おとなりさんはオカン男子!

清澄 セイ

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第一章「憧れのセンパイ」

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「ここか…」

はーちゃんから聞いたのは、先輩がよく利用しているというテニスショップ。はーちゃんのお兄さんもテニス部で、王寺先輩と仲がいいらしい。

まだ自分のラケットを持っていない私は、部で一括で買うのを断ってここにやってきた。あわよくば、先輩に会えたらいいなっていう下心で。

ちなみにはーちゃんは、今日は塾。個人のお店みたいだし余計に緊張するけど、行動しなきゃ始まらない。

「…よし」

”テニスショップMIX“と書かれた看板を見上げた後、勇気を出してドアを押す。カランカランという何だか懐かしい鈴の音が響いた。

「こ、こんにちは」

「あら、いらっしゃい!」

迎えてくれたのは、エプロン姿の奥さんらしき女の人。笑顔が素敵で、少し緊張が和らいだ。

「その制服、栗並第二の子ね?一年生?」

「は、はい!」

「ふふっ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ」

女の人は柔らかく笑って、私を中に案内してくれた。

ソフトテニス用のラケットが欲しいというと、初心者向けのものを何本か見せてくれた。

「最初はあんまり高いものじゃなくていいと思うわ。とにかく、慣れることが大事だから」

「ラケットって言っても、色んな種類があるんですね」

「大事な相方だからね。高くないって言っても決して安くないし、じっくり悩んで決めたらいいわ」

「はい、ありがとうございます」

初心者の私に凄く丁寧に教えてくれる奥さんに感謝しながら、私は目の前にある二本のうちどっちにしようか、腕組みしながら考えていた。

カランカラン

「こんにちはー」

ドアについてる懐かしい鈴の音が聞こえたと同時に、爽やかな声が店内に響く。衝動的にパッと振り向くと、そこにはなんとあの王寺先輩が立っていたのだ。

う、嘘!まさかホントに会えるなんて…

生王寺先輩を前にして固まったままの私に、王寺先輩の方から話しかけてくれた。

「あれ。君もしかして、テニス部の一年?」

「え…っ?」

先輩、私のこと知ってるの?

ポカンとする私に向かって、王寺先輩はニコッと笑う。

「君この間ボールが入ったカゴを倉庫に収める時、盛大にぶちまけてたよね?たまたま見て、顔覚えてたんだ」

「あ…っ」

そう言われて、みるみるうちに顔が熱くなっていく。確かに何日か前にそんなことやっちゃったけど、まさか先輩に見られてたなんて。

この状況って、正にアレだよね。

”穴があったら入りたい“ってやつ。

「ははっ、顔真っ赤だ」

だけどあくまであれは例えなので、ホントに穴の中に身を隠すことはできないわけで。

言い訳もできないままリンゴみたいにますます顔を赤くする私を見て、王寺先輩はまた楽しそうに笑った。
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