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第6話 リナリアと魔法道具
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「何をしてる!ここは立ち入り禁止――と、これは皇女殿下」
「マルミューラド様!」
「敬称は不要ですよ。マルミューラドとお呼び下さい」
「……その線引き良く分からないんです。メイリンに確認してからにしますね」
「皇女殿下が敬称を付ける相手はグレディアース老とアルフィード様だけと思って大丈夫ですよ」
マルミューラドは頭上からリナリアを一つもいでから地べたに座ると、腰に差していた短剣でするすると皮をむき始めた。果肉がとろとろと落ちてしまう前に結衣の手のひらに置いてくれたのでぱくりと頬張った。
「これ凄く美味しいですね。研究用って言ってましたけど、どういう果物なんですか?」
「リナリアは果物ではなくて魔法生物ですよ」
「生物!?生き物!?じゃあこれ果汁じゃなくて体液!?」
「そうです」
「うそ!!」
「嘘です」
「……何も知らないと思って遊ばないで下さい。今日は聞きたい事があるんです」
「私にですか?」
グレディアース老の話を聞く限り、リナリアは魔力に関係があるような気がした。
魔力だというあの物体はどうみてもこのリナリアの果肉だ。
生き物じゃなくても魔力と同等の物ならば生き物を構成する物質なのかもしれない。
「リナリアって何の研究をしてるんですか?老が見せて下さった魔力とよく似ています」
「魔力ですよ。といっても人工魔力ですが」
「人工?人が作れる物じゃないって聞きました」
「体内では作れません。なので肉体の外で作れないかを研究をしています」
マルミューラドはペンライトのような物を取り出した。
先端に鉱物のような物がはめこまれていて、それはまるでゲームに出てくる魔法武器のようだった。
(THE魔法って感じ)
興味津々で結衣が覗き込むと、マルミューラドはくすくすと笑った。
カチカチとスイッチを押すような音をさせると鉱物がポウッと淡く赤く光り、鉱物の内側でゆらゆらと光が揺れていてろうそくのようにも見える。
それをカットしたリナリアにかざすと、さらにとろとろに溶けて、最後はすっかり液体になってしまった。
「溶けた!何ですかこれ!」
「体温調節ですね。人体に見立ててるので温度が重要なんです。やってみますか?」
「やりたい!」
結衣はマルミューラドからそれを受け取りリナリアにかざすと、これもあっという間にとろりと溶けた。
まるで自分が魔法を使ったような気になり、この世界に来てこの瞬間が一番楽しく感じていた。
「楽しい!なにこれ!これ売ってる物ですか!?」
「いいえ。俺が作りました」
「え!?手作り!?絶対売った方が良いですよ!楽しいし綺麗だし!いいなー!」
「ヴァーレンハイト皇国は魔法文化ですから需要が無いんですよ。俺は魔法使いたくないから横着してるんです」
「使いたくないんですか?どうして?」
「俺は蓄積魔力が少ないですから。使いすぎると貧血になるんです」
蓄積魔力。結衣は初めて聞く単語に首を傾げた。
おそらく蓄積されている魔力という事なのだろうけれど、多い少ないがあり、それが貧血になるというのは一体どういう仕組みなのだろう。
結衣がううん、と首を傾げるとそれを察したのかマルミューラドはクスッと笑った。
「魔力は体積があるので、それを使うというのは肉体の一部が無くなるような事なんですよ」
マルミューラドはもう一本同じ道具を取り出して成長途中のリナリアにかざしていく。
やはりあのペンのような物はいかにも魔法といった感じがする。
「いいな~…」
「そんなに気に入りましたか?」
「はい。だってこんなの初めて見ました。道具で魔法を使うって不思議です」
「ああ、こっちですか」
結衣が欲しがっているのはリナリアだと思っていたようで、マルミューラドはまた一つリナリアをもいでくれていた。
マルミューラドはポケットからもう一本ペン状のそれを取り出すと、はいどうぞ、と手渡してくれる。
「差し上げますよ」
「え!?いいんですか!?」
「リナリア用に作ってるので他の使い道があるかは疑問ですが」
「ううん!嬉しい!有難うございます!」
この世界に来て贈り物は鬱陶しいくらいにもらっている。
最初の頃はお姫様気分で楽しく開封してきゃっきゃと喜んでいたが、しかしそのどれもが「皇女殿下にはご機嫌麗しく~」というゴマすりである事くらい結衣でも分かった。それは対アイリス皇女への政治活動であって、結衣自身への贈り物ではない。
だからこうして皇女ではない結衣に何かをプレゼントしてくれるというのは嬉しかった。
そして、マルミューラドはリナリアの育て方や他の果物にどんな魔法がかかっているのか、他にはどういった道具があるのか――そんな話を色々聞かせてくれた。メイリンからも聞いた事の無い話が豊富で、まるで喋る参考書を手に入れた気分だった。
そんなこんなあれこれお喋りをしていると、あっという間に一時間が経過してしまった。
「しかしいつまでもこんな所にいてよろしいのですか?レイ侍女長が心配なさるかと思いますが」
「あ!そうだ!戻らなきゃ!ねえ、また来ていいですか!?」
「いいえ、いけません」
「……そうよね。邪魔よね。ごめんなさい」
まさか正面切って拒否されるとは思っていなかったのでショックだ。
しょんぼりしていると、マルミューラドはくくっと笑って結衣の頭を撫でた。
「今度は俺が迎えに行きます。だから待ってて下さい」
マルミューラドは急に真面目な顔をして、結衣にリナリアを一つ持たせた。
結衣は与えられる一方の皇女だから自分から会いに行く事はほとんどない。誰もが「お迎えに上がります」だ。だから迎えに行くなんて言葉は聞きなれているはずなのに、あまりにも真っ直ぐ見つめられて何だか緊張してしまう。
「アイリス様。私の名を呼んで下さい」
「え?マルミューラド様?」
「もう一度」
「……マルミューラド様……」
黒曜石のような鋭い瞳で見つめられ、まるで突き刺されるようだった。
マルミューラドが持たせてくれたリナリアをきゅうっと握りしめていると、その指先をついっとなぞるように触れてくる。
「マルミューラド、様!?」
「その名の意味を知っていますか?」
「い、いえ、知らない、です」
「意味は」
何か言おうとしたその時、どこかからメイリンの呼ぶ声が聞こえて来た。
「あ、しまった」
「……お引止めして申し訳ありません」
マルミューラドは一礼すると背を向けて、ひらひらと手を振りリナリアの籠を抱えて去っていった。
そしていつものルーティンで、勝手にマルミューラドに会った事を怒られた。
たっぷり一時間近く説教をされ、今日はもう部屋から出てはいけません、と軟禁されてしまった。
けれど結衣も遊び惚ける気分では無かった。ソファに深く腰掛けて、マルミューラドに貰ったリナリアと、リナリアと一緒に渡された物をじっと見た。
(名札だ。どうみても日本の幼稚園の名札ケース)
渡されたのは黄色いチューリップを象ったビニール製の名札ケースだった。
彼の祖父であるグレディアース老は道端で拾ったと言っていたが、つまりマルミューラドはどこから来たのか分からないという事だ。
(顔が整いすぎてて見落としてたけどあの顔立ちは日本人だ)
ヴァーレンハイト皇国は総じて北欧系の顔をしている。
皇王とアイリスを除けば金髪がほとんどなのに、マルミューラドは黒髪黒目だった。
そして彼は間違いなく日本人だと結衣は確信していた。
その理由は――
『ルーヴェンハイト皇国に注意しろ』
チューリップの名札ケースには日本語でそう書かれたメモが入っていた。
*
「ルーヴェンハイト皇国ですか。我が国の分家のような国ですが、皇女殿下は外交に興味がおありですか」
「まあ、大袈裟ですわ。ただ私はこの国に害をもたらす者がいたらどうしようかと不安で。こういった事は陛下の右腕でもあるアルフィード様にご指導頂きたいのですが、ご迷惑でしょうか」
「まさか!大変光栄です。さあ、おかけ下さい」
いつもならこういう事はメイリンに聞けば良いだけなのだが、得られた回答は「ヴァーレンハイト皇国の姉妹国家ですよ」だけだった。
全侍女を統括する皇女付きのメイリンがそんな薄っぺらい情報しか持っていないわけが無いのに、それ以上の事は一切喋ろうとしない。明らかに何か隠しているのだ。
「ルーヴェンハイト皇国は我がヴァーレンハイト皇国の姉妹国家ですが、どういった人間が済んでいるかはご存知ですか?」
「人間、ですか?同盟を組んでいる人でしょうか」
「いいえ。あそこは落ちこぼれが集まる足きり国家です」
アルフィードは眩しい笑顔で、なんなら面白そうに笑った。
これで目が笑ってないとかいうなら腹黒だと思えるが何とも爽快な笑顔だ。心の底から面白がっているようだった。
「生まれてすぐ魔力査定を行いますが、魔力量が規定に及ばない場合はルーヴェンハイトへ移住させます」
「そんな事したら恨まれるんじゃないですか?」
「そういう輩もおります。ですが魔法も使えないあの程度の人間が何千集まろうとも問題にもなりません」
「何千?そんなにいるんですか?」
「ああ、いえ、今は確か千人いるかいないかですよ」
それは結構な人数のように感じた。
全国民が武装兵になるわけでは無いだろうけれど、何かしらの武器を持って攻め込んで来たら決して被害は小さくないだろう。
(そういやこの国って人口どれくらいなんだろう)
城から見る限り城壁はそう遠くない。肉眼で捕らえられる程度の位置にはある。あの先どこまでがヴァーレンハイト皇国なのだろう。
さすがにそんな基礎知識を聞くのは気が引ける。これは本でも読んで調べる事にした。
「恨みよりも羨んでいるのですよ。連中は魔法を誰でも使える物にしようとしているのです。馬鹿らしい」
「……誰にでも、ですか?」
結衣はポケットに入れっぱなしにしていたマルミューラドのくれたペンにそっと触れた。
これは魔力節約のための道具だと言っていた。という事はこれは魔法を誰にでも使える物にしたという事だ。
しかしよく思いだすと、マルミューラドのペンは結衣にとっていかにもな魔法アイテムだった。つまり魔法を道具にするというのは地球の発想なのだ。
(じゃあもしかしてルーヴェンハイトって地球人がいる国……?)
マルミューラドは何か知っている。今すぐ彼と話がしたい。
そう思っていると、アルフィードから思わぬ新情報が与えられた。
「第一皇子と第二皇子は陛下への忠誠が薄いので不安要素ではありますが、私が気に食わないのは第三皇子です。皇女殿下との婚姻を望むとは万死に値する」
「っこ、婚姻?初耳です!」
「もちろん却下です。ですが陛下への忠誠が厚く頭もキレる。陛下も目をかけているのですが、おかげで調子に乗って高望みをしているのですよ」
「そ、そうなんですね……」
「申し訳ございません。余計な不安を与えてしまいましたね」
「い、いいえ」
(皇子がいないんだからアイリスの子供が跡継ぎよね。て事は私政略結婚させられるって事?)
UNCLAMP以外にも問題はありそうだ。
「マルミューラド様!」
「敬称は不要ですよ。マルミューラドとお呼び下さい」
「……その線引き良く分からないんです。メイリンに確認してからにしますね」
「皇女殿下が敬称を付ける相手はグレディアース老とアルフィード様だけと思って大丈夫ですよ」
マルミューラドは頭上からリナリアを一つもいでから地べたに座ると、腰に差していた短剣でするすると皮をむき始めた。果肉がとろとろと落ちてしまう前に結衣の手のひらに置いてくれたのでぱくりと頬張った。
「これ凄く美味しいですね。研究用って言ってましたけど、どういう果物なんですか?」
「リナリアは果物ではなくて魔法生物ですよ」
「生物!?生き物!?じゃあこれ果汁じゃなくて体液!?」
「そうです」
「うそ!!」
「嘘です」
「……何も知らないと思って遊ばないで下さい。今日は聞きたい事があるんです」
「私にですか?」
グレディアース老の話を聞く限り、リナリアは魔力に関係があるような気がした。
魔力だというあの物体はどうみてもこのリナリアの果肉だ。
生き物じゃなくても魔力と同等の物ならば生き物を構成する物質なのかもしれない。
「リナリアって何の研究をしてるんですか?老が見せて下さった魔力とよく似ています」
「魔力ですよ。といっても人工魔力ですが」
「人工?人が作れる物じゃないって聞きました」
「体内では作れません。なので肉体の外で作れないかを研究をしています」
マルミューラドはペンライトのような物を取り出した。
先端に鉱物のような物がはめこまれていて、それはまるでゲームに出てくる魔法武器のようだった。
(THE魔法って感じ)
興味津々で結衣が覗き込むと、マルミューラドはくすくすと笑った。
カチカチとスイッチを押すような音をさせると鉱物がポウッと淡く赤く光り、鉱物の内側でゆらゆらと光が揺れていてろうそくのようにも見える。
それをカットしたリナリアにかざすと、さらにとろとろに溶けて、最後はすっかり液体になってしまった。
「溶けた!何ですかこれ!」
「体温調節ですね。人体に見立ててるので温度が重要なんです。やってみますか?」
「やりたい!」
結衣はマルミューラドからそれを受け取りリナリアにかざすと、これもあっという間にとろりと溶けた。
まるで自分が魔法を使ったような気になり、この世界に来てこの瞬間が一番楽しく感じていた。
「楽しい!なにこれ!これ売ってる物ですか!?」
「いいえ。俺が作りました」
「え!?手作り!?絶対売った方が良いですよ!楽しいし綺麗だし!いいなー!」
「ヴァーレンハイト皇国は魔法文化ですから需要が無いんですよ。俺は魔法使いたくないから横着してるんです」
「使いたくないんですか?どうして?」
「俺は蓄積魔力が少ないですから。使いすぎると貧血になるんです」
蓄積魔力。結衣は初めて聞く単語に首を傾げた。
おそらく蓄積されている魔力という事なのだろうけれど、多い少ないがあり、それが貧血になるというのは一体どういう仕組みなのだろう。
結衣がううん、と首を傾げるとそれを察したのかマルミューラドはクスッと笑った。
「魔力は体積があるので、それを使うというのは肉体の一部が無くなるような事なんですよ」
マルミューラドはもう一本同じ道具を取り出して成長途中のリナリアにかざしていく。
やはりあのペンのような物はいかにも魔法といった感じがする。
「いいな~…」
「そんなに気に入りましたか?」
「はい。だってこんなの初めて見ました。道具で魔法を使うって不思議です」
「ああ、こっちですか」
結衣が欲しがっているのはリナリアだと思っていたようで、マルミューラドはまた一つリナリアをもいでくれていた。
マルミューラドはポケットからもう一本ペン状のそれを取り出すと、はいどうぞ、と手渡してくれる。
「差し上げますよ」
「え!?いいんですか!?」
「リナリア用に作ってるので他の使い道があるかは疑問ですが」
「ううん!嬉しい!有難うございます!」
この世界に来て贈り物は鬱陶しいくらいにもらっている。
最初の頃はお姫様気分で楽しく開封してきゃっきゃと喜んでいたが、しかしそのどれもが「皇女殿下にはご機嫌麗しく~」というゴマすりである事くらい結衣でも分かった。それは対アイリス皇女への政治活動であって、結衣自身への贈り物ではない。
だからこうして皇女ではない結衣に何かをプレゼントしてくれるというのは嬉しかった。
そして、マルミューラドはリナリアの育て方や他の果物にどんな魔法がかかっているのか、他にはどういった道具があるのか――そんな話を色々聞かせてくれた。メイリンからも聞いた事の無い話が豊富で、まるで喋る参考書を手に入れた気分だった。
そんなこんなあれこれお喋りをしていると、あっという間に一時間が経過してしまった。
「しかしいつまでもこんな所にいてよろしいのですか?レイ侍女長が心配なさるかと思いますが」
「あ!そうだ!戻らなきゃ!ねえ、また来ていいですか!?」
「いいえ、いけません」
「……そうよね。邪魔よね。ごめんなさい」
まさか正面切って拒否されるとは思っていなかったのでショックだ。
しょんぼりしていると、マルミューラドはくくっと笑って結衣の頭を撫でた。
「今度は俺が迎えに行きます。だから待ってて下さい」
マルミューラドは急に真面目な顔をして、結衣にリナリアを一つ持たせた。
結衣は与えられる一方の皇女だから自分から会いに行く事はほとんどない。誰もが「お迎えに上がります」だ。だから迎えに行くなんて言葉は聞きなれているはずなのに、あまりにも真っ直ぐ見つめられて何だか緊張してしまう。
「アイリス様。私の名を呼んで下さい」
「え?マルミューラド様?」
「もう一度」
「……マルミューラド様……」
黒曜石のような鋭い瞳で見つめられ、まるで突き刺されるようだった。
マルミューラドが持たせてくれたリナリアをきゅうっと握りしめていると、その指先をついっとなぞるように触れてくる。
「マルミューラド、様!?」
「その名の意味を知っていますか?」
「い、いえ、知らない、です」
「意味は」
何か言おうとしたその時、どこかからメイリンの呼ぶ声が聞こえて来た。
「あ、しまった」
「……お引止めして申し訳ありません」
マルミューラドは一礼すると背を向けて、ひらひらと手を振りリナリアの籠を抱えて去っていった。
そしていつものルーティンで、勝手にマルミューラドに会った事を怒られた。
たっぷり一時間近く説教をされ、今日はもう部屋から出てはいけません、と軟禁されてしまった。
けれど結衣も遊び惚ける気分では無かった。ソファに深く腰掛けて、マルミューラドに貰ったリナリアと、リナリアと一緒に渡された物をじっと見た。
(名札だ。どうみても日本の幼稚園の名札ケース)
渡されたのは黄色いチューリップを象ったビニール製の名札ケースだった。
彼の祖父であるグレディアース老は道端で拾ったと言っていたが、つまりマルミューラドはどこから来たのか分からないという事だ。
(顔が整いすぎてて見落としてたけどあの顔立ちは日本人だ)
ヴァーレンハイト皇国は総じて北欧系の顔をしている。
皇王とアイリスを除けば金髪がほとんどなのに、マルミューラドは黒髪黒目だった。
そして彼は間違いなく日本人だと結衣は確信していた。
その理由は――
『ルーヴェンハイト皇国に注意しろ』
チューリップの名札ケースには日本語でそう書かれたメモが入っていた。
*
「ルーヴェンハイト皇国ですか。我が国の分家のような国ですが、皇女殿下は外交に興味がおありですか」
「まあ、大袈裟ですわ。ただ私はこの国に害をもたらす者がいたらどうしようかと不安で。こういった事は陛下の右腕でもあるアルフィード様にご指導頂きたいのですが、ご迷惑でしょうか」
「まさか!大変光栄です。さあ、おかけ下さい」
いつもならこういう事はメイリンに聞けば良いだけなのだが、得られた回答は「ヴァーレンハイト皇国の姉妹国家ですよ」だけだった。
全侍女を統括する皇女付きのメイリンがそんな薄っぺらい情報しか持っていないわけが無いのに、それ以上の事は一切喋ろうとしない。明らかに何か隠しているのだ。
「ルーヴェンハイト皇国は我がヴァーレンハイト皇国の姉妹国家ですが、どういった人間が済んでいるかはご存知ですか?」
「人間、ですか?同盟を組んでいる人でしょうか」
「いいえ。あそこは落ちこぼれが集まる足きり国家です」
アルフィードは眩しい笑顔で、なんなら面白そうに笑った。
これで目が笑ってないとかいうなら腹黒だと思えるが何とも爽快な笑顔だ。心の底から面白がっているようだった。
「生まれてすぐ魔力査定を行いますが、魔力量が規定に及ばない場合はルーヴェンハイトへ移住させます」
「そんな事したら恨まれるんじゃないですか?」
「そういう輩もおります。ですが魔法も使えないあの程度の人間が何千集まろうとも問題にもなりません」
「何千?そんなにいるんですか?」
「ああ、いえ、今は確か千人いるかいないかですよ」
それは結構な人数のように感じた。
全国民が武装兵になるわけでは無いだろうけれど、何かしらの武器を持って攻め込んで来たら決して被害は小さくないだろう。
(そういやこの国って人口どれくらいなんだろう)
城から見る限り城壁はそう遠くない。肉眼で捕らえられる程度の位置にはある。あの先どこまでがヴァーレンハイト皇国なのだろう。
さすがにそんな基礎知識を聞くのは気が引ける。これは本でも読んで調べる事にした。
「恨みよりも羨んでいるのですよ。連中は魔法を誰でも使える物にしようとしているのです。馬鹿らしい」
「……誰にでも、ですか?」
結衣はポケットに入れっぱなしにしていたマルミューラドのくれたペンにそっと触れた。
これは魔力節約のための道具だと言っていた。という事はこれは魔法を誰にでも使える物にしたという事だ。
しかしよく思いだすと、マルミューラドのペンは結衣にとっていかにもな魔法アイテムだった。つまり魔法を道具にするというのは地球の発想なのだ。
(じゃあもしかしてルーヴェンハイトって地球人がいる国……?)
マルミューラドは何か知っている。今すぐ彼と話がしたい。
そう思っていると、アルフィードから思わぬ新情報が与えられた。
「第一皇子と第二皇子は陛下への忠誠が薄いので不安要素ではありますが、私が気に食わないのは第三皇子です。皇女殿下との婚姻を望むとは万死に値する」
「っこ、婚姻?初耳です!」
「もちろん却下です。ですが陛下への忠誠が厚く頭もキレる。陛下も目をかけているのですが、おかげで調子に乗って高望みをしているのですよ」
「そ、そうなんですね……」
「申し訳ございません。余計な不安を与えてしまいましたね」
「い、いいえ」
(皇子がいないんだからアイリスの子供が跡継ぎよね。て事は私政略結婚させられるって事?)
UNCLAMP以外にも問題はありそうだ。
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