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第29話 結の真意
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結が生前できなかった事を取り戻すように双子で遊び尽くして二日目の夜、累達は破魔屋の旦那の部屋に集まっていた。
「お香ですか?良い香りですね」
「旦那は意外とこういうの好きなんだよ」
「屋敷の内装もオシャレだよね。全部旦那さんの趣味?」
「ああ。屋敷を建てたのは旦那だ」
来た当初、鯉屋と内装が似ている事に結が怯えていたので大丈夫だろうかと神威は不安に思っていたが、あれも演技だったのかと目の前で楽しそうにしてる結を見てため息が出た。
「はしゃいんでんじゃねえよガキんちょ」
旦那は片手で持てる程度の小さな飾り台を結に差し出した。
そこには現世でありふれた形状で、誰もがよく知る拳銃が二丁置かれていた。結はうわあ、と目を輝かせてぱっと飛びついた。
「凄い!本当に銃だ!」
「見た目は同じだが、右が対人で左が対出目金だ」
「こんな短時間でよくできましたね。すごーい」
旦那は全て同じ形状をした金属の塊を六個ほど並べた。
依都が興味津々に手を出そうとしたけれど、触るな、と旦那は依都をつまんで神威に向けて放り投げた。
「分かってると思うが、使えるのは銃弾の数だけだ。鉢に配るのは現実的じゃねえな」
「大量に配る必要は無いですよ。リーダーだけに持たせて他は剣で追い詰めるとか、作戦次第です。それより対出目金の弾丸はどうやって作るんですか?」
「そいつは企業秘密だな。破魔屋の連中にも教えてないし、教えたところでできやしねえ。ただこれも有限だ」
「ふうん。じゃあ対出目金銃弾が無限に作れれば、跡取りは放流しなくても良いって事ですよね」
ね、と結は旦那の顔を覗き込んだ。
旦那は目を見開いて一瞬固まると、はははっと声を上げて笑いだした。
「そうか!狙いは最初からそっちか!」
「いえいえ。鉢を助けたいとは思ってますよ」
「ついでにだろ」
「旦那が食い付いてくれてよかったなとは思ってます。それで、どうですか?無限に作れる物ですか?」
「……無限にねぇ……」
旦那は口元に手をやると少しだけ考え込んだ。
どうでしょう、と問う結からふいっと視線を逸らし、指を擦った。作業で怪我をしたのか、旦那の指や手のひらにはぐるぐると包帯が巻かれている。
「僕ね、属人化をするの嫌いなんです。鯉屋にも跡取りにも、そしてあなたにも」
「……何が言いたい」
「それも含めてやるって事です」
結と旦那は毅然と顔を見合わせた。
神威と依都は二人の言っている意味が分からず、何の事、と首をかしげている。累は結に何か言いかけたけれど、結は言われる前に笑顔で黙らせた。
旦那はしばらく結を睨み続けたけれど、くくっと笑った。
「いいだろう。だがそれは現世の知恵を貸せ」
「もちろんです。ついでにもう一つお願いが」
「あ?何だよ」
一つ終わったらまた一つ。
結は綺麗な流れでさらに要求を突き付けた。本来ならここで報酬を確認するのが破魔屋の常だろうが、もう誰もそんな事は言い出さなかった。
「鯉屋の大旦那様と話をしたいんでセッティングして下さい。出席者は僕と累、大旦那様、紫音さん。それから鈴屋さんも」
「いいけど、それだけか」
「よりちゃんにも来て欲しいな。神威君は芋づる式に付いてくるからいいとして、できればあなたにも」
「何で俺が。断」
「だろうと思いました」
旦那が断る、と言い切る前に結が切り替えし、旦那は口角をひくつかせた。
「……一言多いんだよテメエ」
「よく言われます。あ、よりちゃんは僕が人質にした事にしていいから怒らないで神威君」
依都は関与させない前提だったのに、と神威が破魔矢に手を掛けているのを依都が腕を引いて宥めていた。
しかしその時、くんっと結も累に腕を引かれて振り返った。
「どうしたの?」
すると、急に累が無言で結を抱きしめた。
それはいつものようにふざけたじゃれ合いではなく、とても力強く、けれど累はどこか泣きそうな顔をしていた。
「俺は何があってもお前の味方だからな。俺が一緒にいるからな」
「どうしたの、急に。当り前じゃない」
「ずっと一緒だ。俺はお前と一緒にいるからな」
「うん。分かってるよ」
何となくその場の全員が言葉を失い、結だけが大袈裟なんだから、と微笑んでいた。
あほらし、と旦那が部屋を出るのにつられて神威と依都も部屋を出たが、それからしばらく双子が出てくる事は無かった。
「お香ですか?良い香りですね」
「旦那は意外とこういうの好きなんだよ」
「屋敷の内装もオシャレだよね。全部旦那さんの趣味?」
「ああ。屋敷を建てたのは旦那だ」
来た当初、鯉屋と内装が似ている事に結が怯えていたので大丈夫だろうかと神威は不安に思っていたが、あれも演技だったのかと目の前で楽しそうにしてる結を見てため息が出た。
「はしゃいんでんじゃねえよガキんちょ」
旦那は片手で持てる程度の小さな飾り台を結に差し出した。
そこには現世でありふれた形状で、誰もがよく知る拳銃が二丁置かれていた。結はうわあ、と目を輝かせてぱっと飛びついた。
「凄い!本当に銃だ!」
「見た目は同じだが、右が対人で左が対出目金だ」
「こんな短時間でよくできましたね。すごーい」
旦那は全て同じ形状をした金属の塊を六個ほど並べた。
依都が興味津々に手を出そうとしたけれど、触るな、と旦那は依都をつまんで神威に向けて放り投げた。
「分かってると思うが、使えるのは銃弾の数だけだ。鉢に配るのは現実的じゃねえな」
「大量に配る必要は無いですよ。リーダーだけに持たせて他は剣で追い詰めるとか、作戦次第です。それより対出目金の弾丸はどうやって作るんですか?」
「そいつは企業秘密だな。破魔屋の連中にも教えてないし、教えたところでできやしねえ。ただこれも有限だ」
「ふうん。じゃあ対出目金銃弾が無限に作れれば、跡取りは放流しなくても良いって事ですよね」
ね、と結は旦那の顔を覗き込んだ。
旦那は目を見開いて一瞬固まると、はははっと声を上げて笑いだした。
「そうか!狙いは最初からそっちか!」
「いえいえ。鉢を助けたいとは思ってますよ」
「ついでにだろ」
「旦那が食い付いてくれてよかったなとは思ってます。それで、どうですか?無限に作れる物ですか?」
「……無限にねぇ……」
旦那は口元に手をやると少しだけ考え込んだ。
どうでしょう、と問う結からふいっと視線を逸らし、指を擦った。作業で怪我をしたのか、旦那の指や手のひらにはぐるぐると包帯が巻かれている。
「僕ね、属人化をするの嫌いなんです。鯉屋にも跡取りにも、そしてあなたにも」
「……何が言いたい」
「それも含めてやるって事です」
結と旦那は毅然と顔を見合わせた。
神威と依都は二人の言っている意味が分からず、何の事、と首をかしげている。累は結に何か言いかけたけれど、結は言われる前に笑顔で黙らせた。
旦那はしばらく結を睨み続けたけれど、くくっと笑った。
「いいだろう。だがそれは現世の知恵を貸せ」
「もちろんです。ついでにもう一つお願いが」
「あ?何だよ」
一つ終わったらまた一つ。
結は綺麗な流れでさらに要求を突き付けた。本来ならここで報酬を確認するのが破魔屋の常だろうが、もう誰もそんな事は言い出さなかった。
「鯉屋の大旦那様と話をしたいんでセッティングして下さい。出席者は僕と累、大旦那様、紫音さん。それから鈴屋さんも」
「いいけど、それだけか」
「よりちゃんにも来て欲しいな。神威君は芋づる式に付いてくるからいいとして、できればあなたにも」
「何で俺が。断」
「だろうと思いました」
旦那が断る、と言い切る前に結が切り替えし、旦那は口角をひくつかせた。
「……一言多いんだよテメエ」
「よく言われます。あ、よりちゃんは僕が人質にした事にしていいから怒らないで神威君」
依都は関与させない前提だったのに、と神威が破魔矢に手を掛けているのを依都が腕を引いて宥めていた。
しかしその時、くんっと結も累に腕を引かれて振り返った。
「どうしたの?」
すると、急に累が無言で結を抱きしめた。
それはいつものようにふざけたじゃれ合いではなく、とても力強く、けれど累はどこか泣きそうな顔をしていた。
「俺は何があってもお前の味方だからな。俺が一緒にいるからな」
「どうしたの、急に。当り前じゃない」
「ずっと一緒だ。俺はお前と一緒にいるからな」
「うん。分かってるよ」
何となくその場の全員が言葉を失い、結だけが大袈裟なんだから、と微笑んでいた。
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