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143話 玉枝を慰める

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 あやめと美琴は、入浴した後、あやめの部屋で話している。美琴があやめに言う。
 「あやめ、変だよ。玉枝さんに妬いているの。」「あの2人恋人同士に見えない。」
 「何言っているの、姉弟でしょ。」「血がつながっていなかったらどうかしら。」
 「仲が良いだけでしょ。勘ぐりが過ぎるわよ。」「・・・」
美琴は本当のことを知らないため、あきれて言う。
 「そんなこと考えていると、翼君逃げちゃうわよ。」「九郎は私のものよ。誰にも渡さないわ。」
あやめの目が本気であることを語っている。美琴があやめの独占欲の強さに寒気を覚える。

 九郎はアパートに帰ると風呂に入る。いつもなら玉枝が風呂に入って来るが、今日は彼1人である。
 彼が風呂を出ると部屋の隅に玉枝が足を抱えてうなだれている。彼は彼女に言う。
 「玉枝さんは悪くありません。悪いのは僕です。」「違うわ。私が自分の力を過信していたのよ。」
 「すごいですよ。僕は助けられたのです。」「・・・私、でも・・・」
九郎は玉枝を背中から優しく包むように抱きしめる。彼女は声を出さずに泣き出す。涙は彼の上を濡らす。
 彼は彼女を抱き締めて、彼女が華奢きゃしゃでか弱い存在であることに気づく。玉枝は九郎に言う。
 「こういうことは、あやめちゃんにしてあげて。」「僕は玉枝さんも大事なんです。嫌ですか。」
 「う、ううん。しばらくこうしていて。」「はい。」
九郎は玉枝が泣き止むまで抱きしめる。彼には彼女はか弱い1人の女性になる。
 彼にとって彼女が怨霊であることは些末さまつなことになって行く。
 九郎がベットに入って寝ると、玉枝はパジャマ姿になって添い寝する。
 今夜、彼女は九郎の方を向いている。彼は彼女の顔を見つめる。彼女は彼に言う。
 「九郎ちゃん、恥ずかしがらないの。」「玉枝さんのことかわいいなと思って。」
 「そう言うことは、あやめちゃんに言いなさい。」「僕は本当のことを言っているよ。」
 「九郎ちゃんのバカ!」
玉枝は顔を赤らめると背中を向ける。九郎はこれまで見せなかった玉枝のしぐさを新鮮に思う。
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