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とある場所の異世界人
三話目
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女の変化は突然だった。
「あはぁ」
女の口から喜悦を孕んだ吐息が吐き出される。それはどうしようもなく淫靡で、男だけでなく女さえも狂わせるほどの魔性を感じさせた。
しかし、男達は目の前の女が発する狂気や異常性を感じ取った。
ぞくり、と背筋が凍る。今まで抱いていた興奮が羽毛のように吹き飛んだ。
おかしい、何故目の前の女にこれほどの恐怖を抱いているのだろう。まるで魔獣と相対したような恐れが男達の心を掴んで離れない。
男達の内の一人は一筋の汗が自身の眉間を通過するのを感じた。
まずい、どうしたというのだ。相手は女一人だ。容易く組み伏せられるではないか。
まずい、何を言っている。ここで怖気付く奴があるか。お楽しみはもう直ぐだぞ。
まずい、巫山戯るな。ここまでやってそれはないだろう。いいから行け。
一瞬の逡巡の末、男は頭の中に響き渡る警鐘を無視することにした。
三人はバラバラに女へと襲い掛かるべく走り出した。
瞬間、瞬きをするよりも速く身体に違和感を覚えた。
「…………あ?」
何故か女が眼前に立っている。いいや、それはさしたる問題ではないだろう。
何故なら腹部が急に重くなったように感じたのだから。
思わずその違和感の原因を確認しようと目線を下にやる。
「…………ああ?」
見なければよかった、そう咄嗟に考えた。そうすれば自身に刺さった槍に気づくことはなかったかもしれなかったかもしれない。
「…………へ?」
何故、槍が。何処から、槍を。そんな疑問を頭が巡る。しかし、その疑問は激痛によって塗り替えられた。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!」
絶叫する。
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
混乱と苦痛と恐怖に支配される。
しかし、男は幸運だったと言えるだろう。次の瞬間に繰り出された自身の頭蓋骨を易々と貫通する一撃を認識することなく死ねたのだから。
「はあ?」
頭を貫かれた男が崩れ落ちるのを見たもう二人の男達は気の抜けた声を漏らすしかなかった。
何せ闘うどころか武器すら持ったことのないような細腕の女がいつの間にか持っていた純白の槍で男の頭を貫き、消し飛ばしたのだ。
脳漿や血液を撒き散らせながら倒れる男を見て、最上の快楽を与えられたかのように身体を震わせる女の姿を視界に捉えてしまった。
意味がわからない。そんな言葉を頭で巡らせる。
魔法を使った様子もなく、己の身体能力のみでその地獄のような光景を作り上げたとしか思えない。
あり得ない事態に残りの男は僅かな間理解するのを放棄し、思考を停止させた。
「駄目でしょう?そんな隙を見せたら……」
そんな声が聞こえた気がする。しかし、その声の真偽を確認する間もなく、一人の男が左胸を貫かれ白い槍を赤黒く染め上げた。
「こうやって殺されてしまうわ」
愉悦や悦楽を隠そうともせず、ニッコリと女は嗤う。
その笑みは酷く綺麗で、しかしこの場にはどうしても不釣り合いで、だからこそ倒錯的な美しさを感じさせるものだった。
「…………ヒイ!」
その笑みに恐ろしいほどの狂気を感じた三人目の男は後退りしようとするが、足を縺れさせて尻もちをつく。
「ああ……」
不思議と女の歓喜の声と男の絶望の声が重なる。
かみ……さま…………
その時初めて神に祈りを捧げた男は、慈悲を請う声が聞き届けられることなく絶命した。
「あはぁ」
女の口から喜悦を孕んだ吐息が吐き出される。それはどうしようもなく淫靡で、男だけでなく女さえも狂わせるほどの魔性を感じさせた。
しかし、男達は目の前の女が発する狂気や異常性を感じ取った。
ぞくり、と背筋が凍る。今まで抱いていた興奮が羽毛のように吹き飛んだ。
おかしい、何故目の前の女にこれほどの恐怖を抱いているのだろう。まるで魔獣と相対したような恐れが男達の心を掴んで離れない。
男達の内の一人は一筋の汗が自身の眉間を通過するのを感じた。
まずい、どうしたというのだ。相手は女一人だ。容易く組み伏せられるではないか。
まずい、何を言っている。ここで怖気付く奴があるか。お楽しみはもう直ぐだぞ。
まずい、巫山戯るな。ここまでやってそれはないだろう。いいから行け。
一瞬の逡巡の末、男は頭の中に響き渡る警鐘を無視することにした。
三人はバラバラに女へと襲い掛かるべく走り出した。
瞬間、瞬きをするよりも速く身体に違和感を覚えた。
「…………あ?」
何故か女が眼前に立っている。いいや、それはさしたる問題ではないだろう。
何故なら腹部が急に重くなったように感じたのだから。
思わずその違和感の原因を確認しようと目線を下にやる。
「…………ああ?」
見なければよかった、そう咄嗟に考えた。そうすれば自身に刺さった槍に気づくことはなかったかもしれなかったかもしれない。
「…………へ?」
何故、槍が。何処から、槍を。そんな疑問を頭が巡る。しかし、その疑問は激痛によって塗り替えられた。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!」
絶叫する。
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
混乱と苦痛と恐怖に支配される。
しかし、男は幸運だったと言えるだろう。次の瞬間に繰り出された自身の頭蓋骨を易々と貫通する一撃を認識することなく死ねたのだから。
「はあ?」
頭を貫かれた男が崩れ落ちるのを見たもう二人の男達は気の抜けた声を漏らすしかなかった。
何せ闘うどころか武器すら持ったことのないような細腕の女がいつの間にか持っていた純白の槍で男の頭を貫き、消し飛ばしたのだ。
脳漿や血液を撒き散らせながら倒れる男を見て、最上の快楽を与えられたかのように身体を震わせる女の姿を視界に捉えてしまった。
意味がわからない。そんな言葉を頭で巡らせる。
魔法を使った様子もなく、己の身体能力のみでその地獄のような光景を作り上げたとしか思えない。
あり得ない事態に残りの男は僅かな間理解するのを放棄し、思考を停止させた。
「駄目でしょう?そんな隙を見せたら……」
そんな声が聞こえた気がする。しかし、その声の真偽を確認する間もなく、一人の男が左胸を貫かれ白い槍を赤黒く染め上げた。
「こうやって殺されてしまうわ」
愉悦や悦楽を隠そうともせず、ニッコリと女は嗤う。
その笑みは酷く綺麗で、しかしこの場にはどうしても不釣り合いで、だからこそ倒錯的な美しさを感じさせるものだった。
「…………ヒイ!」
その笑みに恐ろしいほどの狂気を感じた三人目の男は後退りしようとするが、足を縺れさせて尻もちをつく。
「ああ……」
不思議と女の歓喜の声と男の絶望の声が重なる。
かみ……さま…………
その時初めて神に祈りを捧げた男は、慈悲を請う声が聞き届けられることなく絶命した。
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