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とある場所の異世界人
一話目
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女は不満だった。代わり映えしない大学生活も。自分の整った容姿を目当てに近寄ってくる男共にも。二年後に迫った就職活動も。己の衝動を認めない社会も。何もかもがつまらない。息苦しい。
「こんなところ……抜け出したい。こことは違う何処かに。私の衝動を受け入れてくれる世界に。そのためなら何だってするのに……」
はぁ、と2月の空に消えていく白い息をぼんやりと眺めながら呟く。
……本気か?
何処かから声が聞こえた気がした。
「え?」
気のせいか、そう判断を下そうとした。
……本気か、と問うたのだ。
また、聞こえた。男とも女とも取れるような声だ。だが、中性的というのとは違う。
どちらかというと機械のような、合成音声のような、ボイスチェンジャーを通したような判断のつかない声だった。
幻聴か?いいや違う本能がそう言っているような気がした。
「貴方、誰?」
そう問いかけた。
……私か?そうだな、私を定義するのに適した単語はどうにも存在しないのだが。取り敢えず、監視者とでも呼ぶと良い。それが最も近しいだろう。
「じゃあ……監視者?貴方は私に何の用があって話しかけてきたの?」
そう言うとまた、声が帰ってきた。どうやら意思の疎通は可能なようだ。
……先ほどの発言は本気か?と問うたのだ。
「発言?」
女はその整った顔を傾げた。
……言っておったであろう。異世界に行きたいと。此処ではない何処かへ行きたいと。
それか、女は得心がいった。なるほど確かに言った。
……それで、どうなのだ。本当に別の世界を望むか?
再度声が問いかける。姿は見えないが焦れているように感じる。
「ええ、勿論。望むわ」
だって、
「こんなつまらない世界を好きだと思ったことはないし、こんな生きにくい世界を望んでいたわけではないもの」
だから、
「私を此処ではない何処かへ」
連れ去って。
その女の言葉は、その姿は恋を語る少女のようで。しかし、その瞳は絶望した世捨て人のようで。歪で、何かに燃えていて、願っていて、狂っていて、それでいて何も宿さず、何も抱かず、空っぽだった。
……ああ、いいとも。安心してほしい。この世界には受け入れられない君の衝動もきっとあの世界なら大丈夫。
女は声の主が嗤ったように感じた。
……今から君を此処とは違う、異世界に送る。
女を青白い光が包み、魔法陣のようなものも足元に現れる。
その光は女の身体へと吸収されていく。
これは……光?
いいや、違う。これは……力。
……そう、これは餞別だ。君の狂気を力に変え、振るうためのね。それは君にとってまさしく武器だ。
武器?剣とか、銃とか、そういうものだろうか。
……そう。ただ、私にもそれがどのような形をするのかは分からない。君の心そのものが武器となる。いや、武器という形をとる。
なるほど、いろいろと疑問に思うことはあるが、ひとつだけ分かることがある。
武器が必要となる世界だということだ。
ああ、なるほど。なるほど。そうか、そういうことか。
確かにそんな世界であれば私を受け入れてくれるだろう。
くひ、と嗤う。
肩を揺らし、狂ったかのように嗤う。
ああ、ああ、ああ。
受け入れてくれる!私のこの狂気を!この衝動を!願望を!
殺したいという願いを!
国を、大陸を、世界さえも!
死体で大地を埋め尽くしてしまおう!
それが私の願いなのだから。
……ああ、それでこそ、それでこそだ。私が見込んだだけはある。見事に闇に染まった力だ。これならばあの英雄も殺せるだろう。きっと世界に混乱と絶望をもたらしてくれるだろう。
女を包む青白い光が吸収され尽くし、真黒な靄のような何かが生み出される。
……そろそろ時間だ。君が新たな世界で幸福に生きられることを願っているよ。
「ありがとう」
女は世界を超え、目覚める。
新たな世界に想いを馳せ、その口を三日月型に歪めた。
「こんなところ……抜け出したい。こことは違う何処かに。私の衝動を受け入れてくれる世界に。そのためなら何だってするのに……」
はぁ、と2月の空に消えていく白い息をぼんやりと眺めながら呟く。
……本気か?
何処かから声が聞こえた気がした。
「え?」
気のせいか、そう判断を下そうとした。
……本気か、と問うたのだ。
また、聞こえた。男とも女とも取れるような声だ。だが、中性的というのとは違う。
どちらかというと機械のような、合成音声のような、ボイスチェンジャーを通したような判断のつかない声だった。
幻聴か?いいや違う本能がそう言っているような気がした。
「貴方、誰?」
そう問いかけた。
……私か?そうだな、私を定義するのに適した単語はどうにも存在しないのだが。取り敢えず、監視者とでも呼ぶと良い。それが最も近しいだろう。
「じゃあ……監視者?貴方は私に何の用があって話しかけてきたの?」
そう言うとまた、声が帰ってきた。どうやら意思の疎通は可能なようだ。
……先ほどの発言は本気か?と問うたのだ。
「発言?」
女はその整った顔を傾げた。
……言っておったであろう。異世界に行きたいと。此処ではない何処かへ行きたいと。
それか、女は得心がいった。なるほど確かに言った。
……それで、どうなのだ。本当に別の世界を望むか?
再度声が問いかける。姿は見えないが焦れているように感じる。
「ええ、勿論。望むわ」
だって、
「こんなつまらない世界を好きだと思ったことはないし、こんな生きにくい世界を望んでいたわけではないもの」
だから、
「私を此処ではない何処かへ」
連れ去って。
その女の言葉は、その姿は恋を語る少女のようで。しかし、その瞳は絶望した世捨て人のようで。歪で、何かに燃えていて、願っていて、狂っていて、それでいて何も宿さず、何も抱かず、空っぽだった。
……ああ、いいとも。安心してほしい。この世界には受け入れられない君の衝動もきっとあの世界なら大丈夫。
女は声の主が嗤ったように感じた。
……今から君を此処とは違う、異世界に送る。
女を青白い光が包み、魔法陣のようなものも足元に現れる。
その光は女の身体へと吸収されていく。
これは……光?
いいや、違う。これは……力。
……そう、これは餞別だ。君の狂気を力に変え、振るうためのね。それは君にとってまさしく武器だ。
武器?剣とか、銃とか、そういうものだろうか。
……そう。ただ、私にもそれがどのような形をするのかは分からない。君の心そのものが武器となる。いや、武器という形をとる。
なるほど、いろいろと疑問に思うことはあるが、ひとつだけ分かることがある。
武器が必要となる世界だということだ。
ああ、なるほど。なるほど。そうか、そういうことか。
確かにそんな世界であれば私を受け入れてくれるだろう。
くひ、と嗤う。
肩を揺らし、狂ったかのように嗤う。
ああ、ああ、ああ。
受け入れてくれる!私のこの狂気を!この衝動を!願望を!
殺したいという願いを!
国を、大陸を、世界さえも!
死体で大地を埋め尽くしてしまおう!
それが私の願いなのだから。
……ああ、それでこそ、それでこそだ。私が見込んだだけはある。見事に闇に染まった力だ。これならばあの英雄も殺せるだろう。きっと世界に混乱と絶望をもたらしてくれるだろう。
女を包む青白い光が吸収され尽くし、真黒な靄のような何かが生み出される。
……そろそろ時間だ。君が新たな世界で幸福に生きられることを願っているよ。
「ありがとう」
女は世界を超え、目覚める。
新たな世界に想いを馳せ、その口を三日月型に歪めた。
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