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第十一章
手抜きチャーハンと、愛しい君へ③
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来未はいつもなんでもおいしそうに食べる。早食いの傾向にある俺と比べて、ゆっくりと味わうように。
食べるのが遅いことが悩みなんて本人は言っていたけど、俺としてはハムスターやウサギなんかの小動物的愛らしさが堪らなくて、いつまででも見ていられる。
「凄くおいしいです」
一口食べてそう言った後は、無言。脇目も振らずに黙々と食べ続け、あっという間に俺よりも早く完食した。
まさに息を吐く暇もないといった風で、喉に詰まっているのではないかと心配になるほど。
「ふぅーっ…」
氷の入ったグラスの水をゴクゴクと一気に飲み干すと、深い溜息を吐く。
いつもと様子の違う来未に呆気に取られて、俺の皿のチャーハンは半分も減っていなかった。
「おいしかったです。ご馳走さまでした」
丁寧に両手を合わせた後、正面から俺をジッと見つめて。
「新太さんのおかげで、元気が出たよ。ありがとう」
ふんわり、華が綻ぶように微笑んだ。
「正直、どう表せばいいのか分かりません」
片付けを終えた後、二人並んでソファに座った。来未は胸にギュッとクッションを抱いている。
帰ってきてからずっと今日のことに触れようとしない来未を見て、俺もなにも言わなかった。彼女なりに、色々思うところがあるんだろうと。
来未は、以前もそうだった。
自身の中で整理がつけば、必ず自分から話してくれる。
俺はただ彼女がいつでも話せるように、両手を広げて待つだけだ。
「三ノ宮さんのことは、嫌いでした。だけど不幸になればいいなんて思っていなかったから。あんな場面を見て、色んな感情がごちゃごちゃになりました」
「うん」
「本当はお互い、関わらないままの方がよかったのに」
悲しげな顔を浮かべる彼女の肩に手を回し、そっと抱き寄せた。
食べるのが遅いことが悩みなんて本人は言っていたけど、俺としてはハムスターやウサギなんかの小動物的愛らしさが堪らなくて、いつまででも見ていられる。
「凄くおいしいです」
一口食べてそう言った後は、無言。脇目も振らずに黙々と食べ続け、あっという間に俺よりも早く完食した。
まさに息を吐く暇もないといった風で、喉に詰まっているのではないかと心配になるほど。
「ふぅーっ…」
氷の入ったグラスの水をゴクゴクと一気に飲み干すと、深い溜息を吐く。
いつもと様子の違う来未に呆気に取られて、俺の皿のチャーハンは半分も減っていなかった。
「おいしかったです。ご馳走さまでした」
丁寧に両手を合わせた後、正面から俺をジッと見つめて。
「新太さんのおかげで、元気が出たよ。ありがとう」
ふんわり、華が綻ぶように微笑んだ。
「正直、どう表せばいいのか分かりません」
片付けを終えた後、二人並んでソファに座った。来未は胸にギュッとクッションを抱いている。
帰ってきてからずっと今日のことに触れようとしない来未を見て、俺もなにも言わなかった。彼女なりに、色々思うところがあるんだろうと。
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俺はただ彼女がいつでも話せるように、両手を広げて待つだけだ。
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