職業:愚者。

瀣田 花音

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プロローグ1.0

女神の苦労の始まり

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私は女神チャミュエラ。死んだ生物の魂に再び肉体を与えて転生の手助けをする仕事をしているの。普段はそこまで忙しい訳ではないのだけれど、下界で伝染病が流行ったり、戦争があったり、飢餓があったり、天変地異みたいな、人間が沢山死ぬイベントがあると少しバタバタするわね。
 そんな私だけれど、今は結構暇なのよ。こういうときはいつも友達に連絡したり、ゲームしたり、下界の人間にあだ名つけて観察してたりするんだけれど、それも全部飽きちゃって。だから、こうやって日記つけて遊んでます。てへ。
 っても毎日どこかしらで人は死ぬし、他の生き物の中でも魂のレベルが高い子は人間として役目を与える為にここに呼ばれる事になっているから、人が全く来ない日ってのはないわね。
 ただ、今日に限ってはまだ人が来てないわ。私の管轄じゃないところに魂が行ってるのかしら。因みに、私の管轄じゃない人間って事は前世で次は人間以外になりたいって願った子か、すっごい悪い人とか、逆に神様適性があるって見込まれた子は別の所に飛ばされるわ。
 人間ってすっごい悩むし考える生き物だから、同じ生き物になりたいって思って死ぬ子が案外少なかったり………
 私でも絶望する事が多いのに、すっごい引きずるのよね、人間って。過去なんて過ぎた事なんだから、新しい始まりだと思って気持ちを切り替えればいいものを。(っても友達のヨルカが彼氏できたーって紹介してきた相手が、私の狙ってた天使様だった時の事は未だに根に持ってる………かも)
 
 しかし、本当に暇ね。どれだけ平和なの。この世界。
 平和っていう割には死んだ魂は愚痴ばっか吐くことも多いのに。愚痴吐く暇があったら目の前のことやればいいのに。裏切りなんて天界でもザラにあるのよ。こういう人がまた人間に転生したがる意味がよく分からないわ。
 まぁ、私は女神なんで、そういう事は人間には言わないようにしてるの。仕事は真面目にやってますよって事。
 って感じで頬杖ついて待ってると、机の上に置いてあった金のベルが浮いて鳴り始めた。これが、死んだ魂がやってきますよっていう合図。魂って行っても姿形は死ぬ前の健康的な姿そのものよ。足が無いとかそういうのはない。でも、○武さんとかってここ来たらどうなるんだろう………? 足とか腕生やしてもらえるのかな。
 突然鳴ったものだから、急いでお化粧直しして、お仕事モードに変身。手鏡に映る私今日もかわいい。美しい。綺麗。最高。
 よし、いつでも来なさいっての。
 光の扉が開くと、そこから魂が現れる。姿は髪を七三ワケに整えた好青年。そこそこのイケメンだ。天使様だったら狙ってたかも……… 今は仕事、仕事。

「彷徨える魂よ。今生を完結せし、来世への循環を求み、新たなる世界への扉を開く勇敢なる意思を今ここに享受しましょう」

 よし、言えた。マジこの思春期の男の子が考えそうな台詞言わされるの骨が折れるわ。最初はメンタル骨折してスライムになりそう、とかぼやいてたわね。

「随分豪華だな」

「ええ、ここは魂の器。女神の門と呼ばれる魂の拠り所ですから」

「そうか、これが世の中の………………いや、それは違うな」

 まだ自分が死んだ事を認識していないのかしら、この子。

「貴方の今生での魂は役目を終えました」

「まぁ、こういうのも……………… いや、やはり聞くべきか」

「あ、あの………………」

 この子もしかして話聞いてないな。パニックで現状を理解しなかった子も今までで何人もみてきたけど、この子はなんか違う気が………
 と、様子を伺ってるとその子と目があった。すっごい真っ直ぐな眼差しをしてる。狩りをする獣の目に近いようで、そこにオーラのようなものを感じる、純粋な眼。天界にも中々あんな覇気のある眼を持ってる天使いないのに。
 もしかしたらこの子が次の――――――


「女に問う! ここがリク○ートエージェントかァ!」

 今までで一番ヤバい魂が来たかもしれない。
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