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158話 玉枝、一久と話す

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 あやめは九郎に抱き着くことをやめて、彼の寝顔を見ている。私の気も知らないでよく寝れるわね。
 彼女は彼に意地悪をしたくなるが我慢する。玉枝が気を利かせて2人きりにしてくれたのだ。彼女の気持ちを台無しにはできない。
 玉枝は歩きながら、足は久沓神明社へ向いていた。一久が起きていれば話をしたいと思ったのだ。
 彼女は家の中に入り、一久の部屋へ行く。怨霊の玉枝は戸を開けたりする必要はない。戸をすり抜けていくので音はしない。
 玉枝が一久の部屋に入ると彼は布団に入り横になっている。彼女は一久が寝ているものと思い立ち去ろうとする。
 すると一久が言う。
 「玉枝さんかい。」「姿を消していたのに私が判るのですか。」
 「いいや、何となく玉枝さんがいるような気がしたんだ。」「正解ですよ。」
玉枝は気配を強くして見えるようになる。
 「まるで牡丹灯籠だね。」「私は憑り殺したりしませんよ。」
 「話したいことがあってきたんだろ。」「はい、よろしければ付き合ってくれますか。」
 「ここでは、かえでに見つかったら浮気を疑われるから居間へ行こう。」「分かりました。」
2人は、居間へ移動する。玉枝は一久にお茶を入れる。玉枝は一久に言う。
 「あやめちゃんは、私と張り合って九郎ちゃんの所にいます。このままでは2人は破綻します。」「九郎君があやめを追いつめたのではないかい。」
 「原因は九郎ちゃんにあります。」「・・・あやめがあんな行動をとるとは思わなかったよ。原因は九郎君が玉枝さんを好きになったのかな。」
 「そうです。九郎ちゃんは、私とあやめちゃんが好きでどちらも選べなくなっています。」「それがばれたのか・・・九郎君は不器用だな。」
 「正直なだけです。」「それで九郎君は玉枝さんと一線を越えてしまったのかな。」
 「それはありません。私は九郎ちゃんに人並みの人生を送ってもらいたいと思ってます。」「玉枝さんも彼のことが好きなんだろ。」
 「はい。九郎ちゃんのためなら何でもできます。」「だったら、九郎君の気持ちに答えてもいいと思うよ。」
 「それでは、九郎ちゃんは人間の伴侶を持てなくなります。」「あやめもしぶといと思うよ。」
 「そうですが・・・」「君たちは一度本音でぶつからないといけないかもしれないね。」
玉枝は一久の言うことは理解できる。しかし玉枝が玉藻の前だったころ、彼女に溺れた男たちはみんなつぶれていったのだ。
 彼女は九郎が彼女の虜になることを恐れる。
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