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晴れた空、決意の出立

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ーー

旅の顔ぶれはアザゼル様、イアン、ロココさん、レイリオ、そして私の五人。その他の護衛をつけなかったのは、戦闘となった場合守りきれる保証がなかったからだ。

「ここが、西ヒスタリア帝国…」

まず、エイルダイアンの時とは国境から雰囲気が真逆だった。絶壁に囲まれた軍事帝国。唯一の通行手段である橋はおびただしい数の警備隊にかこまれており、とても厳しい検閲が行われているとのこと。

(気軽に行き来できるわけではないのね…)

自由になればどこへでも行けると思っていたけれど、どうやら西ヒスタリアは例外らしい。ここまでの厳重な守りが民の為であるのならば、何の問題もないと思う。

「入国が難しいということは、裏を返せば出国もそうだということです。西ヒスタリアの民に、自由は存在しない」
「エイルダイアンとこうも違うなんて…」
「かつてのスティラトールも似たようなものでしたけれどね」

いつも通り淡々としたイアンの口調が、今は頼もしく感じる。

「スティラトールでは魔力の発現を確認されたと同時に化け物扱いですが、西ヒスタリアでは英雄となります」
「それほど、魔術師を重んじているということなのかしら」
「聞こえはいいですが、要は戦闘要員でしょう。待遇が良ければ反乱など起こらないでしょうから」

崖下から吹き荒ぶ強い風のせいで、銀の髪に空に散らばる。これから起こるであろう苦難を思うと、頭上に広がるからっとした青空とは真逆の気分だった。




無事に国境を越えられはしたが、とても奇妙だった。

「我が国へようこそお越しくださいました。聖女イザベラ様、そしてエイルダイアンの使者の方々」

殺伐としていた警備隊が、私達の通行証を確認した途端に態度を変えたのだ。

「気色悪い連中だな」

私の名を呼ばれた時、アザゼル様の雰囲気が明らかな殺気に包まれ、警備隊の人達の表情は途端に強張っていた。

「貴方がここで問題を起こすと、被害を被るのはイザベラ様ですよ」
「うるせぇ、そんなことは分かってる」
「それにしても潤いが全くない国ね、ここは」

用意された馬車に乗り込み、私達はここから数日をかけ王都を目指す。最初の頃は長旅の馬車に酔っていたけれど、この緊張感でそれどころではなさそうな気がする。

「レイリオ、大丈夫?」

ロココさんとイアンが同じ馬車に乗り、私達三人が同じ馬車へ同乗している。この国へ来てからほとんど言葉を発しないレイリオに、私は正面から声をかけた。

幾ら記憶がないといえど、彼にとってここは最低最悪の場所。それでもその瞳には、強い意志が宿って見える。

「何も思い出せないから、どうとも思わない」
「無理はしないで。皆、貴方の味方だから」
「イザベラ」

レイリオがこちらに指を伸ばす。私はその手を取り、両手でそっと握り締めた。

アザゼル様は、何も言わないまま。レイリオの心情を、きっと理解しているのだろうと思う。

「俺はあいつらを、護りたい」
「護りましょう。絶対に」

握る手に力を込めると、レイリオは小さく頷いた。
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