エンドロールに誰を流そう

想像と現実の区別

はなという人

昼休みに入るまで、私は何をしていたのか、よく覚えていない。

どうやって授業を受けたっけ。
あれれ、でも、ノートにはちゃんと書いてあるわ。
だめね、しっかりしないと。

お昼になったし、今朝慌てて作ったおにぎりを持って、誰もいない、お気に入りの場所へ行きましょう。

スクールバッグからおにぎりの入った巾着を取り出し、席を立とうとする。

すると、

「は、あっと、、、松本さん、一緒にお昼ご飯を食べよう。」

そう言って、はなが近づいてくる。

「お昼を一緒に、、、。」

自分に向けて発せられた言葉なのか分からず、ぽかんとする。
だって今までこんな言葉をかけてくれた人なんて居なかったのだもの。

「迷惑、だったかな？」

おずおずとはなは尋ねる。

「いえ、でも、いつも一緒に食べている子は大丈夫なの？」

「ええ、大丈夫、彼女らは、私に何かを求めているわけではないよ。さあ、行こう。」

少し不機嫌な顔になり、私の手を引き強引に教室を出る。
おろろ、と声が出てしまう。
恥ずかしい、誰かに聞かれて居たら、と思い手を引かれながらも教室を見渡すと、
はなのいた「グループ」の子達がこちらを睨んでいる。

やっぱりはなは求められているじゃない。

ふつふつとそんな思いが込み上げてくるが、
たくさん話したいこともある。
それに、今はそんなこと言ったって仕方ないわよね。

「はな、少し待って。」

はなが手を離し立ち止まってから、
私はスクールバッグから今朝もらった
マドレーヌを取り出す。

「それ、なあに？」

はなはいつの間にか、私の隣に来ていて、袋をのぞいている。

「おばさんにもらったマドレーヌなの。
お友達と食べてって、くださったの。」

あまりに嬉しくて、ついつい、自分でも分かるほど、崩れた笑顔をはなに向ける。
すると、はなも、同じように
くちゃっと笑って、

「じゃあ、行こっか。」

と、また私の手を引く。
もう一度、はなのグループに目を向ける。
どことなく悔しそうな、複雑な表情をしていた。
やっぱりはなは、みんなから好かれているのね。




お気に入りの場所で、お友達と、お昼ご飯を食べに行くの。
素敵でしょう？