刻印戦記-AlterFrontier(アルターフロンティア)

ワサオ

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第2章 骸帝編 

第34話 田舎育ちの強戦士(2)

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 Syoからのメッセージを見て、不思議を思う中、芽威を優先してAlterFrontierからログインした。

「終わりましたよ‼︎芽威様~‼︎」

 そう言いながら灯台から下を眺めると、芽威が口をメガホンのようにしながら声を上げる。

「早く降りてこ~い‼︎」
「へいへいぃ~」

 適当な返事をし、渋々降りていく。そして降りると10cm程背の差がある芽威が怒った顔でバッグを投げつけてきた。

「もう‼︎またサボって‼︎それにほら‼︎」

 芽威が布に包まれた小さな箱を渡して来た。

「弁当まで忘れるなんて‼︎」
「いやぁ~ごめんごめん‼︎噴火龍との戦いに夢中になってしまって」
「そうだと思った……私が一緒にプレイしてないと時間の事、忘れちゃうんだから……」

 顔を膨らませて怒ると、柳星は笑いながら芽威の頭を撫でた。

「へへへ……学校も良いがこんな良い天気にAlterFrontierしないものねぇ~‼︎」

 芽威を身体を震わせながら、柳星の手を荒く払った。本人なりの精一杯の怒りを見せた。

「ふざけないの‼︎」

 ーーーーーーーーーーーーーー

 2人は町へと戻り、色んなお店が立ち並ぶ商店街を歩いている。芽威は自転車を押しながら歩き、柳星は頰を抑えながら歩いていた。
 すると魚屋の店主が2人を観ると2人に対し大声をあげた。

「柳星また学校サボったのか‼︎そのほっぺを見れば分かるぞ‼︎芽威ちゃんに叩かれたんだろ‼︎」
「うるせぇやい‼︎」

 顔を赤らめて怒る柳星。それを見て他の店の店主達も大笑いしながら言う。

「あははは‼︎やっぱりお前は芽威ちゃんがいないとダメだね‼︎」
「学校にちゃんと行けよ‼︎」
「彼女の為にも頑張れよ‼︎」

 商店街全域で、サボっている柳星の話題でいっぱいになった。その間、芽威は笑っているが、柳星は恥ずかしくて頭を下げっぱなしになっている。
 そんな柳星に芽威はニヤニヤとしながら耳元で囁く。

「恥ずかしい?」
「あぁ……とってもな……多分1週間は笑いもんだな」
「自業自得よ」

 商店街を抜け、そのまま歩いていると目の前から、ひと昔前のリーゼントや金髪のピアスをしているいかつい顔などの不良高校生10名が柳星の前に立ち塞がった。

「お前かぁ鬼神って呼ばれている奴は⁉︎」
「ぶちのめしてやるぜぇ⁉︎」
「柳星……」

 芽威が怖くなって柳星の背後に回り、軽く柳星の裾を引っ張る。すると柳星はゆっくりと顔を上げた。

「あぁん?」

 顔を上げると、そこにはさっきの恥ずかしそうな顔でもなく、笑っていた顔でもなく、鬼のように怒り、ガンを飛ばしている柳星の顔だった。
 その迫力のある顔に、不良達は少し引き気味になり、冷や汗が出てきた。

「……ひ、でも俺達はお前をぶっ飛ばして……やる……ぞ‼︎」

 10人もいるのに、少しずつ手が震え始めてきた不良達。柳星は芽威を手で後ろへも下げた。そして一歩前に出て、不良達を睨みつける。

「あのなぁ……今の俺は、ちぃぃぃっとばかり気が荒いんでな……来い‼︎」

 そして芽威の頭を撫でて、微笑みながら眼を見て優しく言った。

「少しばかり言ってくるからな」

 そう言うと芽威は素っ気ない感じに言い放った。

「あっそ……行ってらっしゃいね、相手を病院送りしない程度に」
「……分かってるよ」

 そしてバッグを芽威に渡し、手でジェスチャーして、不良達を近くの空き地へと呼び寄せた。

 ーーーーーーーーーーーーーー

 数分後……

「う、うぐぅ……こんな事が」
「我々を倒すなんて……」

 不良達が山のようになって倒れていた。それに対して、柳星は傷1つなく制服に着いた埃を払っていた。

「じゃあな」

 そのまま空き地を立ち去った。すると空き地の前に芽威が待っていた。それを見て、柳星はため息を吐いた。

「何で俺がいつもこんな目に……元はと言えばお前が不良をボコボコしたら、俺がやったみたいな感じされて……それがどんどん噂になってこんな風に……挙げ句の果てに鬼神って異名が……」
「あっちも悪かったわよ‼︎女の子だからってナンパしてくるから……でも柳星も強くて良かったじゃん」
「気づいたらお前が気弱い女の子みたいな感じになって、俺が噂の強い奴みたいじゃねぇかよ‼︎名前も鬼丸柳星だしよ‼︎」
「いいのいいの‼︎私だって喧嘩はしたくないもん‼︎」
「空手やってる奴がよく言うぜ……」

 ーーーーーーーーーーーーーー

 そして公園についてベンチに座り、今日AlterFrontierから届いた通知を芽威に見せた。

「何これ?」
「さぁ、さっき届いた奴でな……シーカーって奴から来たんだ、どっかで聞いたような……」

 お互いに何か思い出せそうで、思い出せない2人。どんな姿で、どんな奴だが思い出せない。すると芽威が何かを思い出した。

「シーカーって……確か……あぁ‼︎思い出した‼︎」
「何だ⁉︎」
「違法カジノで、ブルダングを1人で持ち上げたって人だよ‼︎それに保安局からも何とか逃げ切ったって」
「ぶ、ブルダングを持ち上げて、保安局からも逃げた⁉︎」
「す、すごい……そんな奴からお誘い来たってのか⁉︎」

 芽威もその通知を見て、やはりどこか気になる事も多いのか不思議そうな顔をする。

「骸帝……?センスのない名前ねぇ」
「俺はカッコいいと思うけどね」
「もっと……こう……悪役っぽく……私ならマッドネス木村……とか?」

 あまりにも謎なネーミングセンスに柳星も口を開けてだんまりを決め込んだ。

「……すごいね……」
「でしょ‼︎」

 そして柳星は話題を逸らすようにベンチから立ち上がり、右腕を上げた。

「……よし‼俺は︎このシーカーの元に行くぞ‼︎」
「えぇ⁉︎こんな怪しいメッセージの元に行くの⁉︎」
「当たり前だ‼︎もちろん芽威も来い‼︎」
「私、今日空手の稽古が……」
「今日は休め」
「そんなぁ……」
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