31 / 32
これはなんのお話
はなの声
しおりを挟む
「 そこでね、とても大切な人と出会ったわ。夏目という名前だってことしか知らなかったけれど、それだけで十分だと思っていたわ。
そこで彼は、いろんなことを教えてくれたの。
太陽さんには挨拶をしなければいけないこと、川には無数の宝石が散らばっていること、私にも、宝石があること。
すごく救われたわ。
彼と出会って、想像の世界の中だけだけれど、私は幾分も自由でいれたの。
でもね、そこから1ヶ月くらい経った頃かな、
彼は現れなくなったの。
私の中の想像。私が作り上げた人。
私が、彼は必要でなくなったと判断したから、私の想像から消えてしまったのだと、無理やり思い込ませたわ。」
じわり、じわりと滲み出るように、搾り取るように言葉を発する。
つまらなくないかしら。
退屈かしら。
ここまで話して、ちらりとはなを見る。
視線に気づき、はなは
「続けて。」
と、まるで、自分の言葉を介入させたくないと言っているかのように短く答えた。
「彼は、次の日も、次の日も現れなかったわ。
ああ、彼は本当に私の中から消えてしまったのだ、と思ったわ。
そのかわり、いろんな人が現れるようになったの。最初はみんな、とても辛気臭い顔をしているの。
彼が消えて1日目には、髪で顔を隠した女の子。
彼女、まつげに宝石を落としていたわ。
2日目は、片腕のない女の子。
腕の無い袖が風に揺れる様がまるで花のようで、キラキラしていたわ。
こういう風にね。
そこで私は、彼ら、彼女らとお話をするの。
あなたはこういう宝石を持っているのね、って。彼が私に言ってくれたようにね。
彼がいなくなった今、私が彼の代わりを務めなければと思ったのよ。
それでね、そうこうしていて、一昨日、
男の子と出会ったの。誠さんと言うのだけど。
そこで彼は、いろんなことを教えてくれたの。
太陽さんには挨拶をしなければいけないこと、川には無数の宝石が散らばっていること、私にも、宝石があること。
すごく救われたわ。
彼と出会って、想像の世界の中だけだけれど、私は幾分も自由でいれたの。
でもね、そこから1ヶ月くらい経った頃かな、
彼は現れなくなったの。
私の中の想像。私が作り上げた人。
私が、彼は必要でなくなったと判断したから、私の想像から消えてしまったのだと、無理やり思い込ませたわ。」
じわり、じわりと滲み出るように、搾り取るように言葉を発する。
つまらなくないかしら。
退屈かしら。
ここまで話して、ちらりとはなを見る。
視線に気づき、はなは
「続けて。」
と、まるで、自分の言葉を介入させたくないと言っているかのように短く答えた。
「彼は、次の日も、次の日も現れなかったわ。
ああ、彼は本当に私の中から消えてしまったのだ、と思ったわ。
そのかわり、いろんな人が現れるようになったの。最初はみんな、とても辛気臭い顔をしているの。
彼が消えて1日目には、髪で顔を隠した女の子。
彼女、まつげに宝石を落としていたわ。
2日目は、片腕のない女の子。
腕の無い袖が風に揺れる様がまるで花のようで、キラキラしていたわ。
こういう風にね。
そこで私は、彼ら、彼女らとお話をするの。
あなたはこういう宝石を持っているのね、って。彼が私に言ってくれたようにね。
彼がいなくなった今、私が彼の代わりを務めなければと思ったのよ。
それでね、そうこうしていて、一昨日、
男の子と出会ったの。誠さんと言うのだけど。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる