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第4章 最高神 編
第193話 【攻略対象 最高神リュザス】帰還! 顕現!?
しおりを挟む「レーナ!! 良かった、出て来た! 急に消えるから すっごく心配でっ」
白く薄い欠片がはらはらと崩れ落ちる視界に、夕陽に染まった王都大神殿の内装と、色鮮やかな赤髪が飛び込んでくる。
レーナの両肩を離すまいとがっしりと掴んで叫んでいるのは、顔をくしゃくしゃに歪めたアルルクだ。涙が出ていないのが不思議なほどの崩れた表情に、虚を突かれたレーナは大きく見開いた目を瞬いた。
「レーナ! 君が消え去ったと聞いて、気が気じゃかなかった」
すぐさま別の声と緑頭が目の前に割り込んできた。エドヴィンだ。抗議するアルルクをものともせず、レーナとの間を遮る赤い前腕甲に包まれた腕を払い除けて、自身の身の置き場にすり替える。背後にはクラウディオ王子のほか、大神官を始めとした神官たち、それにバルザックやシルヴィアの姿も見えている。皆一様に安堵の表情を浮かべていた。
「よかった」
呟いたのはレーナだ。成果を上げていない再会ではガッカリされてしまう……と危惧したからこそ、口を突いて出た言葉だった。けれども、間近でその言葉を耳にしたアルルク、エドヴィンは揃って「何もよくないんだからな!」「ひとりで消えるなんて、どれだけ私が心配したか分かっているのか!」と、口々に憤慨の言葉を放つ。
そして最後には「レーナが無事でよかった」と再び安堵の笑顔を見せた。
これで一件落着――な訳はない。
黒い青年に宝珠や化身が襲われ、吸収される被害は止められていないし、それによって訪れる世界の危機を防ぐ方法も見つかってはいない。
何も好転はしていないのだ。ただ、レーナが「攻略対象らの力を借りてなんとかする!」と云う、なんとも他人任せな方針を決めた だけ だ。
そして更に、新たな問題が発生していた。
「あの、そちらの方は……何やらただならぬ神気が……」
シルヴィアが、おずおずとレーナに声をかけつつ、しきりに皆が立つのと逆の位置を視線で示して見せる。大神官をはじめ、神殿関係者らの方が反応は顕著で、シルヴィアの見る方向に視線が釘付けとなり、皆一様にクワッと両目と口をかっぴらき、身体を戦慄かせている。
「やっだなぁー君たち、そんなお化けでも見たような顔して。僕は最高神なんだけどぉー? 知ってる? 知ってるけど知らないよね。僕は、ちゃぁーんと実在するんだよ」
底抜けに明るく、ふざけた口調でありつつも、闇を孕んだ声。その主は、レーナが戻ると同時に、現世に顕現していた。振り返って彼を認めたレーナに、パチリと片目を瞑って見せる軽薄な反応まで伴って。
「レーナが僕を置いて勝手に行っちゃうからぁ、付いてきちゃった」
「リュザス!?」
声を裏返らせながらレーナが叫ぶ。アルルクとエドヴィンは、彼女の口から嫌と言うほど聞いた名前に、分かりやすく表情を歪める。最高神に対して尊敬の欠片もない、むしろ邪魔者を見る反応だ。だが、それはこの世界の普通の反応ではない。
神官らはもれなく感動に打ち震え、老若問わず驚愕と憧憬の視線を向けている。そのうちにレーナの視界の隅で、年嵩の大神官がフラリと倒れた。
慌てて聖女シルヴィアが駆け寄れば、彼の顔は赤く上気しており、どこか恍惚感を漂わせている。
「興奮のあまり気を飛ばしておしまいになるなんて……。あの黒い青年に立ち向かうには、最高神様の顕現された今こそであるはずなのに、困った大神官様ですわ」
困り顔で呟きつつ、シルヴィアが手慣れた様子で光魔法を使う。
『治癒』の魔法を大神官に流しながら「けど」と呟いて視線を動かせば、レーナと、彼女を取り合って押し合いを繰り広げる赤緑の2人が目に入る。その3人が苦々しく向ける視線の先には、最高神リュザスと自ら名乗った虹色髪の麗人が佇み、超然とした笑みを湛えている。
「こちらの邪険な反応も如何なものでしょう」
ほう、と憂いを乗せた吐息を吐いたシルヴィアは、ここ数か月ともに化身の延命に努めてきたバルザックとクラウディオ王子を仰ぎ見る。視線に「困りましたね」との思いを込めて向ければ、彼らからも同様に、呆れつつも途方に暮れた表情が帰って来たのだった。
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