居場所を無くした孤独女子は、エリート上司に甘く囲われる〜二人で美味しい同棲生活〜《R-18》

清澄 セイ

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第八章

ポークチャップと、懐かしい思い出②

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「そうなんです!来週から来てくださいって!私、採用してもらえたんです!」

玄関で待ち構えるようにしていた私に、帰宅した大澤係長は目を丸くする。

ことの次第を伝えると、すぐに「よかった」と言って笑ってくれて、思わず泣きそうになった。

「今日はポークチャップです!私昔から、お母さんの作るこのメニューが大好きで。今日のお弁当にも詰めていったんですけど、夜も食べたくなったから作ってしまいました」

「いい匂いがする」

私にとっては、勝負時に豚カツやカツ丼を食べるのと一緒。

小さい頃からお母さんのポークチャップが大好きで、大切な日の前日にはいつも作ってもらってた。

すりおろした玉ねぎに一晩漬け込んだ豚ロースは、肉厚なのに柔らかい。

ケチャップの酸味とウスターソースのコクがしっかり絡んで、隠し味のにんにくのお陰で白ごはんとの相性も抜群だ。

簡単だけど、大好きなメニュー。少し、子供っぽいかもしれないけど。

「凄くうまい。俺これ好きだわ」

何度もそう言って、大澤係長は炊き立てのご飯をお代わりした。

自分の好きなものを相手にも喜んでもらえるのは、嬉しい。

「大澤係長のおかげです、本当にありがとうございました」

「俺はなにもしてないよ。山田さんの努力の成果だから」

「そんなことありません。面接の練習に付き合っていただけて、とても心強かったです」

「役に立てたならよかった」

数日前に面接を受けた会社から今日、採用の連絡をもらった。

主にお菓子のパッケージ印刷を手がけてる、印刷会社の受付兼事務。前の会社よりもずっと小規模でお給料も少なくなるけど、面接をしてくれた方も穏やかだったし、会社の雰囲気もよさそうだった。

なにより、最後まできちんと面接を受けられたことが嬉しくて。

それに加えて、採用の連絡。

大澤係長に一番に伝えたくて、玄関で待ち伏せなんてしてしまったけど。嫌な顔一つしないで、まるで自分のことのように喜んでくれた。

きっと係長がいなかったら、私は勇気を出せなかった。

面接前に頭に浮かんだのは、以前のような嫌な記憶ではなく、私を見て優しく笑う大澤係長の顔。

改めて私は、この人のことが好きなんだと確信した。
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