コートの中でまたあなたと

晴れのち曇り

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出会い

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「むっ、なんて顔してるの……ってまぁ、知らない人に話しかけられたらそういう反応するわよね」

ーーーなんか一人で怒って一人で解決したぞ。

表情がころころと変わる人、そう感じた。
染めていると言うには自然な茶髪に、猫を連想させる眼が印象的な少女だった。

「あー、僕に何か?」

「あっ、そうそう。君、どうして自転車押して歩いてるの?チェーンでも外れた?」

「いいや、惜しいけど違う」

「じゃあパンク?」

「そう」

明は少し驚いていた。
なぜなら、彼はコミュニケーション能力は高いものの、初対面の人とここまで自然に会話したことなど無かったからだ。

ーーーどうしてだろう、彼女とは初めて会った気がしない。

「私の家、自転車屋なんだ。どう?君さえ良かったら家で修理するけど」

「勧誘?」

「そんなとこ」

「じゃあ、行こっか。案内するよ」

「ありがとう、助かるよ」

「いやいや、こっちも実利目的だし」

「win-winってやつだね」

「あははっ、そうだね」

「そろそろ行こうか」

「おっとそうだね、ごめんごめん。こっちだよ」

まるで穏やかな山の小川のように会話が進む。
もう少しこの感覚を味わっていたかったが、流石にこの暑い日に外で話し続けるのはよろしくない。
明は初めて会った自称自転車屋の娘と一緒に歩き出すのであった。











ある夏の日の午後、二人だけの物語が始まろうとしていた。
いや、もう既に始まっていたのだろう。

この出逢いはきっと必然だったのだろう。
自転車のタイヤがパンクしたのは決まっていたことだったのだろう、
帰り道の途中で彼女と出逢ったのは当然のことだっのだろう。

まるで演劇のように。

まるで喜劇のように。

しかしそれは悲劇では無い。

ただ運命の時計の針が動き始めただけなのだ。
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