来たのだとは思う。だが、それでも多少の非難を込めてエドヴィンに視線を向ける。
「父上の考えられた、もっとも穏便に済む方法だ。宝珠との縁の深いドリアーデ辺境伯が擁護する、『宝珠の異常を知る力』を持つレーナ。それはもう、ただの村娘じゃあ通らないだろ。ならば我が辺境伯家と王家が目を掛ける聖女とした方が、レーナの身を護れる」
嫌そうに顔を顰めながらも、淡々と説明するエドヴィンだ。
「私にもっと力があれば、ひっそりとレーナを護れるのに」
ぽつりと、口惜し気に呟く。
レーナとしても、大それた身分など持たずに自由に動ける身でいたかったのだから、その考えには大賛成だ。だが、彼が口惜し気に呟くに留めているということは、聖女の地位まで引っ張り出さなければ、宝珠に近付いた騒ぎは治められなかったということだ。
「聖女レーナは逸早く宝珠の危機に気付き、その身の危険を顧みず、宝珠に接近しようとしたのが過日の出来事の真実であった。宝珠はこの国の、いや、この世界の要。聖女レーナのお陰で適切な対応を行うことが出来た。褒めて遣わす」
国王が、謁見の間に集った全ての者たちに言って聞かせるように朗々と語る。
(胸が痛いわ)
世界を救う為よりも――推しに会うため、ついでにプチドラの圧しに負けたために宝珠の塔に近付いたのだ。そんな行動を美化されすぎて、罪悪感に潰されそうだ。
だが、両脇のエドヴィンとアルルクの態度は堂々としたものだ。彼らが一緒にその場に居てくれる心強さのお陰で、何とかレーナは平静を取り繕えた。
国王は尚も諸侯への説明を連ねる。それによるとレーナは「朧気に宝珠の状態を把握できる」能力の持ち主となっているらしい。
(実際には覚えてるゲームシナリオから、宝珠や、その化身がどうなってるか想像出来ちゃうだけなのよぉ……)
国王の賛辞に心の中でアワアワし続けるレーナは「我聖女なり」と胸を張ることが出来るほど、強心臓ではない。ただの平凡村娘を自負する小心者だ。だから国王から「何か一言」と話を振られたところで、慌てて謝罪の言葉を繰り出す。
「この度はっ……宝珠の塔に無断で近付き、皆様をお騒がせしたこと、誠に申し訳なく謝罪いたします!」
「よいよい。気にするでない。この王国に3人目の聖女が現れた慶事に比べたら、実害の無い騒ぎなど、取るに足りないことよ。むしろ警備の甘さを知らしめてくれて礼を言うぞ」
だがベルファレア国王は、拍子抜けするほど気安い調子で言葉を返してくる。
「同時代に3人もの聖女が現れるとは、なんという吉兆。よくぞ自らの能力を王都中央神殿に申し出てくれた。喜ばしいのう」
国王が視線を居並ぶ王侯貴族の最前列に向ければ、そこには白い聖女の衣に身を包んだシルヴィアと、彼女よりも繊細な装飾が施された聖女服を纏った金髪の女性が並んでいる。
謝罪への返事で、更にお褒めの言葉まで受け取ったレーナは、過分すぎる買い被りに背中がゾワゾワとむず痒くなって落ち着かない。
いや、もしかすると平民であるレーナを気兼ねなく利用するぞ!と言う宣言なのかもしれないと、不穏も頭をもたげて、余計に心がざわざわする。
とにかく誉められ、持ち上げられただけの謁見は、驚くほどスムーズに終了したのだった。
初めて出会った金髪聖女の、刺すような視線以外は――。
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