45 / 46
第2章 骸帝編
第44話 紅き日の夕陽の先に
しおりを挟むフィールドからホームへと戻ってきたシーカーとオーガスター。お互いに傷つき、疲れているのにもかかわらず、ただ肩を組んで高らかに笑っていた。その笑いは喧嘩した後、お互いを認め合ったように。
「ははははは‼︎」
「ははははは‼︎」
Syoは呆れながら言う。
「あんな激戦してたくせによく笑っていられるなぁ……」
メルクリも2人を見て微笑む。
「1度拳を振るった仲だ、仲良くなるって事だよ」
「そうかね~」
アルやアモレもボロボロになっているシーカー達に駆け寄る。シーカーの身体は至る所が傷つき、上半身に切り傷が残っていた。
「大丈夫シーカー?その傷」
「あぁ全然大丈夫さ、こんくらい」
「……よかった……」
アモレもオーガスターに駆け寄り、すぐにポケットから回復アイテムの塗り薬を取り出し塗り始めた。
「全く……負けちゃうなんて」
「すまんすまん‼︎でも俺は満足だぜ、こんな凄い戦いは‼︎」
「も~う」
そんな看護されているシーカーとオーガスターを見て、Syoはヤケクソ気味な声でメルクリに愚痴る。
「あ~‼︎俺もこうなりてぇ~‼︎あんたの未来が見える能力で俺に可愛い女の子が隣にいる未来は見えないのぉ~?」
「そんな事には使いたくないの僕は」
笑顔で言うきつい言葉に心にグサリと何かが刺さった気分になるSyoであった。
「……ガクリッ」
ーーーーーーーーーーーーーー
体力を回復したシーカーとオーガスターはソファーに座り、面と面を向き合って約束の話をした。
「オーガスター‼︎そしてアモレ‼︎約束通り骸帝との戦いに加わってくれるな」
「もちろん、俺は約束は守る男だ」
「オーガスターがそう言うなら私も」
2人が言った瞬間、メルクリの頭の中に何かが写り込んだ。それのせいかいきなり立ち上がった。
「ど、どうしたんだ?」
シーカーが心配そうに言うと、メルクリの身体から大量の汗が流れてきた。まるで表情がないロボットのようだった。そしてか細い声で言った。
「未来が……少しだけ変わった」
「えっ?」
未来が変わったといきなり言われても、みんなは困惑するばかりである。そしてメルクリはまだか細い声で話す。
「み、みんな……僕の肩に掴まってくれ。そして目を瞑ってくれ……」
「……わ、分かった」
多少不気味な雰囲気を出すメルクリに、言うがまま全員が肩に掴まった。そして目を瞑った。メルクリには少し先の未来の光景を写す事が出来る能力がある。肩を掴んだ全員にその光景が広がった。
そこには前回シーカー達が見せてもらった光景とは違った。前回はシーカーとメルクリの2人が黒い影の前で倒れていた。だが、今回見た光景は倒れているのが、前回の光景にアモレ、アル、オーガスターの3人が加わっていた。
「俺たちが……」
「倒れているわ……」
だが、全員が倒れているとは限らなかった。
その光景の中1人だけ立っている奴がいた。それはシーカーだった。体がボロボロで立っているのもやっとな姿だった。
シーカー自身もこれには思わず肩から手を離してしまった。
「くそっ……やはりまだ足りないか……」
「これが本当だとしたら……俺がいても無理なのか」
落胆し、自分に拳を強く握りしめるオーガスター。自分の強さが通じない相手の存在に。
だが、メルクリはすぐにいつもの笑顔に戻り、語り始めた。
「でも未来は変わった、君達が仲間になったくれたおかげで……まだまだ仲間を増やせば、更にこの未来も変わって行く……」
「……」
ーーーーーーーーーーーーーー
そして一旦の別れの時、オーガスターとアモレはシーカー達とフレンド登録して、いつでも連絡を取れるようにした。
「もし何かあったらすぐに連絡するかな」
「分かった……1つ言いたい事がある」
「何だ?」
「俺の鬼ノ目はまだ第1段階の状態だ……いづれ、第2・第3の状態を見つけたら戦ってくれるか」
「……もちろんだ、俺も炎の刻印の更なる力を見つけてやる‼︎」
2人は笑いながら拳をぶつけ合った。ここに1つの男の友情が新たに芽生えた。
そして隣でも、もう一つの友情が生まれていた。
「次のライブの時、貴方に特別席を用意してあげる」
「ほ、本当ですか⁉︎」
「敬語じゃなくていいわよ、さん付けもなしよ」
「わ、分かったわ……アルちゃんさん、じゃくてアル……さん」
ぎこちない言い方に多少戸惑い苦笑するアルだが、一生懸命照れながら言っているアモレに好感を抱いた。
アルはそんなアモレの手を両手で握り、優しく笑顔で言った。
「大丈夫‼︎一緒に居れば段々慣れるから‼︎相談があっていつでも言ってね‼︎なるべく聞いてあげるからね」
「あ、ありがとう‼︎アル……」
「うん‼︎」
涙混じりの笑顔でアルの目を見て礼を言うアモレ。2人の握手はより強まり、更に友情が深まった。
そしてみんなに手を振りながら、2人はゲームからログアウトした。
ーーーーーーーーーーーーーー
AlterLinkを外した。2人は灯台の頂上にいて、座りながらプレイしていた。
「あーやっぱりこの時間に見るこの風景は絶景だな……」
「そうね」
時は夕暮れ時、海に面しているこの町だからこそ見える風景。青色とオレンジ色が混じり合った空。そこに夕日の半分が、海に隠れて海をオレンジ色に染め上げていた。綺麗、それしか言うことが浮かばない。特に今日と言う日は特に綺麗だった。
見惚れる2人はそのまま陽が沈むまでオレンジ色の世界を堪能した。
そして陽が沈むと辺りは完全に暗闇と化して灯台からは光が放たれ始めた。2人は灯台から降りて町へと戻る。
道中、芽威が柳星の前に立ち、偉そうに両腰に手を付けて話した。
「そう言えば負けたら"たこ焼き"奢るって言ってたわよね~」
「そ、そんな事言ってたかな~」
トボける柳星に追撃をかける芽威。
「私が空手の稽古を休む代わりにたこ焼き奢るって‼︎」
「あぁ~そうだっけなぁ~」
そう言いながら柳星は財布の中を確認する。それを見て何かを察した芽威。すると、柳星に背中を向けて軽く顔を赤らめながら言う。
「まぁ……今日は頑張ったから勘弁してあげる……新しい友達も出来たし……⁉︎」
びっくりした芽威。それは柳星が微笑みながら頭に手を乗せてきたからだ。
「俺もお前が頑張った褒美にたこ焼き奢ってやるよ‼︎お前は本当に頑張った‼︎ありがとな‼︎」
「ほ、本当に⁉︎」
奢ってもらえると聞き、それに褒められた。これに嬉しくなりはしゃぎながら再び柳星の方を向いた。そこには財布を、逆さまに振っていた柳星がゲスい顔で笑っていた。
「でも……来月な。今月もう金ねぇわ」
「……」
ふざけた言い方、そして期待を裏切られた芽威を怒りを表して拳を振り上げた。
「この嘘付きぃー‼︎」
これに柳星は危険を感じて慌ててその場から逃げるように走り去った。陸上選手顔負けの綺麗なフォームでそそくさと逃げた。
「嘘は言ってないだろ‼︎奢るったっていつとは言ってないぞ~‼︎」
「この空気なら今でしょうが‼︎」
芽威もすぐに柳星を追いかけた。柳星は追いかける芽威を見ながら逃げた。それも、笑いながらだ。そんな事は芽威には通じず、そのまま商店街まで追いかけっこは続いた。いつにも増して元気な2人。今日は2人にとって、とても良い日になった。
そして今日も商店街は賑やか。多分明日の商店街ではこの事で話題は持ちきりだろう。
柳星が逃げったかは明日のお楽しみ
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる