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とある世界の冒険者
十六話目
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「ふっ!」
「ガアアアアアアア!!!」
未だ終わりを見せないこの世に顕現した地獄、戦場の只中で一際大きな存在感を放ちながら死闘を繰り広げる大小二つの影があった。
大きい方はオーガ、伝説にすら数えられる正真正銘のバケモノである。
対して小さな影は、冒険者。そう、ただの人間である。
英雄に数えられるような力もなく、歴史に刻まれるほどの功績を残したわけでもない。
だが、その冒険者が、吹けば飛ぶような程度の男であるはずの者がオーガを追い詰めていることも、確かなのだ。
男は急速に英雄への階段を駆け上がっていた。
何かが男の中で弾け、存在を昇華させた。それに何かしらの意図を感じざるを得ないが、今は何の問題にもなりはしないだろう。
剣を振る。二度と三度とかのオーガを斬り殺さんと刃を閃かせる。
きっと殺す、必ず殺すとその全身でもって語っている。
男のその殺気に当てられてか、ゆらゆらと蒼い湯気のようなものが男の全身を包んだ。
その蒼いなにかは男に大きな全能感とそれに見合うだけの力を与えた。
オーガの動きは先ほどよりも格段に遅く感じ、飛び出さんと地面を踏み込めば大地がえぐれた。
斬りつけば遂に傷らしい傷をオーガの強靭な肉体に刻みつけた。
深く切り裂いた男の剣には確かにオーガの紅い血が付いていた。
怒りの咆哮が聞こえる。だが、それは随分と遠くにあるように感じた。
水中の中にいるような感覚に囚われながらも、身体の反応は男の指先までが素晴らしく速い。
勝てる、いや殺せる。俺はこの化け物を殺せる。そう確信する。
今やこの戦闘で有利に立っているのはオーガではない。男の方である。
それをオーガも感じたのだろうか、怒り以外の何かをその一撃に込めるようになっていた。
焦燥だろうか、驚愕だろうか、それはオーガ自身もわからない。
しかし、それは確実にオーガの技を鈍らせた。
今までよりも単純な一撃で、そこいらの一兵士にすら見切られるのではないかというほどにあった。
速いだけ、そこに術理は無く、感情のままに振り回す。
まるで童子がごっこ遊びをしているかのようであった。
当然、それでは今の男に敵うはずがない。今や英雄の器として覚醒した男にオーガの攻撃は届かない。最早、当たらない。
長いようで、あまりに短い死闘は終わりの鐘を鳴らそうとしていた。
「そこぉ!」
柄にも無く気合のこもった叫びとともに振るわれた斬撃はオーガの首を捉えた。
「オオオオオォォォ…………」
ズン、と大地が揺れた。倒れ伏したオーガの肉体に、その瞳に生命の灯火は感じられなかった。
男は勝ったのだ、伝説に打ち勝ったのだ。
周りの兵士や冒険者は目の当たりにした。弱者が強者に打ち勝つところを。新たな英雄の誕生を。
伝説は今成った。
オーガを失った魔獣たちは一斉に撤退を開始した。それを許せばきっといつか必ずここを襲うだろう。だが、追撃の命令は無かった。
誰もが新たな英雄を称えたのだ。撤退していく魔獣を見ながら。
男は誰もが勝利に酔っていくのを感じながら、意識を手放した。
後日談を少し語ろうか。
男はその後冒険者を続けたという。王国から騎士として召し上げたいと言われたものの、もう若くないからと自由な冒険者を選んだのだ。
そうして、ザルツでエリスという若い嫁をもらった。贔屓にしている宿屋の娘だった。近々宿を継ぐらしい。
ああ、あともう一つ。
王国では新しく演劇の演目が増えたらしい。
その名前は「英雄バルト」
「ガアアアアアアア!!!」
未だ終わりを見せないこの世に顕現した地獄、戦場の只中で一際大きな存在感を放ちながら死闘を繰り広げる大小二つの影があった。
大きい方はオーガ、伝説にすら数えられる正真正銘のバケモノである。
対して小さな影は、冒険者。そう、ただの人間である。
英雄に数えられるような力もなく、歴史に刻まれるほどの功績を残したわけでもない。
だが、その冒険者が、吹けば飛ぶような程度の男であるはずの者がオーガを追い詰めていることも、確かなのだ。
男は急速に英雄への階段を駆け上がっていた。
何かが男の中で弾け、存在を昇華させた。それに何かしらの意図を感じざるを得ないが、今は何の問題にもなりはしないだろう。
剣を振る。二度と三度とかのオーガを斬り殺さんと刃を閃かせる。
きっと殺す、必ず殺すとその全身でもって語っている。
男のその殺気に当てられてか、ゆらゆらと蒼い湯気のようなものが男の全身を包んだ。
その蒼いなにかは男に大きな全能感とそれに見合うだけの力を与えた。
オーガの動きは先ほどよりも格段に遅く感じ、飛び出さんと地面を踏み込めば大地がえぐれた。
斬りつけば遂に傷らしい傷をオーガの強靭な肉体に刻みつけた。
深く切り裂いた男の剣には確かにオーガの紅い血が付いていた。
怒りの咆哮が聞こえる。だが、それは随分と遠くにあるように感じた。
水中の中にいるような感覚に囚われながらも、身体の反応は男の指先までが素晴らしく速い。
勝てる、いや殺せる。俺はこの化け物を殺せる。そう確信する。
今やこの戦闘で有利に立っているのはオーガではない。男の方である。
それをオーガも感じたのだろうか、怒り以外の何かをその一撃に込めるようになっていた。
焦燥だろうか、驚愕だろうか、それはオーガ自身もわからない。
しかし、それは確実にオーガの技を鈍らせた。
今までよりも単純な一撃で、そこいらの一兵士にすら見切られるのではないかというほどにあった。
速いだけ、そこに術理は無く、感情のままに振り回す。
まるで童子がごっこ遊びをしているかのようであった。
当然、それでは今の男に敵うはずがない。今や英雄の器として覚醒した男にオーガの攻撃は届かない。最早、当たらない。
長いようで、あまりに短い死闘は終わりの鐘を鳴らそうとしていた。
「そこぉ!」
柄にも無く気合のこもった叫びとともに振るわれた斬撃はオーガの首を捉えた。
「オオオオオォォォ…………」
ズン、と大地が揺れた。倒れ伏したオーガの肉体に、その瞳に生命の灯火は感じられなかった。
男は勝ったのだ、伝説に打ち勝ったのだ。
周りの兵士や冒険者は目の当たりにした。弱者が強者に打ち勝つところを。新たな英雄の誕生を。
伝説は今成った。
オーガを失った魔獣たちは一斉に撤退を開始した。それを許せばきっといつか必ずここを襲うだろう。だが、追撃の命令は無かった。
誰もが新たな英雄を称えたのだ。撤退していく魔獣を見ながら。
男は誰もが勝利に酔っていくのを感じながら、意識を手放した。
後日談を少し語ろうか。
男はその後冒険者を続けたという。王国から騎士として召し上げたいと言われたものの、もう若くないからと自由な冒険者を選んだのだ。
そうして、ザルツでエリスという若い嫁をもらった。贔屓にしている宿屋の娘だった。近々宿を継ぐらしい。
ああ、あともう一つ。
王国では新しく演劇の演目が増えたらしい。
その名前は「英雄バルト」
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