怪しいバイト、行ってみた

濃霧

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番外編

ダメ◎※

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「ねえ、ベーってして」

「こうか?」

 透が目を輝かせてお願いすると、藍は少し首を傾げてから、素直に舌を出した。その色を見て、透は吹き出した。

「真っ青!」

「なぜだ? ああ、ブルーハワイ味だからか」

 場にそぐわないほど真面目な顔でかき氷を見つめるので、透はますます笑ってしまう。

 小学生のとき以来の花火大会なので、透はいつになく浮き足立っていた。わたあめや金魚すくい、りんご飴、焼き鳥、射的にフライドポテト。気づけば花火をそっちのけで屋台を楽しんでいる。

「透はいちご味だったな」

「うん」

 透が控えめに舌を覗かせると、藍の目がすっと細まった。

「どうですか?」

「……見えない」

「えー」

 さっきよりも大きめに口を開いて、舌をよく見えるように精いっぱい外に出す。

「どう?」

「んー」

 気づけば、藍の顔がものすごく近い。透は間抜けな顔を見られるのが恥ずかしくなって、慌てて舌を引っ込めた。

「あ、なんで」

「もう見たでしょ?」

「いや。見えたには見えたんだが、正直、ここでは色までよくわからない」

 だから、と藍が目尻を下げる。

「明るいところで、また見せて」

 含みのある声色の、その意味を理解できないほど鈍感ではない。
 透は赤面し、恋人の袖をきゅっと握った。


  ✻


 藍が開けた玄関のすき間から身を滑り込ませ、透はパタパタとリビングへ向かった。

「お、逃げたなー」

 からかい交じりの声が追ってくる。透もつられて笑いながら、ソファに飛び込んだ。ふかふかのクッションに顔を埋める。
 ここは自分の家より、居心地のいい場所になりつつあった。

 うつぶせで寝転がる透の上に、重みが乗る。無防備な首すじを甘噛みされ、透の身体はピクッと跳ねた。頬を染めて振り仰ぐなり、透の唇はすぐさま藍に奪われる。

「んっ……」

 啄むだけのキスに体の力が抜けていく。透はこの程度の軽いキスであれば、気持ちよさに身を委ねられる程度に慣れてきていた。

「……!? んんっ……」

 すっかり油断して緩んだ唇を割って、分厚い舌が透の舌を捕まえた。絡んだシロップを味わうように、容赦なく吸いついてくる。

「んっ、んぅ……ぷぁっ」

「甘いな」

 藍の舌に腔内をくまなく蹂躙され、透は息を荒くした。吸われすぎた舌がジンジンする。藍の腕に縋って身を起こし、透は文句を言った。

「色が変わったか見てほしかったのに!」

「ああ、そうだったな。じゃあもう1回」

「もう見せません」

 見せつけるようにきつく真一文字に結んだ唇に、藍の親指が触れる。縁までゆっくりとなぞる仕草が耐えきれないほど甘くて、透は呻いた。

 目で「もう駄目」と訴えかけても、藍の指は止まらない。透が観念して唇を開くまで、ねだるような手つきは続くのだろう。

 透は苦し紛れにかぷっと親指を口に含んだ。これなら指は動かせないし、舌も見せなくていい。我ながら名案だと透は思った。

「……透」

「ん?」

「それは駄目だ」

 赤子のような無垢な表情で親指を含む透を見て、藍は眉間にしわを作った。駄目なのかと思い口を離すと、ちゅぱっと可愛らしい音が鳴った。

「イヤでしたか?」

「ううん。そんな可愛い顔をしないでくれ。透のすることなら、何だって嬉しいよ」

「でも駄目って」

 眉を下げて見上げると、腰に藍の腕が回り、ぐっと引き寄せられた。チュッと音を立ててまたキスをされる。

「そういうことをされると、男は我慢できなくなるから駄目だ」

「わかりました。もうしない」

「いや、たまにならいい。……本音を言うならたまにはしてほしい。可愛かったから」

 そう言いつつ、頬や額や目尻に戯れに口づけを落としてくる。その雰囲気で、なんとなくこの先の展開を察した透は、そうなる前に口を挟んだ。

「シャワー浴びなきゃ」

「気にしないが、気になるか?」

「うん」

「わかった。一緒に入るか?」

「入らない! ……まだ、駄目」

「ん。な」

 やわらかく笑う顔に見惚れてから、透は我に返って風呂場へ駆け込んだ。


  ✻


「あっ、はぁ、ぁんっ、ゃあっ」

 シャワーで身綺麗にした透は、文字通り頭の先から足の先まで、藍の手や舌に可愛がられた。透が感じてしまう場所は、もう全て藍に暴かれたといっていいだろう。もちろん、体の中を除いては。

 シャワーを浴びなくても気にしないと藍は言っていたけれど、あれは本当だろうか。こんなに隅々まで舐めたり吸ったりするのに。

 藍の大きな手が頬を包む。透は顔を擦り寄せ、ほうっと息をついた。

「可愛い……気持ちいい?」

「きもちい」

 透は藍の首に回した腕に力をこめた。あっという間に距離が縮まり、鼻の先まで近づいた首筋をちろりと舐める。

「透ッ?」

 焦ったような声が可笑しくて、透は首から肩にかけてを何度も軽く齧ったり、舐めたりした。

 藍を真似て吸いついてみたりもしたが、頑張っても跡がつかないので諦めた。

「そう私の肌を色々するのは、その、汚くないか?」

 少し申し訳なさそうな声が問いかけてくる。

「ぜんぜん」

 大好きな人の体に触れられるのだから、そんなことは全く気にならない。

 迷わずに答えてから、藍もこういう気持ちだったのかと透は納得した。藍に愛されているのを感じて、胸がぽっと温かくなった。

「どうした? また可愛い顔をしている」

「藍さん、最近そればっかり」

「許してくれ。可愛くて仕方ないんだ」

 愛おしげに肌を撫でる手に、敏感になった体が反応する。震える中心に伸ばされた手を掴み、透は上目遣いでねだった。

「今日は藍さんも一緒がいい」

 藍は目を大きく見開いた。

「はあ……どこで覚えてきたんだ」

「俺ばっかり気持ちよくなるのもあれだなって思って、色々調べて……」 

「違う。そのことじゃない」

「へ?」

「ううん、無自覚なんだろう。ずっとそのままでいてくれ」

 藍はよくわからないことを言いながら未だ履いたままだった下着を脱いだ。比べものにならないほど立派なそれに、透は釘づけになる。すると、また少し大きくなった。

「そんな可愛い顔で見ないでくれ」

「もう、また可愛いって」

「ごめんな。ほら、一緒に」

 そう言われて、ぐんと期待が高まった。形のいい手にまとめて握られると、藍のそれに触れている感覚に、意識が集中する。ものすごく硬く、それでいて熱かった。

 最初は確かめるように緩やかに、透が快感に声を漏らすと、やがて速度をあげて擦り上げられた。

「あっ、はぁ、んあ、ああ、ああああっ」

「くっ……」

 そうしてほぼ同時に果てた。2人の白濁が混ざり合う刺激的な光景を、透は息を乱しながらまじまじと見つめた。初めて一緒に気持ちよくなることができた証だ。


 透が顔をほころばせながら掬い取った白濁を、藍は照れくささを隠したような顔をして、ティッシュで拭った。



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