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92話 昔の出来事

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 玉枝が月ヶ瀬村の五郎丸について話し始める。
 「私が月ヶ瀬村に通りかかったのは500年くらいだと思うわ。」「思うってはっきり覚えていないの。」
 「いちいち数えていないわよ。その時は、沼の近くに集落があるだけだったの。その集落は鬼におびえて暮らしていたわ。」「鬼が悪さをするのですか。」
 「生贄を差し出していたの。五郎丸は鬼の大将で5,6匹の鬼を従えていたの。」「玉枝さんはそれを助けたんですね。」
 「いいえ、村人は私を捕まえて生贄にしょうとしたから暴れてやったの。」「そうですか。」
九郎は集落の惨状を思い浮かべる。
 「その時、蛇神が私に協力を求めてきたのよ。」「神様と共闘したのですか。」
 「そうよ、私は鬼たちを消し去ろうとしたんだけど蛇神が鬼たちを封印したのよ。」「神様は鬼を許したのですか。」
 「封印はつらいわよ。殺した方が楽だと思うわ。」「玉枝さんは封印されたことがあるの。」
 「言いたくありません。」
九郎たちは、玉枝が封印されたことがあるのだろうと思う。
 「封印が弱まっていると言っていたけど、蛇神様が弱っているの。」「行ってみないとわからないけど、その可能性があると思うわ。」
一久が九郎に言う。
 「今回は九郎君はいかない方が良いと思うよ。危険だ。」「でも僕は見ることが出来ますし、玉枝さんがいます。」
 「私が守るから大丈夫よ。」「今回はいつもと違うよ。」
 「僕は行きます。」「危険かもしれないから気を付けるんだよ。」「分かりました。」
 「九郎、大丈夫?」「気を付けていくから平気だよ。」
あやめも心配そうな顔をする。九郎は笑ってみせる。
 九郎と玉枝は、明日一久と朝早く出発するため、あやめの家に泊まることになる。
 夜になり、九郎は風呂を借りる。彼が風呂に入ると玉枝も裸で風呂に入って来る。玉枝は彼の体を丁寧に洗い始める。
 九郎は玉枝に言う。
 「玉枝さんは、蛇神様と知り合いなの。」「そうよ。」
 「悪い予感がするけどどうするつもり。」「蛇神と封印を直すつもりよ。」
 「封印が壊れたらどうするの。」「鬼たちを殺すだけだわ。」
 「勝てるの。」「大丈夫よ、負けることはないわ。」
玉枝は自信ありそうだが、九郎の心配は晴れない。
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