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第一部 誕嬢篇
「最後のわがまま」
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すこしの読み込みのあと、スマホの画面に表示されたサブタイトルは「最後のわがまま」。
クライマックスゆえだろう、オープニングをすっとばしてそれが表示され、すぐに聖騎士任命式典襲撃シーンがはじまった。
空間に開いた黒い穴から出現する帝国兵たちの、ボディにフィットしたヒーロースーツっぽい全身鎧が敵ながらかっこいい。
どうやらこれが【魔鎧】といって、装着者の力を強化する魔法の鎧らしい。設定がなんだか特撮っぽいのだけど、これ製作サイドに特撮好きが紛れ込んでるんじゃなかろうか。
「……は?」
などと勘繰る中、作中で明かされた衝撃的な事実に、私は思わず声を上げていた。
どうやらこの「魔鎧」は、エリシャの父親がダンケルハイト家の秘法を帝国に漏洩させたことで作られたものらしいのだ。そんな、ますます彼女の立場が悪くなるばかりじゃないか……。
あ! でもそれ、特撮なら絶対に同じ技術で変身して反撃する展開じゃない? 会場に偶然まぎれこんでいた、空気読めないけど勇敢な青年とかいないのかな!?
……けれど、残念ながらこれは特撮ではないので、今さらそんな新キャラが登場するはずもなく、悲劇は筋書き通り淡々と再生される。
そう、エリシャの命は、トゥルーエンドに向かうための生け贄として捧げられるのだ。
──そしてついに、帝国兵どもに取り囲まれたエリシャ。
彼女は凛々しくも誇り高く、彼らに従うことを拒絶する。激昂する帝国兵たち。そして場面は暗転し、柔らかいものが踏みにじられる惨たらしい音が響いて、赤い液体のエフェクトがいっぱいに散った。
『これが、私の最後のわがままよ。あなたは何があっても絶対、幸せになりなさい……』
すがりついて泣く、性格よし子な聖女マリカちゃんにそう言い遺し、画面の中のエリシャはこときれ、そのまま流れるようにエンディング曲につながっていく。
映し出されているのはどうやら、これまでのエリシャとマリカの想い出シーンのよう。
「……っ……、そんなの……」
私は、不覚にもボロボロに泣いてしまっていた。ぶっちゃけ、特撮以外のフィクションで涙を流したのは初めての経験だ。
これまでどんな難病のヒロインにも屈しなかった私の涙腺は、すっかり壊れてしまったのかも知れない。
そうやって泣き疲れ、いつの間にか眠りについていた私は翌朝──見たこともない豪奢な部屋の巨大なベッドの上で、就寝前に泣きながら感情移入したエリシャ・ダンケルハイト当人として目覚めてしまった、というわけだ。
──これから訪れるであろう、自分自身の人生の悲惨な結末部分だけを、知らされた状態で。
クライマックスゆえだろう、オープニングをすっとばしてそれが表示され、すぐに聖騎士任命式典襲撃シーンがはじまった。
空間に開いた黒い穴から出現する帝国兵たちの、ボディにフィットしたヒーロースーツっぽい全身鎧が敵ながらかっこいい。
どうやらこれが【魔鎧】といって、装着者の力を強化する魔法の鎧らしい。設定がなんだか特撮っぽいのだけど、これ製作サイドに特撮好きが紛れ込んでるんじゃなかろうか。
「……は?」
などと勘繰る中、作中で明かされた衝撃的な事実に、私は思わず声を上げていた。
どうやらこの「魔鎧」は、エリシャの父親がダンケルハイト家の秘法を帝国に漏洩させたことで作られたものらしいのだ。そんな、ますます彼女の立場が悪くなるばかりじゃないか……。
あ! でもそれ、特撮なら絶対に同じ技術で変身して反撃する展開じゃない? 会場に偶然まぎれこんでいた、空気読めないけど勇敢な青年とかいないのかな!?
……けれど、残念ながらこれは特撮ではないので、今さらそんな新キャラが登場するはずもなく、悲劇は筋書き通り淡々と再生される。
そう、エリシャの命は、トゥルーエンドに向かうための生け贄として捧げられるのだ。
──そしてついに、帝国兵どもに取り囲まれたエリシャ。
彼女は凛々しくも誇り高く、彼らに従うことを拒絶する。激昂する帝国兵たち。そして場面は暗転し、柔らかいものが踏みにじられる惨たらしい音が響いて、赤い液体のエフェクトがいっぱいに散った。
『これが、私の最後のわがままよ。あなたは何があっても絶対、幸せになりなさい……』
すがりついて泣く、性格よし子な聖女マリカちゃんにそう言い遺し、画面の中のエリシャはこときれ、そのまま流れるようにエンディング曲につながっていく。
映し出されているのはどうやら、これまでのエリシャとマリカの想い出シーンのよう。
「……っ……、そんなの……」
私は、不覚にもボロボロに泣いてしまっていた。ぶっちゃけ、特撮以外のフィクションで涙を流したのは初めての経験だ。
これまでどんな難病のヒロインにも屈しなかった私の涙腺は、すっかり壊れてしまったのかも知れない。
そうやって泣き疲れ、いつの間にか眠りについていた私は翌朝──見たこともない豪奢な部屋の巨大なベッドの上で、就寝前に泣きながら感情移入したエリシャ・ダンケルハイト当人として目覚めてしまった、というわけだ。
──これから訪れるであろう、自分自身の人生の悲惨な結末部分だけを、知らされた状態で。
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