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第4章 最高神 編
第211話 【攻略対象 平凡村娘】堕ちかけている最高神
しおりを挟む平凡村娘に最高神の代わりとなる大仕事など出来るわけがない。
生命の再生など。
『あら、妙な気配と思ったら水男じゃない。あんたってばようやく温度の有る想いを、誰かに向けられるようになったのね』
レーナの困惑は、扉の下の隙間からひょっこり現れた存在によって霧散した。
鮮やかな緑のソラマメに、つぶらな目口が付いた物体が、頭に当たる部分から生えた金色の小さな双葉を弾ませてレーナの肩に登る。
『その気配は精霊姫か。見るたびに姿が変わっているな』
軽く片眉を上げ、僅かに驚きを滲ませたヴォディムだが、すぐに納得したようだ。
そう、前回ヴォディムと出会った時の精霊姫は、プチドラの姿だった。その変化の原因をつくったのはレーナだ。
『あたしは、あたしよ。当たり前だけど、愛らしいでしょ? 優秀なあたしの血を引く子孫と、レーナが、あたしのために尽くすんだもの。生きるために、やる気になるってもんよね』
『それで今のお前には、虹の主に魅入られし娘だけでなく、お前の子孫の気配が色濃く混ざっているのか』
ヴォディムは、以前出会ったプチドラがレーナから何らかの影響を受けて変化していることに気付いていた。故に、世界を滅亡させんとする最高神でなく、思いがけぬ力を奮うレーナに、一縷の望みを抱いてやってきたのだ。
『さて、娘よ。ワタシは代わりのない、この一つきりの存在を消したくない。力を貸してくれぬか』
リュザスと同じ超常の存在だというのに、ちっぽけな存在に心を砕くヴォディムがやけに人間臭く感じられた。ふいに、レーナの身を案じて叱りつけてきたアルルクや、エドヴィンの姿と重なる。
(助けたくはあるのよ。けど、今ゾイヤを何とか出来たとして……クロ男がまたやって来て力を奪われたら全てが水の泡になっちゃう。
それだけじゃない。リュザスは、積極的に手を下してはいないけれど、世界が崩壊しても構わないって思ってるのよね)
ならば今、ただ修繕能力でゾイヤを助けたとしても、その先に希望は無い。レーナ自身も、これから自分の想いに向き合って行こうと未来を向いたばかりなのだ。
終わらせられてはたまらない。
「ただで、って訳にはいかないわ。取り引きしましょう。魔族や魔獣、それにクロ男――今私たちから未来を奪おうとしてる3つの脅威! これを、倒すのに手を貸して。頑張った結果が実らないのは、遣り甲斐が無いもの」
『それらはワタシにとっての脅威でもある。取り引きにならぬが、良いのか?』
「良いの。わたしだって、力を尽くすけど、出来るとは言い切れないもの。それでも良ければ手を組んで欲しいわ」
さっと握手する手を差し出したレーナに、ヴォディムが釣られてその手を取る。
だが、繋いだ手はレーナの腕を引いたリュザスによって、一瞬で引き離された。
「レーナってば、水のも近くに引き入れちゃうのぉ!? レーナは僕だけを見て欲しいのに、人が良すぎるよぉ。僕、妬いちゃうなぁ。魔獣も、魔族も、ナニモカモを消しちゃえばレーナは僕のこと見てくれるのかなぁ?」
可愛らしく両頬を膨らませる最高神の瞳は、ひどく陰鬱だ。内心で、どうしたらレーナは自分だけを向いてくれるのかと算段するのが漏れ出ている。レーナの周囲に侍る全てを消したいと希う執着心も、隠しきれていない。
「リュザスは気の進まない手助けなんてしないで、心穏やかに見守っていて! わたしが、頑張るから!」
だがカラリと笑って無邪気に申し出を受け流すレーナに、気勢をそがれる最高神だ。紙一重で最高神の闇落ちを止める快挙を果たしているのだが、当人には何の自覚もない。
陰鬱な影を纏った最高神を言葉で翻弄し、容易く陰に堕ちぬよう気を逸らすレーナの(無意識で)巧みな遣り取り。
息を詰めて見守っていた豆ドラだったが、結果に安堵したところでヴォディムがじっと自分の手を見詰めていることに気付いた。レーナの手を取っていた己が手だ。
『精霊姫よ。あの娘の持つ力は複雑だな。虹の主の加護に紛れて、【木】と【水】と【火】と【土】と……それに【大気】までもが混じり合っている』
『そうなのよ。レーナは関わった宝珠や化身の力を取り込んじゃうみたいなのよね。
けど何で、お城にずっと隠されてた【大気】の力をレーナが持ってるのか、謎なのよねぇー……』
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