器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅

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朽ちた遺跡

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ギルド受付のうさ耳お姉さんに教会からの依頼を受けると伝えた翌日、食料や雑貨などを補充する為、王都の商店を回り、購入したそばからアイテムBOXに収納して行く。

自分のアイテムBOXは珍しく、アイテムBOXに収納した物が収納した時の状態を保持される為、屋台で焼き立ての串焼きなんかもアイテムBOXに入れておけば腐る事も冷める事も無くいつでも熱々が食べられるという事で、野営の際に自炊をしなくてもいいようにとの事で、王都の飲食店を多くまわる羽目になった。

そして、王都で食料や雑貨を補充した翌朝、高級な宿を一旦チェックアウトした後、ギルドに行って依頼書にサインをし目的地である大森林の中にある遺跡群を目指して出発する。

「それにしても、遺跡群周辺に竜残血花があるかもって何で知ってるんだろう?」
今更ながらそんな疑問を口にすると、ルイーズさんがギルドで仕入れた情報だと言って理由を教えてくれた。

どうやら相当昔、遺跡群がある所を根城にしていた、はぐれと思われる竜種と冒険者が戦って討伐をしたらしい。
竜種との戦いはかなりの激戦だったらしく、多くの冒険者が命を落とし、遺跡群もかなりが破壊され見るも無残な状態だったらしいけど、その戦いのさなか、竜種の血が遺跡群周辺に流れたから竜残血花が生えている可能性があるとの事だった。

遺跡群って何かイメージ的に魔物の根城とかになってて荒れ果ててる気がするんだけど、そんな所に竜残血花なんて花が生えているのかな…。
なんかゴブリンとかオークに食べられてそうな気がするんだけど。

遺跡までの行程は特に問題も無く、探知でルート上周辺に居る魔物や魔獣を事前に見つけ狩りながら進むと王都を出発して6日目の昼に目的地である遺跡群に到着した。

「これは…、古い遺跡とは聞いてたけど、若干原型を留めてる建造物が少しあるだけでほぼ瓦礫の山だ…」
「そんなもんだろ、なんせ昔ここで竜種と冒険者の戦いがあったっ場所だって言われてるんだから反対に建物とかが無傷の方がおかしいだろ」
ルイーズさんがそう言いながら木や蔦に覆われた瓦礫の山を見渡している。

「それにしてもこの大森林の中に遺跡って昔はこの周辺は森じゃなかったって事?」
そんな疑問をルイーズさんにぶつけると、そんな事は知らんと言う風な顔をし周辺を散策しに行ってしまった。

「カトレアの時代にもこの遺跡群は知られてた?」
「ええ、そこそこ有名な場所だったわよ。 少し実力の付いた冒険者がこの遺跡を目指して何かしらの遺物が無いか血眼になって探してたって聞いた事あるから」

「って事は、既に調査しつくされて目ぼしい物は何もない的な?」
「無いでしょうね…。 私が生まれる前から冒険者が出入りしていたぐらいの遺跡だから」

それにしてもここは何の遺跡群なんだろう?
広さ的にはキャールの街より広く王都並みに広い気がするんだけど、森の中にこれだけ広大な遺跡があるって凄く不自然なんだよね…。

「カトレア、因みにこの遺跡群は元々何があった場所か知ってたりする?」
「知ってるわよ、伝承程度だけど」

「知ってるんだ…。 っで? ここはどんな場所だったの?」
「千年以上前にあった神殿があった街だったらしいわよ」

「神殿? この世界を創造した女神ジャンダークの?」
「いえ、ここにあった神殿は女神ジャンダークではなく邪神ドラゾレーラって教えられたわ、そして女神ジャンダークとの戦いに敗れ邪神とその信奉者達は未踏の山脈の奥地に逃れたらしいわ。 そして邪神ドラゾレーラが追手を足止めする為に大地を魔力で汚染してこの大森林が産まれたって」

邪神ドラゾレーラ…。
初めて聞くけど結構有名なのかとカトレアに聞くもカトレアが生きていた時代にはすでに忘れ去られた存在のようで教会でも一部の人が知っている程度で、ドラゾレーラに関する書物類に至っては聞いた事が無く、有ったとしても禁書として保管されているのではないかとの事だった。

「なんかこの遺跡を見てると、祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。 って感じだね…」
「昔、教会に居た時、人づてに召喚者から聞いた何とか物語ね。 確か…」

「祇園精舎の鐘の音は、諸行無常の響きに聞こえる。 沙羅双樹の花の色は、盛んな者も必ず衰えるという物事の道理を示していて、おごり高ぶっている人の栄華も長く続くものではなく、覚めやすいと言われている春の夜の夢のようなもの、勢いが盛んな者も結局は滅亡してしまう、まったく風の前の塵と同じ。 って感じの意味だよ。 平家物語の冒頭の部分」
「祇園精舎や沙羅双樹と言う物はよく分からないけど、要は栄華を誇っていてもそれに胡坐をかいていれば衰退の道を辿るってところね。 昔いた貴族と同じね…」

「カトレアが生きてた時代の貴族がどんなんだったかは知らないけど、まあ代々の血筋を誇るだけって事は何となくわかる気がする」

そんな話をしつつ野営の為の拠点づくりをしていると、遺跡を軽く見て周っていたルイーズさんとリーズが肩を落として戻り価値のありそうな物は無かったと残念そうな顔で見た範囲の状況を教えてくれた。

うん、カトレアの時代…、約400年以上前から調査や探索され尽くした遺跡なんだし反対に価値があるものがある方が驚きなんだけどね。
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