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第五章「運命の双子」
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「ルシフォードとケイティベルを見ていれば、どれだけ貴女のことを慕っているのかよく分かります」
「でしたら、嬉しいのですけれど」
「だって、自分達の為に本気で泣いたり笑ったりしてくれる存在が、愛おしくないはずありませんから」
彼の言葉は、リリアンナの心に素直に沁み込んでいく。間違いなく、弟妹を愛している。二人の為なら何を失おうとも惜しくはないが、それは自身の命を粗末に扱うことと同義ではない。
「ですがたまには、貴女自身のことをお考えになってもいいのではないでしょうか」
「私自身のこと……、ですか?」
「なんとなくですが、リリアンナ嬢はそれを罪のように感じている気がして」
見た目とは裏腹にほんわかとした優しい男性というイメージだったが、エドモンドは案外聡い人物なのだと彼女は思う。初めて受けた指摘に戸惑いながらも、彼の言う通りだと認めざるを得ない。
――なぜ一番に女なんて産んでしまったのかしら!お前のせいで私は、いつも旦那様から辛く当たられる!
母ベルシアから受けた言葉は、まるで呪いのようにリリアンナを縛り付けていた。当時の母の立場を慮れば、それも仕方なかったのだと理解はしている。それでもやはり、彼女の幼心は酷く傷付いていたのだ。
「僕はこの国の人間ではありませんし、貴女方との付き合いもまだ浅い。事情を知らない人間だからこそ、吐露
出来ることもあるのでは?」
エドモンドは、リリアンナを前にするといつも新鮮な気分だった。初対面とはがらりと印象が変わり、話すたびに新しい発見がある。その綺麗なロイヤルブルーの瞳に何がどんな風に映っているのか、もっと知りたいと思ってしまう。
自分の婚約者となるべき人は、彼女ではなくケイティベルだというのに。
「私は……」
これまで、自身の幸せなどあまり考えてこなかった。そんな余裕もなく、勇気もなく、叶えられるはずがないとただ怖がって目を背けていただけ。期待しない方が傷も浅くて済むからと、諦めた振りをした。
「ルシフォードとケイティベルと一緒に、幸せに生きていきたい……。誰かを死なせてしまうことも、自分がしんでしまうことも、どちらも嫌です……っ」
「リリアンナ嬢……」
「本当は、とても怖いのです。こんな私に大切な二人が守れるのか、もしも失敗してしまったらどうしようと、最悪の未来ばかり頭に浮かんで」
ルシフォードとケイティベルには絶対にこんな姿は見られたくないと、リリアンナは怯えている。ずっと酷い態度を取ってきた自分を受け入れてくれた、優しくて純粋な弟妹。もう二度と、悲しませるような真似はしたくない。
会ったばかりの彼に、なぜ本心を打ち明けているのだろう。リリアンナはそう思いながらも、先ほどの言葉を嬉しいと感じていた。可愛げのない悪役令嬢に寄り添ってくれた男性は、エドモンドが始めてだったから。
それも、今までの彼女では素直に受け取ることは出来なかっただろう。ルシフォードとケイティベルがいなければ、リリアンナは永遠に殻に閉じ籠ったまま。
「本当に……、心から愛しているのです」
美しいロイヤルブルーの瞳には、うっすらと涙さえ浮かんでいるように見える。常に冷静で気丈に振る舞う彼女の意外な表情を目にしたエドモンドは、ほんの一瞬も視線を逸らせなかった。
こんなにも家族を大切に想うリリアンナの、一体どこが悪女というのだろう。誰にも弱味を見せず、ずっと一人で戦ってきた彼女は芯の強い女性だ。そう思うと同時に、こうしてほんの少しでも本音を吐露してくれたことが、想像していたよりも遥かに嬉しい。
リリアンナ・エトワナという令嬢を知れば知るほどに膨れ上がっていく自身の感情を、エドモンド自身もコントロールすることが出来なくなりそうで、どこか怖かった。
「でしたら、嬉しいのですけれど」
「だって、自分達の為に本気で泣いたり笑ったりしてくれる存在が、愛おしくないはずありませんから」
彼の言葉は、リリアンナの心に素直に沁み込んでいく。間違いなく、弟妹を愛している。二人の為なら何を失おうとも惜しくはないが、それは自身の命を粗末に扱うことと同義ではない。
「ですがたまには、貴女自身のことをお考えになってもいいのではないでしょうか」
「私自身のこと……、ですか?」
「なんとなくですが、リリアンナ嬢はそれを罪のように感じている気がして」
見た目とは裏腹にほんわかとした優しい男性というイメージだったが、エドモンドは案外聡い人物なのだと彼女は思う。初めて受けた指摘に戸惑いながらも、彼の言う通りだと認めざるを得ない。
――なぜ一番に女なんて産んでしまったのかしら!お前のせいで私は、いつも旦那様から辛く当たられる!
母ベルシアから受けた言葉は、まるで呪いのようにリリアンナを縛り付けていた。当時の母の立場を慮れば、それも仕方なかったのだと理解はしている。それでもやはり、彼女の幼心は酷く傷付いていたのだ。
「僕はこの国の人間ではありませんし、貴女方との付き合いもまだ浅い。事情を知らない人間だからこそ、吐露
出来ることもあるのでは?」
エドモンドは、リリアンナを前にするといつも新鮮な気分だった。初対面とはがらりと印象が変わり、話すたびに新しい発見がある。その綺麗なロイヤルブルーの瞳に何がどんな風に映っているのか、もっと知りたいと思ってしまう。
自分の婚約者となるべき人は、彼女ではなくケイティベルだというのに。
「私は……」
これまで、自身の幸せなどあまり考えてこなかった。そんな余裕もなく、勇気もなく、叶えられるはずがないとただ怖がって目を背けていただけ。期待しない方が傷も浅くて済むからと、諦めた振りをした。
「ルシフォードとケイティベルと一緒に、幸せに生きていきたい……。誰かを死なせてしまうことも、自分がしんでしまうことも、どちらも嫌です……っ」
「リリアンナ嬢……」
「本当は、とても怖いのです。こんな私に大切な二人が守れるのか、もしも失敗してしまったらどうしようと、最悪の未来ばかり頭に浮かんで」
ルシフォードとケイティベルには絶対にこんな姿は見られたくないと、リリアンナは怯えている。ずっと酷い態度を取ってきた自分を受け入れてくれた、優しくて純粋な弟妹。もう二度と、悲しませるような真似はしたくない。
会ったばかりの彼に、なぜ本心を打ち明けているのだろう。リリアンナはそう思いながらも、先ほどの言葉を嬉しいと感じていた。可愛げのない悪役令嬢に寄り添ってくれた男性は、エドモンドが始めてだったから。
それも、今までの彼女では素直に受け取ることは出来なかっただろう。ルシフォードとケイティベルがいなければ、リリアンナは永遠に殻に閉じ籠ったまま。
「本当に……、心から愛しているのです」
美しいロイヤルブルーの瞳には、うっすらと涙さえ浮かんでいるように見える。常に冷静で気丈に振る舞う彼女の意外な表情を目にしたエドモンドは、ほんの一瞬も視線を逸らせなかった。
こんなにも家族を大切に想うリリアンナの、一体どこが悪女というのだろう。誰にも弱味を見せず、ずっと一人で戦ってきた彼女は芯の強い女性だ。そう思うと同時に、こうしてほんの少しでも本音を吐露してくれたことが、想像していたよりも遥かに嬉しい。
リリアンナ・エトワナという令嬢を知れば知るほどに膨れ上がっていく自身の感情を、エドモンド自身もコントロールすることが出来なくなりそうで、どこか怖かった。
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