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23話 コース料理

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 あやめは九郎に言う。
 「そろそろ帰りましょ。」「僕、駅の近くのレストラン予約してたよ。」
九郎はレストランを予約していたことを思い出す。玉枝は邪魔になるからと姿を見えなくしている。
 「九郎ちゃん、がんばってレストラン探したんだよ。」
玉枝の声があやめにも聞こえる。あやめが言う。
 「玉枝さんの声が聞こえるわ。」「あやめちゃんにも聞こえるようにしているの。他に人に聞こえないから気をつけてね。」
 「はい、分かりました。」
あやめは九郎がこうやって玉枝とやり取りをしていたのだと思う。
 九郎とあやめは駅に向かうバスに乗る。
 「あやめ、今日はいろいろあったね。」「私は九郎に驚かせられてばかりだわ。」
 「ごめん。」「いいのよ。九郎のこと分かったんだもの。」
 「あやめ。」「何、九郎。」
 「名前を呼んでみたかっただけ。」「うれしい?」
 「うれしいよ。」「そうなんだ。」
あやめは九郎にもたれかかる。九郎はドキドキする。名前を呼ぶようになってから一層あやめがかわいく見える。
 駅に着くとレストランに向かって歩く。2人は予約時間に間に合う。そこはイタリアンレストランである。
 九郎はコース料理を頼んでいる。食前酒にオリーブオイルを塗ったパンが出てくる。次にサラダが出てくる。
 玉枝は見たことがないのか出てくる料理に興味津々である。
 ミネストローネの次にはパスタが出てくる。九郎は緊張して味どころではない。あやめは出てくる料理を楽しんでいる。
 「ここの料理、おいしいね。」「そ、そうだね。」
 「九郎、緊張している。」「あやめと2人きりだから・・・」
 「私、出てくるものに文句付けたりしないよ。」「違うよ、あやめがかわいいから緊張するんだ。」
あやめが赤くなる。次に子羊のグリルが出てくる。玉枝が言う。
 「興味深いわ。あやめちゃんお味はどお。」「おいしいよ。」
 「一度挑戦してみたいわ。」「その時は手伝っていい。」
 「もちろんよ。」「一緒に作りましょ。」
そして野菜のソテーが出てくる。最後にデザートのケーキとコーヒーが出てくる。
 九郎とあやめは十分腹が膨れる。夕食は九郎が支払う。あやめは九郎が少し背伸びをしたなと思う。
 しかし、あやめはそんな九郎を少しかわいく感じる。
 2人は列車に乗り、バスに乗り換えて帰る。久沓神明社に付いた時には夜遅くなっている。
 「ごめんね。遅くなっちゃった。」「いいわよ。」
 「お父さん心配しているかもしれないよ。」「そうかもしれないね。」
九郎は一久に謝ることにする。インタフォンを押すと一久が出てくる。
 「さあ、翼君も入って。」「遅くなってすみません。」
九郎は一久に謝る。一久は気にしていない様子で言う。
 「遅いから今日は夕食を食べていきなさい。」「私、九郎と夕食食べたわよ。」
 「本当かい。」「あやめと夕食を済ませています。」
 「君たち名前で呼び合うようになったんだね。」「まあ、その・・・」
 「めでたい。翼君、いや九郎君、一杯やろう、祝い酒だ。」「はぁ。」「お父さんに付き合ってあげて。」
あやめが九郎に頼む。玉枝が「いいな」とうらやましそうにする。
 この晩、九郎はあやめの家に泊まることになる。
 しかし、寝たのは一久と一緒だった。
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