138 / 359
第137話 イグニスの想い
しおりを挟む下層階、多くのドラゴンが生息する領域、冒険者にとってここほど過酷でそして金になる場所はない。通称ドラゴンパレードと呼ばれ恐れる憧れの場所。
そして俺達は下層階に着いた。
さて、ここからが本番だな!
ゆえに……一度休憩を取ろう!
飯を食べて軽く身体を拭いて寝るか。
もちろん警戒は怠らない。必ず見張りを立てて寝る。抜かりはないぜ!
「な~な~タクト」
カンナが背中を叩き喋りかけてきた。
「ん?どうしたトイレか?だから飲み過ぎだって言っただろ」
「ちゃうちゃう、トイレはさっき行っとるでぇ!それにそんなにしょっちゅう行っとれへんわ!トイレキャラにせんとってぇ!」
「なんだよトイレキャラって?それは置いといて!何が言いたいんだカンナ」
「一回家に帰ろうや、みんな疲れとるやろ」
「はぁ!」
カンナの言っている意味、確かに、なんで気が付かなかった。帰ればいいじゃん!こんな危ないところ。
「くぅ~ボクはアホだった!」
「せやな」
「やかましいわ!いちいち反応すんな!……でもありがとう」
「いや~照れるやん!そんな面と向かって言われると、でもも~っといってぇ~や」
俺達はカンナの作った特別な異空間にある家に帰ることにした。
空間転移……本当に便利だ。魔力をアホほど使うが、この便利さを考えると納得が出来る。
俺達はダンジョンから一度戻り、それぞれ半日ほど休むことにした。俺とカンナ、ニキは家に戻ると、その横に大木がそびえ立っていた。
なんだこれ?いつのまにこんな物が生えた。いくらなんでも成長し過ぎだろ。
「なんじゃもう戻ったのか?」
ローム先生が木から生えていた。
何やってるんだよこの先生は?
「いえ、ちょっと休憩です。またすぐに出て行きますけど、何やってるんですか先生」
「何をとは何じゃ?我は芸術的な家を作っているのじゃ、どうじゃこのそびえ立つ漲る生命の鼓動、そして枝の角度、アンバランスでありながら見る。角度によってはシンメトリーが取られておる。これにさらに実をならす。そしてこの木を見ながらそれを食べるのじゃ!」
「結局食欲なんですね先生」
「違ーうのじゃ!それだけで終わらせるでない!良いかタクト、美しいものを見て食べる。これこそが至福であり我が芸術なのだ!その辺が周りの者は分かっておらん。何故分からんのじゃ!」
ん~結局食欲が全てな気がするけど、先生的には違うのか、確かに料理は見た目も重要とは言うけど一般的にはそこまでこだわらないからな。
俺は大木を見上げる。
確かにすごく綺麗だ。見るものを圧倒する迫力と先生こだわりの剪定がされて芸術的である。食欲の話を抜けばそれなりに腹落ち出来るんだけど……
先生はまだ仕事を続けるとのことで、俺達は家に入り、軽い食事で済ませ就寝した。
……………▽
起きると両サイドにカンナとニキがぐ~すかと寝ている。俺はこれ以上寝れそうにない。ゆっくり起こさない様にベットから降りるともう一度大木でも観賞しようと外に出る。
「あ!」
「よぉ!帰ってたのか?」
ドアを開けるとイグニスが歩いて来た。
「うん、ちょっと休憩、それでイグニスは何をしに来たの?」
「うん?あ~これよ~」
イグニスはビンを片手に持ち上げる。
日本酒……そう言えばこの間の食事の時えらく感動して飲んでたっけな。
「ロームさんと飲もうと思ってな。ここ最近このくらいの時間になったら、これ持って顔を出してるわけよ。一人で飲むのも悪くはないがロームさんは結構飲める口みたいでな、付き合ってもらってるってわけよ」
なるほど、それで日本酒片手にここに……にしても、イグニスがカミラさんの旦那とは、なんか納得が出来ん。正直ひがんでいる自分がいるのは自覚しているし、イグニスは火の勇者、特別な存在だからモテるのも分からんでもない。でもパッと見、モッさいおっさんなんだよな~顔がカッコ悪いかけじゃないけど、どうやってカミラさんを落としたんだ。気になる。
「イグニスあのさ……」
「どうしたタクト?」
何を聞くつもりだオレ!
そもそもカミラさんの件があってイグニスは一時期闇落ちしてたんだろうが、その辺のことを思い出させるようなこと聞いてどうする。空気読めなさすぎだろうが!冷静になれオレ。
「どうしたタクト悩みか?そんなに難しい顔して、よっしゃ!大人のイグニスさんが少年の悩みを聞いたやろうじゃないか」
変な方向に勘違いされた。
上手い言い訳が思いつかず、そのままイグニスに連れられて、大木の出っ張った根っこに座る。
「どうした。言ってみろ。悩みって言うのは簡単にどうにか出来ない。だから悩むものだが、もしかしたら一人では無理でもみんなからなんとか出来るかもしれない。それに話すだけでも気が楽になることもある。さ~おじさんになんでも話してみなさい」
メッチャ優しいなイグニス!?
いつもこんなキャラだったか?
どっちかと言うと、面倒臭がるタイプに思ってたけど、今日はやけにからみ優しい!
「いや~実はな昨日久しぶりにカミラが夢の中に出てきたんだ!俺が悩んでいるといつも声をかけて優しく話を聞いてくれた。まるで天使の様な女だったよ。だからよ俺も真似してみようかと思ったけど、やっぱガラじゃないな~。なんか言ってて小っ恥ずかしくなったわ!ガッハハハ」
結局イグニスはイグニスだった。でも丁度良いか。
「ねぇ~イグニス、カミラさんに今でも会いたい?」
イグニスは笑顔から神妙な顔に変わる。そして
「当たり前だろ!俺がこの世で一番愛した女だ!もう一度会えるなら命だってかけてやるさ!」
イグニスの表情は真剣そのもの、聞いただけなのに、なんかこっちも熱くなる熱気、想いがビシビシと伝わったよ。
「そう……分かった。その表情と言葉を聞けたら十分だね!イグニスが羨ましいよ!そんな相手が居るんだから、ま~期待しててよ!いい子にしてたらボクが頑張って………プレゼントをあげるからさ!」
俺は立ち上がり歩き出す。
「はぁ?おい!どういう意味だよ?それに悩みは良いのかよ!」
「もう解決した~。イグニスはしっかりとここで待っててくれれば良いから~」
俺は歩きながら手を軽く振り、ダンジョンに戻る為にみんなを呼びに行った。
15
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる