器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅

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異世界の歴史①

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翌朝、宿と言うか掘っ立て小屋? を出て、露店で買った串焼きとパンを食べながら竜族の里を歩いて周っていると、質素ながらも重厚な造りの教会を見つけたので中に足を踏み入れてみる。

自分としては教会に良いイメージ無いから回れ右して立ち去りたかったんだけど自分以外の全員が女神ドラゾレーラを祭る教会がどうゆう物か見てみたいという事で押し切られた。

中に入るとそこは、長椅子が多数置かれ正面の女神の像が…、ってなんか違う!!
入ってすぐ、床が一段高くなり5メートル程の板の間があり、更に一段高くなったその先は畳の部屋となっている。
正面には女神像があるものの上部には瓔珞ようらくがあり、どう見ても寺院のようにしか見えない。
いや、寺院なら板の間だろうけど、畳敷きなので微妙に違和感がある。
女神像が祀られている祭壇のしたに木魚とか置いてあるし、ここは何なんだ?

カトレア達は不思議な造りを見てこれが女神ドラゾレーラの神殿なのかと感心してるけど、完全に何かが間違っている!
とりあえず女神ドラゾレーラの像のある所まで行こうと、靴を脱ぎ板の間に足を踏み入れる。
「カツヒコ? あなた何で靴を脱ぐの?」
「いや、普通にここは靴を脱いで上がる場所だから。 靴箱が用意されてるし、靴を脱いで入るのが常識でしょ…」

「常識? カツヒコは女神ドラゾレーラを祭る教会の作法を知っていたのか?」
「いや、知らない! ただこの造りはどう考えても靴を脱いで上がるのが作法なのは確実。 日本…、転生する前の世界での常識といった感じかな。 お寺と言う宗教施設と似た感じ」

自分の転生前に住んでいた世界に似た造りがあったと聞き、何となく納得したのか、一同が靴を脱ぎ、板の間に足を踏み入れる。

「これはこれは、バラン殿が里にお連れした客人ですな。 申し遅れました、私はこの教会を預かる僧でウンカイと申します。 そちらのお方は召喚者、いや転生者でございますな」
「それを聞いてどうされるんですか?」

「いやいや、どうするも何も、ここが靴を脱いで上がると知っているのは異世界にあるニホンと言う国から来た人と伝え聞いておりましたので只の興味本位です」
「そうですか、まあ既にバランさんに転生者であることは知られてますし、今更隠してもしょうがないか…」

「ではカツヒコ殿、この女神ドラゾレーラを祭る教会を見てどう思われましたか?」
「一言で言って変!! なんかとりあえず日本の文化をごっちゃ混ぜにした感じ?」

思った事を口にした瞬間、失敗したと思ったが、ウンカイと名乗った僧は笑いながら頷いている。
どうやら話を聞いたら、この地に逃げて来た女神ドラゾレーラを信仰する人々の中に転生者が居たらしいけど日本人では無く日本好きな外国人さんだったらしくその人が設計したらしい。
そしてその事が代々伝わる書物に書かれており、日本人の転生者が来たら意見を聞いて寺のように改築するようにと記されているとの事だ。

ここを設計した人はなんて迷惑な人なんだ…。
微妙な造りの寺院もどきを建設しておいて、日本人の転生者が来たら手直しさせるなんて!!

「それはそうと、この里にある教会以外もこんな造りなんですか?」
「はい、教会の総本山はパルン王国にありますが、そこは大聖堂を始め各部屋も総畳敷きとなっております」

「そ、そうですか…、因みに建物の外観は普通に石造りの建物?」
「左様です。 書物によれば当初木造で建設する予定だったらしいですが上手くいかなかったと」

うん、確かに、日本建築と言うか寺院とか普通に見ただけじゃ作れないし…、確か専門の建築職人さんが居て釘を一本も使わず建てるとか聞いた事がある。
そして自分にそんな技術は無いので改築の意見も出せない!!
諦めて貰う…。

ウンカイさんと話をしているうちにカトレア達は普通に中に入り、像を眺めたり、珍し気に木魚を叩いたりしている。
リーズさん、木魚を連打するのやめなさい!!

「因みにウンカイさん、さっき代々伝わる書物があるって事は、1500年程前にあった竜族の多くが戦った敵とかの記録も有ったりする?」
「ございます。 と言うより拙僧がお話させて頂きます」

そう言うと、別室に案内され、そこでお茶を出され話を聞く事になったが、ここが茶室を模したものだと言うのは分るんだが、抹茶を点てたと思ったらそれをカップに移しそこに再度お湯を入れるって…。
抹茶じゃなくて普通に茶葉にお湯入れればいいじゃんか!!
微妙な日本文化が変な方向にねじ曲がり伝わっている…。

カトレア達は気にならないようで珍し気に眺め、出されたお茶を飲んでるけど、凄く薄い抹茶って感じであまり美味しくないからね。

薄い抹茶のような物を飲みながらウンカイさんの言葉に耳を傾ける。
1500年程前の事だけでなく、この地に逃れる前からの出来事は書物にも書かれているが教会の僧になる為には口伝出来るよう覚えるのだそうだ。

そして多くの竜族が戦った相手、それは女神ジャンダークを信仰する人間だった。
そもそも女神ジャンダークはこの世界の女神では無く、2000年程前に滅びかけた異世界から自分の信者を連れてこの世界にやって来たらしい。
当初ドラゾレーラはこの世界に逃れて来たジャンダークとその信者を憐み、この世界で生きる事を許し大地を与えたがジャンダークが治めていた異世界の文明が進んでいた為に、徐々に勢力が広がり、そして遂にはこの世界の住人達と争へと発展した。
争いが起きた事を危惧したドラゾレーラはジャンダークに争いを止めるよう伝えるも魔法も使えず武器もロクに無いこの世界なら我が物と出来るとジャンダークは自身の信者へ元から居た人間の土地を奪い、その地に住んでいる者も自身を信仰するよう改宗させるよう命じた。

それにより各地で争いが勃発しドラゾレーラを信仰する人々の土地を奪い、迫害が発生した。
それでも争いを望まないドラゾレーラはジャンダークを説得するも聞く耳を持たないどころか日々酷くなる争いに対し、遂にドラゾレーラも信仰する者達に加護と魔力を与えこの世界から追い出すとまではいかなくともこれ以上の暴挙を止めるよう命じた事で、この世界を二分する大規模な争いが始まったとの事だった。

それにしても、この世界、というか女神ドラゾレーラが治めていた時のこの世界は加護も魔法も無かったとは…。
てか異世界から来て侵略するって、ジャンダークって完全に魔王的な立ち位置じゃん!!
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