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142話 静かな夕食

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 救急車が大学の構内に入って来る。九郎がみんなに言う。
 「ここは救護隊に任せて、僕たちは去ろう。」「九郎、体は大丈夫なのか。」
 「大丈夫歩けるよ。」「ならいいけど。」
九郎が歩き始めようとするとあやめが腕を組む。九郎は落ち込んでいる玉枝が気になる。
 するとあやめがささやく。
 「私のこと見てよ。」
九郎があやめを見ると彼女は泣きそうな顔になっている。
 彼は玉枝に気を取られて、あやめに気が回っていなかったことに気づく。
 九郎とあやめは一緒に歩く。2人から少し離れて玉枝がついて行く。
 つよしと美琴は3人にかける言葉が見つからない。
 つよしは部長に報告する。
 「九郎が調子悪いから早めに帰ります。」「玉枝さんも帰るのか。」
 「はい。心配していますので。」「そうか、気を付けて帰るのだぞ。」
部長は今日は玉枝と飲めると思っていたが諦める。
 その頃、クラブ棟は騒ぎになっている、救急車が駆け付けたが倒れている人が多すぎるため、消防と警察が駆け付ける。
 何台もの救急車が倒れた人を病院へピストン輸送をしていく。そして、警察がクラブ棟の周りを立ち入り禁止にする。
 そこにマスコミが駆け付ける。警察と消防が原因を調べるが不明のままである。
 九郎たちはあやめの家に帰る。あやめが玄関の引き戸を開けると一久が顔を出すが、すぐに空気を呼んだようで、まじめな顔で質問する。
 「いったい何があったんだい。」「僕が呪いに飲まれたんです。」
九郎が言うと玉枝が説明する。
 「呪いの市松人形が、呪いを物質化しましました。そして魍魎を呼びました。陰陽師が向かいましたが手に負えませんでした。」
 「そして、外に流れ出た呪いに、九郎ちゃんが飲まれました。私のミスです。」
 「玉枝さんは呪いの市松人形をどうしたのかな。」「焼き尽くして消しました。」
 「ならもう大丈夫なんだね。九郎君も無事でよかった。」
一久が言っても玉枝はうつむいたままである。あやめは九郎から離れない。一久は九郎たち5人を居間に通す。
 そして、彼はあやめに言う。
 「夕食の準備があるから、母さんを手伝ってあげて。」「・・・分かった。」
あやめはやっと九郎から離れて台所に行く。一久は九郎に言う。
 「あやめは九郎君に被害が及んで動揺したんだ。許してやってくれ。今日は夕食を食べたら帰りなさい。」「はい。僕の方こそ軽率でした。」
夕食になるがいつものにぎやかさはない。夕食が終わると九郎と玉枝は帰って行く。あやめが止めようとするが一久があやめをたしなめる。
 つよしも美琴と別れて帰って行く。

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