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3章 貴族になる

13話 影平の苦言

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 四宮は、扶桑に負けない立派な町である。
 漆喰の高さ3メートル位の瓦葺の塀に立派な門がある幅8メートル位の木製の両開き戸で高さは5メートル位ある。
 門番は4人おり、人の出入りも多そうだ。
 俺たちが門に到着すると門番の1人が連絡に走る。
 俺たちは門をそのまま通過する。
 町の人々が俺たちを見ているが表情は明るい。
 菊の統治はうまくいっているようだ。
 領主の館に着くと留守を任されていた石川影平いしかわかげひらが迎えに出る。
 影平は片膝をつき、牛車の中から菊が出てくるのを待つ。
 菊が出てくると
 「姫様、長旅お疲れ様です。」
 「町に変わったことはあったか。」
 「いいえ、平穏です。」
菊は屋敷に向かいながら言う
 「つな様、清音様こちらへ。」
俺たちは菊について行く。
 影平は俺たちを睨み
 「姫様、この者たちをどうするおつもりですか。」
 「我の部屋の隣の部屋を使わせる。」
 「なりません、ただでさえ不穏な噂が流れています。」
 「不穏な噂とは何です。」
 「つな殿が姫様を妻にしようとしているとか。」
 「それは違います、私が夫にしようとしているのです。」
 「姫様、お考え直しを・・・」
 「つな様は我にふさわしい男です、官位も何とかなりましょう。」
 「このような成り上がりの下郎はふさわしくありません。」
俺は言われる通りだと思う
 「今の言葉取り消しなさい。」
菊は怒る
 「できません。」
 「なら、あなたを解任します。」
 「分かりました、つな殿、申し訳ありません。」
影平は断腸の思いだっただろう。
 俺は影平に恨みを買いながら菊の後について行く。
 清音のことを何も言われなかったのは幸いだ。
 俺たちが、部屋に着くと菊が言う
 「影平を悪く思わないでくれ、あれは真面目なのです。」
 「気にしてませんよ。」
俺は菊が俺を夫にすると公言した方が気になる。
 俺と清音は大牙の牙を換金しに町に出る。
 店に入ると、店主が怒鳴る
 「忌み人は入って来るな。」
俺と清音は鉄製の札を見せる。
 店主は態度が変わり
 「姫様の関係の方でしたか、どうぞ入ってください。」
 「これの換金を頼む。」
俺は大牙の牙を102本出す。
 「大牙をこんなに狩ったのですか。」
店主は驚く。
 大牙の牙は1本銀貨1枚なので102本で金貨10枚と銀貨2枚になる。
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