独占欲強めの最高神は、モブ娘からの一途な愛をお望みです!

弥生ちえ

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第4章 最高神 編

第204話 【過去】黄昏を永劫に求める最高神

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 ―― どうして、こんな酷い真似をするんだ!! ――

 かたちをとることもままならぬ化身が、血を吐く叫びを上げる。その視線の先では圧倒的な力に満ちた美貌の主が、指先に黄金の光を纏った力の残滓を滴らせ、真っ赤な舌でペロリと嘗め取った。

「どうして? 僕がそれを説明してあげる理由ある? けど僕はやさしいから特別に教えてあげる」

 ひ ま つ ぶ し

 口の形だけで告げた無邪気な笑顔の青年に、尋ねた化身は表情を無くし、次いでくしゃくしゃに顔全体を歪める。

 ―― あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁあ゛ぁあ゛ぁぁ ――

 喉の奥から湧き上がる音は獣の咆哮に似て、けれど胸を抉る絶望に満ちた響きは人らしい絶叫で――その断末魔に、青年は満足げに目を細める。

 ―― 許さない!! 許さない!!! リュザス!!!! ――

「君に許しを得る必要なんてないでしょ? それに僕の名をそんな風に呼ぶなんておかしいよ。僕に創られたくせに」

 ―― 狂ってる! 人を救うために与えた宝珠ちからを、自分で壊すなんて! ここまで力を奪われたら、この陽の宝珠オーブはもう永くは保たないっ ――

「だろうね。永遠に、当然のように、そこに存在し続ける物なんてない」

 ―― これが消えたら、地上に瘴気が溢れる! 人間が持つ【光の力】までもが失われて、永劫瘴気を消すことが出来なくなる!! 分かってやっているのか!? ――

「うん、それが一番大切なものだよね。僕がこの世界を壊さないために、初めに最も大きな力を分け与えた宝珠なんだもん。けどさぁ、陽の加護って当たり前になりすぎちゃってるよね?」 

 ―― 無ければ人や動物は当然存在していない。当たり前であって然るべきものだ! ――

 それこそが困ったところなんだと苦笑する虹色髪の青年に、陽の宝珠オーブの化身は得体の知れない物を見る目を向けた。気が触れたのか、と。だが最高神はこれまでと寸分違わぬ慈愛に満ちた微笑を浮かべている。

「ああ、良いこと思いついちゃった」

 ―― なにを…… ――

「苛めないよ? 僕は優しいもの。僕に創られた存在に、選択する権威をあげようかと思って」

 呆然と見詰める化身の額に、すらりとした人差し指を当ててツンと突く。

 ―― あ゛がっ!! ――

 細やかな挙動で、化身の力の大半が削がれた。リュザスは宝珠オーブの時と同じく、指先に纏わりついた黄金の光をクシャリと握り潰す。

宝珠オーブの力も消して、君の力も消して。ほら、このままだったらすぐに地上から陽の加護はきれいさっぱり消え去っちゃうね。いっぱい死ぬんだろうなぁ。瘴気が溢れて、陽光がなくなったらさ」

 ―― ぁぁ……ぁ ――

「どっちかが頑張って残ったら、生き物は助かるんだろうねぇ」

 ―― なん……て、こと……を ――

 再びリュザスは、指先に滴った『陽の宝珠オーブ』の化身から削り取った力に、真っ赤な舌を這わせて嫣然と笑む。

「まぁ、足掻いて見せてよ」

 ―― 許さない!! 許さない!!! 傲慢で冷酷なエゴイスト!!!! ――

「そうでないと僕は存在できない。僕は退屈なんだ。世界は僕を愉しませなければ存在できないんだから、仕方ないよね」



✼••┈┈┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈┈┈••✼



 ベルファレア王国の宝珠の塔に祀られた『陽の宝珠オーブ』は、その後も献身的に魔力を集め、渡し、回復させようと努める化身の尽力で、幾何いくばくかは持ちこたえていた。
 だが、既に人にとっては在って当然な陽の光と、瘴気を浄化させる自然の力は、崇拝すべきものでは無かった。

 信仰は弱まり、宝珠オーブに仕える者にも邪な思いを抱えるだけの者が宛がわれて、宝珠の回復はすぐに行き詰まった。

 ―― このままでは完全に『陽』の力は失われる ――

 化身は血の涙を流しながら、力の消えかけた宝珠オーブを飲み込んだ。自身の力と溶け合わさせて、人の世に必要不可欠な陽の力を残すために。

「わるいんだぁー、君を生み出した親ともいうべき宝珠オーブを飲み込んじゃうなんて。どう? 苦しい? 嫌悪感、罪悪感、どんな感情が大きい?」

 見計らっていたのだろう。即座に姿を見せた最高神が、好奇心に満ちた笑顔でふわふわと纏わり付きながら、化身の心を抉り続ける。

 ―― お前だけは、永久に許さない!! ――

 深すぎる憎しみは、化身の風貌をめ付けた先にあったのと同じ姿に変質させた。
 絶望と苦しみは、瘴気を引き寄せ彼の持つ色を黒く染め上げた。

「許されようなんて思わない。黄昏を永劫に求め、存在し続けなければならない僕には、許しなんて何の救いにもならないからね」

 ―― お前の存在を消してやる!! 僕がお前に成り代わる!!! ――

「できるものなら」

 愉しみにしているよ、と声だけを残してリュザスは姿を消した。

 そして、リュザスと瓜二つの――けれど纏う色彩は黒となった青年の耳に届いたのは、愚かにも真の聖女を妬み、排除しようとする王女の声だった。

 ―― 大気の化身の気配を感じ取れないのは、リュザスあいつが何かやったのか? まぁ良い、僕が動きやすくなるために、利用させてもらおうか ――

 ひとりごちた黒い青年は、それから着実に力を蓄え始める。



 最高神を終わらせ、成り替わるために。
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