独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

文字の大きさ
202 / 237
第4章 最高神 編

第204話 【過去】黄昏を永劫に求める最高神

しおりを挟む

 ―― どうして、こんな酷い真似をするんだ!! ――

 かたちをとることもままならぬ化身が、血を吐く叫びを上げる。その視線の先では圧倒的な力に満ちた美貌の主が、指先に黄金の光を纏った力の残滓を滴らせ、真っ赤な舌でペロリと嘗め取った。

「どうして? 僕がそれを説明してあげる理由ある? けど僕はやさしいから特別に教えてあげる」

 ひ ま つ ぶ し

 口の形だけで告げた無邪気な笑顔の青年に、尋ねた化身は表情を無くし、次いでくしゃくしゃに顔全体を歪める。

 ―― あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁ ――

 喉の奥から湧き上がる音は獣の咆哮に似て、けれど胸を抉る絶望に満ちた響きは人らしい絶叫で――その断末魔に、青年は満足げに目を細める。

 ―― 許さない!! 許さない!!! リュザス!!!! ――

「君に許しを得る必要なんてないでしょ? それに僕の名をそんな風に呼ぶなんておかしいよ。僕に創られたくせに」

 ―― 狂ってる! 人を救うために与えた宝珠ちからを、自分で壊すなんて! ここまで力を奪われたら、この陽の宝珠オーブはもう永くは保たないっ ――

「だろうね。永遠に、当然のように、そこに存在し続ける物なんてない」

 ―― これが消えたら、地上に瘴気が溢れる! 人間が持つ【光の力】までもが失われて、永劫瘴気を消すことが出来なくなる!! 分かってやっているのか!? ――

「うん、それが一番大切なものだよね。僕がこの世界を壊さないために、初めに最も大きな力を分け与えた宝珠なんだもん。けどさぁ、陽の加護って当たり前になりすぎちゃってるよね?」 

 ―― 無ければ人や動物は当然存在していない。当たり前であって然るべきものだ! ――

 それこそが困ったところなんだと苦笑する虹色髪の青年に、陽の宝珠オーブの化身は得体の知れない物を見る目を向けた。気が触れたのか、と。だが最高神はこれまでと寸分違わぬ慈愛に満ちた微笑を浮かべている。

「ああ、良いこと思いついちゃった」

 ―― なにを…… ――

「苛めないよ? 僕は優しいもの。僕に創られた存在に、選択する権威をあげようかと思って」

 呆然と見詰める化身の額に、すらりとした人差し指を当ててツンと突く。

 ―― あ゛がっ!! ――

 細やかな挙動で、化身の力の大半が削がれた。リュザスは宝珠オーブの時と同じく、指先に纏わりついた黄金の光をクシャリと握り潰す。

宝珠オーブの力も消して、君の力も消して。ほら、このままだったらすぐに地上から陽の加護はきれいさっぱり消え去っちゃうね。いっぱい死ぬんだろうなぁ。瘴気が溢れて、陽光がなくなったらさ」

 ―― ぁぁ……ぁ ――

「どっちかが頑張って残ったら、生き物は助かるんだろうねぇ」

 ―― なん……て、こと……を ――

 再びリュザスは、指先に滴った『陽の宝珠オーブ』の化身から削り取った力に、真っ赤な舌を這わせて嫣然と笑む。

「まぁ、足掻いて見せてよ」

 ―― 許さない!! 許さない!!! 傲慢で冷酷なエゴイスト!!!! ――

「そうでないと僕は存在できない。僕は退屈なんだ。世界は僕を愉しませなければ存在できないんだから、仕方ないよね」



✼••┈┈┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈┈┈••✼



 ベルファレア王国の宝珠の塔に祀られた『陽の宝珠オーブ』は、その後も献身的に魔力を集め、渡し、回復させようと努める化身の尽力で、幾何いくばくかは持ちこたえていた。
 だが、既に人にとっては在って当然な陽の光と、瘴気を浄化させる自然の力は、崇拝すべきものでは無かった。

 信仰は弱まり、宝珠オーブに仕える者にも邪な思いを抱えるだけの者が宛がわれて、宝珠の回復はすぐに行き詰まった。

 ―― このままでは完全に『陽』の力は失われる ――

 化身は血の涙を流しながら、力の消えかけた宝珠オーブを飲み込んだ。自身の力と溶け合わさせて、人の世に必要不可欠な陽の力を残すために。

「わるいんだぁー、君を生み出した親ともいうべき宝珠オーブを飲み込んじゃうなんて。どう? 苦しい? 嫌悪感、罪悪感、どんな感情が大きい?」

 見計らっていたのだろう。即座に姿を見せた最高神が、好奇心に満ちた笑顔でふわふわと纏わり付きながら、化身の心を抉り続ける。

 ―― お前だけは、永久に許さない!! ――

 深すぎる憎しみは、化身の風貌をめ付けた先にあったのと同じ姿に変質させた。
 絶望と苦しみは、瘴気を引き寄せ彼の持つ色を黒く染め上げた。

「許されようなんて思わない。黄昏を永劫に求め、存在し続けなければならない僕には、許しなんて何の救いにもならないからね」

 ―― お前の存在を消してやる!! 僕がお前に成り代わる!!! ――

「できるものなら」

 愉しみにしているよ、と声だけを残してリュザスは姿を消した。

 そして、リュザスと瓜二つの――けれど纏う色彩は黒となった青年の耳に届いたのは、愚かにも真の聖女を妬み、排除しようとする王女の声だった。

 ―― 大気の化身の気配を感じ取れないのは、リュザスあいつが何かやったのか? まぁ良い、僕が動きやすくなるために、利用させてもらおうか ――

 ひとりごちた黒い青年は、それから着実に力を蓄え始める。



 最高神を終わらせ、成り替わるために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...