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第十三章
思い出のちらし寿司と、未来の夢⑮
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「ふう、疲れた…」
夕方、私達はタクシーでマンションへと帰った。流石に、二人ともヘトヘト。明日から仕事なのが辛いけど、すぐ土曜が来るからまだマシだと思うことにする。
「すぐお弁当温めますね」
「俺やろうか?」
「大丈夫」
さっき、駅のコンビニでお弁当を二つ買った。それを電子レンジにかけながら、ケトルでお湯を沸かす。
荷物の整理は後にして、取り敢えず食べよう。
「いただきます」
二人向かい合って、手を合わせた。
新太さんは唐揚げ弁当、私はバラ寿司。
「あ…全然違う」
新太さんのお義母さんの作ったちらし寿司の方が、私の口にはずっと合っている気がした。
洗濯物は、ホテルのコインランドリーで済ましてある。それをクローゼットに仕舞ったり、明日持っていくお土産の整理をしたり。
その後シャワーを浴びたら、途端に睡魔が襲ってきて。少し早い時間だったけど、新太さんと二人で明かりを消してベッドに入った。
「やっぱり、家が落ち着くな」
「私もそう思います」
新太さんの腕枕は、凄く安心する。出会ったばっかりの頃はあんなに緊張してたのにと思うと、なんだか不思議だ。
「楽しみだな、これから色々決めてくの」
しみじみとそう言ってくれる新太さんの言葉は、素直に嬉しい。
だけどひとつだけ、心に引っかかることがあった。
「ねぇ、新太さん」
「ん?」
「結婚式、身内だけの小さな式にするつもりだって言ってたでしょ?それって私に親族がいないせいで、もしかして気を遣ってくれてる?」
「…来未」
「そうなんだとしたら、申し訳なくて」
新太さんは実家に挨拶に行く前、私の方に両親がいないことを気にしていた私に言ってくれた。それを負い目に感じる必要など全くないと。
理屈ではちゃんと理解していても、ふとした瞬間に気になってしまう。
父の両親も母の両親も、離婚したり亡くなってしまったりで、今も連絡を取ってる人は誰もいない。だから、身内だけの結婚式でさえ私には呼べる人がいない。
新太さんはきっと式自体、二人で挙げればいいとすら思っているようで。
だけど、私達の結婚をあんなに祝福してくれた新太さんのご家族のことを思うと、簡単には決められなかった。
夕方、私達はタクシーでマンションへと帰った。流石に、二人ともヘトヘト。明日から仕事なのが辛いけど、すぐ土曜が来るからまだマシだと思うことにする。
「すぐお弁当温めますね」
「俺やろうか?」
「大丈夫」
さっき、駅のコンビニでお弁当を二つ買った。それを電子レンジにかけながら、ケトルでお湯を沸かす。
荷物の整理は後にして、取り敢えず食べよう。
「いただきます」
二人向かい合って、手を合わせた。
新太さんは唐揚げ弁当、私はバラ寿司。
「あ…全然違う」
新太さんのお義母さんの作ったちらし寿司の方が、私の口にはずっと合っている気がした。
洗濯物は、ホテルのコインランドリーで済ましてある。それをクローゼットに仕舞ったり、明日持っていくお土産の整理をしたり。
その後シャワーを浴びたら、途端に睡魔が襲ってきて。少し早い時間だったけど、新太さんと二人で明かりを消してベッドに入った。
「やっぱり、家が落ち着くな」
「私もそう思います」
新太さんの腕枕は、凄く安心する。出会ったばっかりの頃はあんなに緊張してたのにと思うと、なんだか不思議だ。
「楽しみだな、これから色々決めてくの」
しみじみとそう言ってくれる新太さんの言葉は、素直に嬉しい。
だけどひとつだけ、心に引っかかることがあった。
「ねぇ、新太さん」
「ん?」
「結婚式、身内だけの小さな式にするつもりだって言ってたでしょ?それって私に親族がいないせいで、もしかして気を遣ってくれてる?」
「…来未」
「そうなんだとしたら、申し訳なくて」
新太さんは実家に挨拶に行く前、私の方に両親がいないことを気にしていた私に言ってくれた。それを負い目に感じる必要など全くないと。
理屈ではちゃんと理解していても、ふとした瞬間に気になってしまう。
父の両親も母の両親も、離婚したり亡くなってしまったりで、今も連絡を取ってる人は誰もいない。だから、身内だけの結婚式でさえ私には呼べる人がいない。
新太さんはきっと式自体、二人で挙げればいいとすら思っているようで。
だけど、私達の結婚をあんなに祝福してくれた新太さんのご家族のことを思うと、簡単には決められなかった。
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