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第五話「わたくし、殿下のことなんて全然好きじゃありませんけど?」
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泣きじゃくったわたくしたちは従者に促されて食堂から中庭の休憩スペースのベンチとテーブルの置かれたガゼボ(あずまや)に移動しました。
そしてそこでしばらく三人で泣いていましたわ。
わたくしたちが落ち着いてきたタイミングを見計らって、バルトたちは、わたくしたちにお茶を入れてくださいました。
お礼を言ってカップを受け取り、お行儀が悪いですが、温かいお紅茶の入ったカップを包むように両手で持ちました。
指先と手のひらが温められるかんじは、体から緊張がぬいてくれました。
「お行儀がわるいですが、このままごちそうになりますわ」
わたくしの言葉に、バルトはぶっと頬をリスのように膨らませ、唇を波うたたせました。
「ええwwwどうぞwww」
「………冗談ですわ。わたくしがそんな真似をすると思って?」
「いえいえ」
バルトを睨みつけると、バルトは姿勢と顔の表情筋をただして首を振りました。
わたくしが外で令嬢らしからぬことをすると、バルトはすぐに笑いますの。
だから気が抜けませんわ。
「それで、エトワール様。これからどうするおつもり?」
淑女らしく指先を揃えてティーカップを持ってお茶を口に注ぐレオナ嬢は、私を見ながら目を細めました。
「もちろん、あの場では流しましたが、わたくし王太子殿下との婚姻を諦めるつもりなんてありませんわ」
わたくしはにっこりと笑みを浮かべてレオナ嬢に宣言いたしましたわ。
「え………エトワール様………。そんなにも殿下のことが好きなんですね………」
「はい?」
胸を押さえつけ、痛みに耐えるような表情を浮かべたハーティア嬢の言葉に、わたくしが首を傾げると、ハーティア嬢は目を見開いて驚いていました。
「え?」
「好きではありませんわよ」
「好きじゃない? エルは、王太子殿下を好きじゃない?」
「はい」
そうですわ。
「まって、待って、待ってくださいエル! いえ、エトワール! 貴方、本当に殿下のこと好きじゃなかったの?」
「そうですわよ? もともと、ずっとそう言っていたじゃありませんか」
そう、わたくしの使命は、バルシュタインの繁栄のため、より領地を豊かにするため、地位と権力と金とコネを持つ殿方と結婚すること!
この学園に入学する前から使命を果たすべく婚活をしていて、その最高の目標である王太子の婚約者となるべく、親友であるハーティア嬢と、レオナ嬢にはそのことを伝えて協力をお願いしていましたの。
「うそぉ、私は、そんなぁ、エルが殿下のことが好きで、婚活がうんぬんって話はただの照れ隠しだと思っていたんだよぉ?そんなぁ、ええ、だから、私、エルの良いところを分ってくれない殿下はひどいって、ええ、そんなぁ」
頭を抱えてハーティア嬢は、なにやらぶつぶつと呟きだしてしまいました。
「もう、エル! それ、殿下に対して失礼だよ!?」
「商人の娘のくせに、ハーティア嬢ってロマンス主義よねぇ」
「!?」
レオナ嬢の軽口に、ハーティア嬢はびくりと体を震わせて固まってしまいました。
ここは貴族出身の生徒が多く、ハーティア嬢のように貴族出身ではない、いわば庶民出身の人間は少ないのですわ。
ほとんど表立って差別すようなことはしませんが、中にはハーティアを庶民と見下すような真似をする輩もいますの。
そして、ハーティアはそういう言動に傷ついていましたの。
「レオナ嬢、言い過ぎですわ。ハーティア嬢に謝罪なさって」
「………ごめんなさい。ハーティア、失言だったわ」
「いいえ」
「はい、これで、この件は終了ですわ。二人共、わたくしと殿下のこれからについて、相談にのってください!」
そしてそこでしばらく三人で泣いていましたわ。
わたくしたちが落ち着いてきたタイミングを見計らって、バルトたちは、わたくしたちにお茶を入れてくださいました。
お礼を言ってカップを受け取り、お行儀が悪いですが、温かいお紅茶の入ったカップを包むように両手で持ちました。
指先と手のひらが温められるかんじは、体から緊張がぬいてくれました。
「お行儀がわるいですが、このままごちそうになりますわ」
わたくしの言葉に、バルトはぶっと頬をリスのように膨らませ、唇を波うたたせました。
「ええwwwどうぞwww」
「………冗談ですわ。わたくしがそんな真似をすると思って?」
「いえいえ」
バルトを睨みつけると、バルトは姿勢と顔の表情筋をただして首を振りました。
わたくしが外で令嬢らしからぬことをすると、バルトはすぐに笑いますの。
だから気が抜けませんわ。
「それで、エトワール様。これからどうするおつもり?」
淑女らしく指先を揃えてティーカップを持ってお茶を口に注ぐレオナ嬢は、私を見ながら目を細めました。
「もちろん、あの場では流しましたが、わたくし王太子殿下との婚姻を諦めるつもりなんてありませんわ」
わたくしはにっこりと笑みを浮かべてレオナ嬢に宣言いたしましたわ。
「え………エトワール様………。そんなにも殿下のことが好きなんですね………」
「はい?」
胸を押さえつけ、痛みに耐えるような表情を浮かべたハーティア嬢の言葉に、わたくしが首を傾げると、ハーティア嬢は目を見開いて驚いていました。
「え?」
「好きではありませんわよ」
「好きじゃない? エルは、王太子殿下を好きじゃない?」
「はい」
そうですわ。
「まって、待って、待ってくださいエル! いえ、エトワール! 貴方、本当に殿下のこと好きじゃなかったの?」
「そうですわよ? もともと、ずっとそう言っていたじゃありませんか」
そう、わたくしの使命は、バルシュタインの繁栄のため、より領地を豊かにするため、地位と権力と金とコネを持つ殿方と結婚すること!
この学園に入学する前から使命を果たすべく婚活をしていて、その最高の目標である王太子の婚約者となるべく、親友であるハーティア嬢と、レオナ嬢にはそのことを伝えて協力をお願いしていましたの。
「うそぉ、私は、そんなぁ、エルが殿下のことが好きで、婚活がうんぬんって話はただの照れ隠しだと思っていたんだよぉ?そんなぁ、ええ、だから、私、エルの良いところを分ってくれない殿下はひどいって、ええ、そんなぁ」
頭を抱えてハーティア嬢は、なにやらぶつぶつと呟きだしてしまいました。
「もう、エル! それ、殿下に対して失礼だよ!?」
「商人の娘のくせに、ハーティア嬢ってロマンス主義よねぇ」
「!?」
レオナ嬢の軽口に、ハーティア嬢はびくりと体を震わせて固まってしまいました。
ここは貴族出身の生徒が多く、ハーティア嬢のように貴族出身ではない、いわば庶民出身の人間は少ないのですわ。
ほとんど表立って差別すようなことはしませんが、中にはハーティアを庶民と見下すような真似をする輩もいますの。
そして、ハーティアはそういう言動に傷ついていましたの。
「レオナ嬢、言い過ぎですわ。ハーティア嬢に謝罪なさって」
「………ごめんなさい。ハーティア、失言だったわ」
「いいえ」
「はい、これで、この件は終了ですわ。二人共、わたくしと殿下のこれからについて、相談にのってください!」
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