30 / 45
episode17-3
しおりを挟む
美作製品がエラーを起こすと販売部を始め関係部署の責任者が紐づくメーリングリストに通知が届く仕組みになっている。
何しろアンドロイドというのは購入者の個人情報を保有している事がほとんどのため、即座に手を打たなければならない自体も想定されるのだ。
その対策の一つとしてエラーアラートが設定されており、今カフェに出ている製品も同様だ。
「何のエラーなんですか?」
「分からん」
「分からんて、何でですか」
「製品版のエラー対応は俺の管轄じゃない。ざっと見る限り不特定多数と接触したせいでAIが混乱したんだと思うけど」
「そっか。今回持って来たのってパートナー型ですもんね」
市販されているアンドロイドの中でパートナー型と呼ばれる機種は、特定の誰かとの関係性を築く事を前提として作られている。
人間の声や体温など、個人を特定し共にAIで成長させていく商品だ。
しかし今回の様に特定の対象が存在しない場合、誰に照準を合わせれば良いか分からず接した人間全ての情報を蓄積してしまう。
そうなるとスペックの低い機種では情報処理が追い付かずオーバーヒートしてしまうのだ。
「メモリ焼けません?」
「焼ける。こんなに客が多いと思わなかった」
「誰かさんのおかげで嬉しい悲鳴ですねえ」
「それもあるけど、スポンサーに北條がいるってのがデカい。他の企業がアンドロイドカフェに踏み切らないのは不動産の問題があるからだ。何しろアンドロイド対応はリスクがデカいから北條の方がずっと断り続けてたんだ」
「へー。じゃあうちのマンション凄いですね。何でお父さんあんなの作ったんだろ」
「本当だよ。赤字覚悟だろうけど、役員らしからぬ判断だよなあ」
「漆原さん! お客様です!」
「はいはい」
「また女性ですか」
「嫉妬?」
「お金持ちっぽいから一機くらい売って来て下さい」
「……はいはい」
結局一日中漆原を指名する客が絶えず、終わるころにはぐったりとしていた。
しかし翌日、美咲が早めにブースに到着すると漆原は既に着替えて現場の指揮に当たっていた。
「漆原さん。おはようございます」
「はよ。早いな」
「そっちこそ。今何やってるんですか?」
「メンテナンスのスタッフ追加したからフローのレクチャー。ワケわからんまま連れてこられてるから」
「なら私も手伝います」
「ん、頼む」
美作には修理専門の部署もある。
エラー調査やその改修、新商品になる新たなシステムの開発などだ。本来ならこのイベントに参加する部署ではないのだが、今回の出展があまりにも盛況で手が足りず、急遽来てもらう事になったらしい。
既に昨日壊れた機体もあるので修理を始めてくれて、その様子は外からも見えるようになっている。
一般入場が始まると、それに気付いた一人の女性がそろそろと歩み寄ってきた。
「メンテナンスってうちの子も見てもらえるのかしら」
「もちろんですよ。こちらでおうかがいします」
何しろアンドロイドというのは購入者の個人情報を保有している事がほとんどのため、即座に手を打たなければならない自体も想定されるのだ。
その対策の一つとしてエラーアラートが設定されており、今カフェに出ている製品も同様だ。
「何のエラーなんですか?」
「分からん」
「分からんて、何でですか」
「製品版のエラー対応は俺の管轄じゃない。ざっと見る限り不特定多数と接触したせいでAIが混乱したんだと思うけど」
「そっか。今回持って来たのってパートナー型ですもんね」
市販されているアンドロイドの中でパートナー型と呼ばれる機種は、特定の誰かとの関係性を築く事を前提として作られている。
人間の声や体温など、個人を特定し共にAIで成長させていく商品だ。
しかし今回の様に特定の対象が存在しない場合、誰に照準を合わせれば良いか分からず接した人間全ての情報を蓄積してしまう。
そうなるとスペックの低い機種では情報処理が追い付かずオーバーヒートしてしまうのだ。
「メモリ焼けません?」
「焼ける。こんなに客が多いと思わなかった」
「誰かさんのおかげで嬉しい悲鳴ですねえ」
「それもあるけど、スポンサーに北條がいるってのがデカい。他の企業がアンドロイドカフェに踏み切らないのは不動産の問題があるからだ。何しろアンドロイド対応はリスクがデカいから北條の方がずっと断り続けてたんだ」
「へー。じゃあうちのマンション凄いですね。何でお父さんあんなの作ったんだろ」
「本当だよ。赤字覚悟だろうけど、役員らしからぬ判断だよなあ」
「漆原さん! お客様です!」
「はいはい」
「また女性ですか」
「嫉妬?」
「お金持ちっぽいから一機くらい売って来て下さい」
「……はいはい」
結局一日中漆原を指名する客が絶えず、終わるころにはぐったりとしていた。
しかし翌日、美咲が早めにブースに到着すると漆原は既に着替えて現場の指揮に当たっていた。
「漆原さん。おはようございます」
「はよ。早いな」
「そっちこそ。今何やってるんですか?」
「メンテナンスのスタッフ追加したからフローのレクチャー。ワケわからんまま連れてこられてるから」
「なら私も手伝います」
「ん、頼む」
美作には修理専門の部署もある。
エラー調査やその改修、新商品になる新たなシステムの開発などだ。本来ならこのイベントに参加する部署ではないのだが、今回の出展があまりにも盛況で手が足りず、急遽来てもらう事になったらしい。
既に昨日壊れた機体もあるので修理を始めてくれて、その様子は外からも見えるようになっている。
一般入場が始まると、それに気付いた一人の女性がそろそろと歩み寄ってきた。
「メンテナンスってうちの子も見てもらえるのかしら」
「もちろんですよ。こちらでおうかがいします」
0
あなたにおすすめの小説
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
【完】25年後、君と答え合わせ
こころ ゆい
ミステリー
※完結いたしました。初めてのコンテストで、完結まで辿り着けたこと。全ては読者の皆様のおかげです。本当に、本当に、ありがとうございました!
東山 花乃(ひがしやま かの)24歳。
花乃は、病気に侵され、小さい頃から目がほとんど見えていない。身体も一部麻痺している。
そんな彼女には異性の親友がいた。
手越 千春(てごし ちはる)29歳。
5歳の頃、院内で出会った男の子。成長して医師になり、今では花乃の担当医をしてくれている。
千春の祖父は、花乃の入院する大きな病院の医院長。千春は将来この病院を継ぐ跡取りだ。
花乃と出会った頃の千春は、妙に大人びた冷めた子供。人を信用しない性格。
交流を続けるなかで、花乃とは友人関係を築いていくが、まだどこか薄暗い部分を抱えたまま。
「ずっと友達ね」
無邪気に笑う花乃に、千春は言った。
「ずっと友達、なんてありえない」
「...じゃぁ、25年後、答え合わせをしましょう?」
「25年後?」
「そう。25年後、あなたと私がまだ友達か。答え合わせするの」
「いいけど...どうして25年後なの?」
「...それは秘密。25年後のお楽しみだよ」
そんな会話を出会った頃したことを、千春は覚えているだろうか。花乃は、過保護な千春や両親、友人たちに支えられながら、病気と向き合っていく。
しかしーー。
ある日、花乃は千春に関する不穏な噂を耳にする。
それをきっかけに、花乃は千春にまつわるある事実を知ることになっていくーー。
25年後、花乃と千春が出した答えとは?
🌱この物語はフィクションです。登場人物、建物、題材にされているもの、全て作者の考えた架空のものです。実際とは異なります。
🌱医療行為として、チグハグな部分があるかもしれません。ご了承頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる