CHANGELING! ―勇者を取り巻く人々の事情―

かとりあらた

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あなたのための私のこれから

第32話 姉の事情(19)

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「あの……イオニスさん?」
 わーお。困惑気味に後ろを振り向いた俺は、うっかり変な声を出しそうなった。
 髪の乱れたイオニス。看病して以来の姿で、あの時は大層しょぼくれていたが、今は大変生気に満ち溢れている。ギッラギラだあ……。
「レジーナ殿……」
 ちょっと待て。俺がそう言うより早く――ズン、と腰を穿たれて一瞬で昇り詰めてしまった。
「んあァ~~――……ッ♥」
 絶頂に戦慄く背筋を舐められ、何度も口付けられる。
「レジーナ殿……私の、ただひとりの人……!」
 感極まったような声も聞こえるが、それどころではない。
「ン、くう、アア~~ッ♥」
 中を甘く引っかきながら抜けていく感覚に俺は悶える。
「ッひうウゥン♥」
 さらに抜けるぎりぎりまでいくと、また深く突いてきた。
 それを繰り返され、俺は何度もイく。
「らめぇ……も、ひゃヒィッ♥」
「ああ、レジーナ殿……愛しています……!」
 息も絶え絶えの俺の腰をがっちり掴み、なおも突き上げてくるイオニス。
 その後もさらに体位を変えながら……長い夜は過ぎていった。

「――ハッ!?」
 顔面いっぱいに広がる柔らかな感触。
「あれ……」
 顔を上げて、周囲を見回す。
 来た時と同じ、高そうな調度品が揃えられた部屋で、大きなベッドにひとりきり。
「イオニスさん……?」
 返事がなければ気配もない。
「イオニスさん、どこですか?」
 身体を起こして――そこで誰かの足音に気が付いた。
 俺はぴたりと止まって、耳を澄ませる。
 やがて足音はこの部屋の前で止まり、そっと扉が開かれた。
「起きてらっしゃいましたか。おはようございます」
 イオニスが現れた。柔らかな笑顔を浮かべ、部屋に入ってくる。
「レジーナ殿?」
「……おはようございます」
 無性に文句を言ってやりたい気分だが、イオニスの手に水差しと食事が見えたから堪えた。
「お身体の具合はいかがですか?」
 イオニスは手に持っている物を置き、カーテンを開ける。
 眩しい。今は昼前といったところか。
「見ての通り、おかげさまで五体満足ですわ」
 とてもだるい。特に腰。どう考えてもヤリすぎだ。
「治しますか?」
 察したらしいイオニスが訊いてくるが。
「お気持ちだけ受け取っておきます。主のお力は、むやみやたらにお借りしてよいものではございませんし、それに……すぐ消えてしまうのも、なんだかもったいないですから。……?」
 イオニスの顔からにこやかさが消えたと思ったら、こちらへすーっと寄ってきた。え、何怖い。
 身構えた俺だったが、気付けばイオニスが横に座っていて、しかもむちゅうとされていた。
「んむ!?」
 こんな明るい時間には相応しくない、ぬるぬるの口付けに面食らう。
「ぷは、ちょっと……!?」
 ア――――ッ!

 なんとか本番は回避し、俺とイオニスは向かい合って遅い朝食を摂っていた。
 視線を感じるが、俺は目を伏せて黙々と食べ進める。
 今、俺が着ている物は起きた時と変わらずローブ一枚。少し開いた胸元に赤い痕が点々と見える。たぶんローブの下にもあるだろう。
 あと最中はかろうじて引っかかっていたはずの寝間着が見当たらないことも気になれば、今しがた気付いた、なんかきっちり折られて置いてあるパンツなんて気になるどころの話ではない。
 ローブと一緒にイオニスが拾ってくれたのだろう。そしてローブは着せて、パンツは丁寧に折って……。
 考えれば考えるほど恥ずかしくなってきた。まったく、このイオニスめ! 結局好き放題しやがって、体力の差ってもんを考えろ! 聖騎士で長身で美形で巨根でさらに絶倫とか、どんだけ盛れば気が済むんだ! どうせまだなんか隠してんだろ、吐け!!
「これといって思いつくものは……すみません」
 ……あれ?
 俺は顔を上げる。
「…………私、口に出していましたか?」
「はい」
 あわわわわわわわわ。
 慌てる俺を見ながら、イオニスが言う。
「大丈夫ですよ。普段は、その……前後不覚になられた時くらいですから」
 つまりアンアン盛り上がっている時か。
「どうぞ」
「……ありがとうございます」
 差し出された水を受け取り、渇いた喉を潤す。
 沈黙に耐えられなくなって、先に口を開いたのは俺だった。
「何かございませんの? ……文句とか」
「構いません。私の気持ちは変わりません」
 いつぞやと変わらぬ答えに、俺は再びイオニスと視線を合わせる。
「言葉遣いが違うだけで、あなたの麗しさは何も損なわれていないのですから。どうぞ、あなたのお心に適う在り方でお過ごしください」
 顔も声も朗らかに、イオニスが笑う。
 窓から差し込む白い陽光に照らされるその笑顔は、とても――。
「……これまで通りで」
 そうぶっきらぼうに返すのがやっとなくらい、とても眩しかった。
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