同棲しているけど彼女じゃない～怨霊は恋のキューピット

134話 裏切るなよ

　九郎は一睡もできずに朝を迎える。玉枝が起きてきて朝食を作り始める。彼はこれまで意識していなかったが、毎日彼女の手料理を食べていることに気づく。
　かわいい美女の手料理、考えると顔が赤くなる。
　玉枝はテーブルに料理を並べると九郎に声をかける。
　「九郎ちゃん、起きないと友達が来るわよ。」「うん、わかった。」
九郎は起き上がると玉枝の顔を見ないようにして顔を洗いに行く。彼はどんな顔をして玉枝と顔を合わせればよいのかわからないのだ。
　彼は顔を洗いながら、とりあえずいつも通りでいいよなと自分に言い聞かせる。そして、テーブルの前に座ると「いただきます」をして朝食を食べ始める。
　玉枝は九郎のよそよそしい態度が気になる。彼女は前かがみになると上目遣いで九郎を見て言う。
　「九郎ちゃん、私、何か気に障ることした？」「何もないよ。いつも通りだよ。」
九郎は玉枝が前かがみになったため胸元が強調されて見え、上目遣いで顔を近づけられて、ドキッとしながら答える。
　「オムレツおいしいよ。玉枝さんのオムレツすきだなー」
九郎は何とか話題をそらそうとする。
　「そお、うれしいわ。」
玉枝は嬉しそうに微笑む。九郎には何でもなかったことが新鮮に映る。２人は会話が続かない。
　九郎は食べ終わると着替え始める。玉枝もパジャマから服を変える。
　ベージュのシャツに濃い茶色のパンツである。そして、気配を小さくしてつよしたちに見えないようにする。
　すると玄関のインターフォンが鳴る。九郎が玄関ドアを開けるとつよしがいる。
　「おはよう。」「おはよう、つよし。」
　「今朝は玉枝さんいないのか。」「今日はいないよ。」
　「俺の朝の楽しみが～」「残念だったな。」
すぐにあやめと美琴が来る。九郎たちは歩いて大学へ向かう。
　大学の講義が終わると九郎はつよしに言う。
　「２人で話したいけどいいかな。」「僕と2人でか。愛の告白とか。」
　「違うよ。まじめな話なんだ。」「分かったよ。」
九郎とつよしは、あやめと美琴と別れて人のいない教室に入る。しかし、玉枝がついて来ている。九郎は言う。
　「２人きりで話したいんだ。」
それを聞いて玉枝も教室から出ていく。つよしは訳が分からず言う。
　「さっきから２人きりだろ。」「そうだね。」
　「何の話がしたいんだ。」「つよし、これまでなんでもなかった女子が、急にかわいく見えることってどういうことだと思う。」
　「そりゃ、好きになったり、惚れたんじゃないのかな。」「そうか。」
　「九郎、誰か好きになったのか。相手は誰だ。社本さんを裏切るのか。」「僕の友達の話だよ。」
　「お前、俺たち以外に友達いないだろ。」「失礼な。地元の友達の話だよ。」
　「九郎のことじゃないんだな。社本さんを裏切るなよ。」「ああ。」
九郎はつよしに嘘をついて悪いと思う。そして、まずいことになったと考える。