星の乙女は宙に歌う

燈太

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第6話 王子様とウワサ

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 前言撤回。星那は一瞬で話を聞くのが憂鬱になった。
 
 まさかの自分は宇宙人発言である。

 そういえば、昨日も我が星においでくださいなどと言っていた。彼は不思議電波キャラなのか。いや、不思議宇宙人キャラ?こんなに見た目が王子様なのに、中身は宇宙人ってこと?

 「天川さん?聞いてる?」
 「……なんか、頭痛くなってきた」
 「えっ」

 思考がこんがらがって、頭がズキズキしてくる。初夏の朝の日差しも相まって、ぼーっとして顔が熱くなってきた。寝不足もあるのだろう。昨夜はうまく寝付けなかったから、きっと睡眠が足りてない。

 「大丈夫?どこかで休む?」

 心配そうな顔で、山田は星那に声をかけてくる。

 (うーん。悪い人ではないんだよなぁ。変なだけで)

 と、星那は王子様の宇宙人発言に複雑な気持ちになる。彼はこうして星那の体調を普通に心配してくれるし、昨日だって公園で暗くなるから危ないと心配してくれていた。

 「ううん、大丈夫。学校に着いたら保健室で休むよ。話は、またあとでゆっくり聞かせて」
 「……わかった。無理はしないで。保健室まで送るよ」
 「え、大丈夫だよ。ひとりで……」
 「いいから。俺がそうしたいんだ。荷物も持つから、貸して」

 そう言って山田は、星那の鞄を半ば奪うように取った。どうやら、代わりに持ってくれるつもりらしい。ちょっと強引だけど、星那は彼の親切を素直に受け入れることにした。

 「……あの、ありがとう」
 「うん」

 青い目が細められて、ふっと山田は柔らかく笑みを浮かべる。

 (やっぱり、見た目は王子様だ……)

 不覚にもときめいてしまった星那は、赤くなった顔を隠すように俯きながら、山田と二人で学校までの道を歩いたのだった。




*




 「ちょちょちょ!星那!星那!!アンタどういうこと!?山田君と朝一緒に登校したって!?あっ、体調は大丈夫!?」
 「芽衣……声、うるさ」
 「あ、ごめん。……で、どういうこと?」

 保健室で休んでいた星那を突撃してきた芽衣は、まるで尋問官のようにどういうことかと今朝の出来事について質問してきた。星那の体調不良と、王子様との噂を聞いて一時間目が終わって直ぐに飛んできたのだという。

 こんな大きな声で騒いだら普通は怒られてしまうが、保健の先生が不在だったのが幸いである。

 「どうもこうも……色々あって……あ、体調は軽い熱中症だから大丈夫」
 「色々ってなによ。てか三年生の間でめっちゃ噂になってるよ、星那が転入生の王子と付き合ったって」
 「はっ!?つ、付き合うとかそんな、ない!ないから!!」

 ベッドに横にしていた身体を勢いよく起こし、星那は大声で否定した。

 「え~?だって昨日音楽室でさあ、星那ってば山田君のピアノに見惚れてたじゃん?そのあと山田君と星那、熱く手を握りあって……」
 「あれはただの握手でしょ!!よろしくってだけの!」
 「えー、でも握手したの星那だけだし。それになーんか熱い視線を送られてたじゃん、山田君に」
 「あ、熱い視線?」

 そんなの身に覚えがない。いや、まてよ。

 ――音楽室で歌声を聞いた時から、もしかしたらと思ってたんだ。

 「あ」

 山田の言葉を思い出す。たしか、昨日公園でそんな事を言っていた。

 「なぁに、やっぱ心あたりあるんじゃない」
 「ちがっ、……いや、違わないかも。見られてたのは、多分……」

 "星の乙女"とやらを探していた、自称"宇宙人"の山田君。

 「……私に、目をつけて……?」

 音楽室で合唱した時の星那の声を聞いて目をつけ、山田は部活後の星那を追いかけてきたのかもしれない。もしかすると公園で出会ったのも偶然ではないのだろうか?星那の歌声を確かめようと、尾けてきていた?それってなんだかまるで。

 「……ストーカーみたい」
 「えっ、山田君にストーカーされてんの?」
 「え!あっ、ちがうちがう!!今のなし!!」

 怪訝そうな顔をする芽衣に、今のは忘れてくれと星那は慌てて否定する。

 「ふーん?まあともかく、山田君も心配してたし体調大丈夫そうなら二時間目からおいでよ」
 「……うん。そうしようかな」

 自分が噂の的になっているらしい中で、教室に戻るのは憂鬱だけど。と、星那は悩みながらも立ち上がった。



*



 教室に入ると、ザワザワっと一斉に星那に注目が集まった。好奇心や妬みの視線を向けられて、星那は冷や汗をかく。

 (す、すごく見られてる……!なんでこんなことに……)

 「天川さん!」
 「はひっ!」

  背中を丸めて縮こまりながら自分の机へと向かう星那に、噂のもう一人である山田オリオンが駆け寄ってきた。

 「体調はどう?」

 山田が親しげに星那に話しかけたことで、さらに教室中の視線が集まった。

 (い、居心地が悪い……!)

 「……や、山田君」
 「頭痛は?気分はどう?」
 「も、もう大丈夫。……いま、違う意味で頭痛いけど」
 「それは……ごめん、俺のせいだね。まさか朝一緒にいただけでこんな噂になるとは思わなくて」

 申し訳なさそうに眉を下げる山田に、星那はため息を飲み込む。思わず山田のせいにしてしまいたいところだが、よくよく考えたら彼に責任はない。発端を作ったのは確かに山田ではあるが、こうして噂になっているのは二人でいた所を大げさに騒ぐ学校の人達が原因である。
 
 けして山田が悪いことをした訳では無いのだから、責めるわけにはいかない。

 「謝らないで。一緒に登校したのは事実だし……みんな面白がって騒いでるだけだから、気にしなければ大丈夫」

 そう言うと、山田はほっと安堵の息を吐いた。どうやら騒ぎになったことで、星那が怒っているのではと思ったらしい。
 
 「それならよかった。天川さん、放課後……部活が終わったら話したいんだけど」

 いいかな?と、遠巻きに星那たちを見守るクラスの皆に聞こえないよう、小声で山田がそう口にする。今朝またあとでとは約束したがこの騒ぎで学校にいる間はまともに会話が出来そうにない。放課後、静かな場所で改めて話すのがいいだろう。

 昨日の公園で。と付け足す彼に、星那は肯定の意で小さく頷きを返したのだった。


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