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とある場所の異世界人
二話目
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「此処は……?」
気がつくと女は街と思しき場所にいた。
暗く、ゴミや死体が散乱している光景はスラムのようであった。
酷い匂いに顔を顰めそうになるが、努めて表情には出さなかった。
「とにかく、移動しよう」
恐らく此処は大通りのような通行人の多い場所ではない。ならば此処に留まっているのは危険だろう。女はそう判断した。
その判断は間違っていなかったが、遅かった。
こちらに向かって歩いてくる足音を聴いた。
「一、二、三人くらいかしら?」
足音から人数を特定し、身構えた。
「ちょうどいい。与えられた力がどれ程のものか確認する良い機会ね」
そう呟きくひ、と肩を揺らした。
己が衝動を曝け出さんとするかのようで、他の誰かがそれを見ていれば不気味さすら感じただろう。
しかし、その不気味な笑いをすぐさま引っ込めて顔から表情を消した。
それと同時に奥から男が三人姿を現した。
男たちはお世辞にも綺麗な格好とは言えなかった。
薄汚れ、異臭さえ漂ってくるほどであった。
そして、何よりもその魂から腐りきったような匂いがしたのだ。
「こいつらなら別に良いでしょう……」
そう呟いた。
男たちはギャンブルに勝って上機嫌であった。
これまでの負け分を全て精算してまだお釣りがくるほどに勝ちに勝っていた。
これで借金取りから逃げ回る生活からオサラバできると男三人で肩を組み合って、小汚い酒場の度数だけは高い安酒を浴びるように飲んだ帰りだった。
まだ昼を少し過ぎたくらいであったがすでに三人はかなりアルコールが回っていた。
だからだろうか、彼女から漂ってくる暗い愉悦の感情に気づけなかったのは。
すぐに男たちは見目がよく、身綺麗な格好をした女を視界に捉えた。
此処では珍しい黒髪に黒い瞳をした美少女とも美女とも言える可愛らしさと美しさが絶妙なバランスで同居している、まさに傾国とは目の前の女のことではないかと感じるほどであった。
スラリと伸びた長く細い脚、くびれた腰、程よく実った二つの果実。
これらは酒に呑まれた男たちの劣情を非常に沸き立たせた。
「おい、見てみろよ。あれ」
「あん?……おいおい、まじかよ。随分な上玉だな」
「だろ」
男の一人が下卑た笑みを浮かべた。
「やっちまおうぜ。見たところ一人みたいだし……な」
「へへへ……」
「おう」
男たちは互いに頷きあい歩く速度を速めた。
これからのお楽しみにに想いを馳せながら。
「来たわね」
明らかに女の方へ近づいてきた男たちを視界に捉えながら、先ほどまでの狂気を自分の内に引っ込めた。
どれもこれも下卑た笑みを隠そうともせず、こちらへと向かってくる。
相手は一人でこちらは三人、それに女だ。彼らの中ではこの後のお楽しみは既に確定しているのだろう。
「よお、嬢ちゃん。こんな所で何してるんだ?もしかして道に迷ったかぁ?そんなら俺らが案内してやるよ。なんたって俺らは優しい優しい紳士だからなぁ」
男の中の一人は不快感さえ抱かせるような気持ちの悪いねっとりとした声で話しかける。
しかし、そんなことはおくびにも出さずに女はにっこりと微笑む。
「あら、それは助かります。ですが、私にはあなた方に支払えるだけの手持ちがありません」
残念ですが……と断るそぶりを見せながら距離を取ろうとすると男たちは、顔を歪めた。
「いやいや、お代は結構だとも。…………ああ、でも。どうしてもというなら一つお願いがあるんだけどよ……聞いてくれるよなぁ?」
威圧するような低い声で言い募る。
「ええ、何でしょう?」
わざとらしく女は怯えた表情を浮かべた。しかし、その女の演技に男たちは気づかない。
そうして、男たちは口実を与えてしまう。
「お前の身体で払ってもらおうか!」
「正当防衛」という口実を。
気がつくと女は街と思しき場所にいた。
暗く、ゴミや死体が散乱している光景はスラムのようであった。
酷い匂いに顔を顰めそうになるが、努めて表情には出さなかった。
「とにかく、移動しよう」
恐らく此処は大通りのような通行人の多い場所ではない。ならば此処に留まっているのは危険だろう。女はそう判断した。
その判断は間違っていなかったが、遅かった。
こちらに向かって歩いてくる足音を聴いた。
「一、二、三人くらいかしら?」
足音から人数を特定し、身構えた。
「ちょうどいい。与えられた力がどれ程のものか確認する良い機会ね」
そう呟きくひ、と肩を揺らした。
己が衝動を曝け出さんとするかのようで、他の誰かがそれを見ていれば不気味さすら感じただろう。
しかし、その不気味な笑いをすぐさま引っ込めて顔から表情を消した。
それと同時に奥から男が三人姿を現した。
男たちはお世辞にも綺麗な格好とは言えなかった。
薄汚れ、異臭さえ漂ってくるほどであった。
そして、何よりもその魂から腐りきったような匂いがしたのだ。
「こいつらなら別に良いでしょう……」
そう呟いた。
男たちはギャンブルに勝って上機嫌であった。
これまでの負け分を全て精算してまだお釣りがくるほどに勝ちに勝っていた。
これで借金取りから逃げ回る生活からオサラバできると男三人で肩を組み合って、小汚い酒場の度数だけは高い安酒を浴びるように飲んだ帰りだった。
まだ昼を少し過ぎたくらいであったがすでに三人はかなりアルコールが回っていた。
だからだろうか、彼女から漂ってくる暗い愉悦の感情に気づけなかったのは。
すぐに男たちは見目がよく、身綺麗な格好をした女を視界に捉えた。
此処では珍しい黒髪に黒い瞳をした美少女とも美女とも言える可愛らしさと美しさが絶妙なバランスで同居している、まさに傾国とは目の前の女のことではないかと感じるほどであった。
スラリと伸びた長く細い脚、くびれた腰、程よく実った二つの果実。
これらは酒に呑まれた男たちの劣情を非常に沸き立たせた。
「おい、見てみろよ。あれ」
「あん?……おいおい、まじかよ。随分な上玉だな」
「だろ」
男の一人が下卑た笑みを浮かべた。
「やっちまおうぜ。見たところ一人みたいだし……な」
「へへへ……」
「おう」
男たちは互いに頷きあい歩く速度を速めた。
これからのお楽しみにに想いを馳せながら。
「来たわね」
明らかに女の方へ近づいてきた男たちを視界に捉えながら、先ほどまでの狂気を自分の内に引っ込めた。
どれもこれも下卑た笑みを隠そうともせず、こちらへと向かってくる。
相手は一人でこちらは三人、それに女だ。彼らの中ではこの後のお楽しみは既に確定しているのだろう。
「よお、嬢ちゃん。こんな所で何してるんだ?もしかして道に迷ったかぁ?そんなら俺らが案内してやるよ。なんたって俺らは優しい優しい紳士だからなぁ」
男の中の一人は不快感さえ抱かせるような気持ちの悪いねっとりとした声で話しかける。
しかし、そんなことはおくびにも出さずに女はにっこりと微笑む。
「あら、それは助かります。ですが、私にはあなた方に支払えるだけの手持ちがありません」
残念ですが……と断るそぶりを見せながら距離を取ろうとすると男たちは、顔を歪めた。
「いやいや、お代は結構だとも。…………ああ、でも。どうしてもというなら一つお願いがあるんだけどよ……聞いてくれるよなぁ?」
威圧するような低い声で言い募る。
「ええ、何でしょう?」
わざとらしく女は怯えた表情を浮かべた。しかし、その女の演技に男たちは気づかない。
そうして、男たちは口実を与えてしまう。
「お前の身体で払ってもらおうか!」
「正当防衛」という口実を。
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