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番外編.彼の名は筋肉仮面! 断罪の運命に抗う悲劇のヒーローである!
ラブコメ界定番かつ伝説の男の夢展開――なんじゃこりゃあああ!!
しおりを挟む「(まさか!!!)」
これは、ラブコメ界定番かつ伝説の男の夢展開なのではーーー!! 高鳴る胸の鼓動と共に、俺はカッと目を見開く。
「―――……」
俺の手は、ソルドレイドの前で仁王立ちになり、大股を開いた男の、こっ……かんに!?
なんじゃこりゃあああ!!
口をハクハクとさせるが、ショックのあまり声もでない。確かに俺のポーズはサイドチェストだった。としたら、前屈みの俺の手は胸よりも下になってる。なんてこった!
それに! スレンダーな男の癖に、なんでここだけ、こんなにボリューミーなんだよ!! 俺は悲しいぞ! 色々となっ!! あぁ、そうだよ。悪役なのに夢見た俺が身の程知らずだったぜ。
「ひっ……ヒロイキ。親友ならば、親愛の情によって触れることも多いだろうが、こ、こここ……っかんは―――はっ! お前まさか、この『あああ』と親友以上の関係を求めているのか!!!」
股間の主から発せられた声は、俺の知る男のモノだった。そうか、ソルドレイドはこのゲームの主人公『あああ』の婚約者。彼女の危機を察して駆けつけたんだな! さすが主人公!! 確かに足元には、なんだか嬉しそうな、恍惚の表情を浮かべた刺客たちが「今日は手を洗わないぞー」なんて呟きながら倒れている。俺はすぐにでも洗いたい。とにかく筋肉が俺を守ってくれたんだろう。
主人公への敗北感を、ちくりと痛む胸と、手の平へのもったりとした感触と共に残した俺は、光る涙の滴をホロリと何粒も溢しながら、脱兎のごとく駆け出す。
負け犬となって逃げだした俺の背後で、仲睦まじく会話を交わす声が聞こえていた。
「もぉぉっ! 何で助けになんて来るんですの!? こんな刺客の相手なんて、遊びにもならないって分かってますわよね?」
「何を言う! 俺はヒロイキと親友で、お前の婚約者だ。この場に居合わせて親交を深める権利は、充分にある!!」
「私とは幼少期からの縁ですから今更――だとは思いますが? その親交とやらは誰とのものですの?」
「そのっ、正体不明の筋肉仮面との、だな」
「今さっき、ヒロイキ様のお名前で呼んでいたばかりでしょうが! んもぉ、貴方様の最近のちょっと変・な行動は目に余りましてよ!!」
「それはアイツの筋肉が悪い!」
「んまぁ! ヒロイキ様の筋肉は素晴らしくてよ!!」
主人公とメインヒロインの声が俺を追い立てる。悪役の俺には入り込めない絆を感じる。
俺の『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』悪役生活はまだまだ続く。気を抜けば、いつもひょっこり現れる主人公に断罪されて僻地の強制収容所送りになるか、男娼に堕とされるか……とにかくゲーム通りならロクでもない未来が待ち受けている!!
事あるごとにゲーム補正が働く日常生活だって気が抜けないぜ!
俺の穏やかな筋トレライフの破滅フラグ回避生活は、終わらない。
《完》
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