おとなりさんはオカン男子!

清澄 セイ

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第二章「ムクチな同級生」

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それから放課後になり、私とはーちゃんは部活に行く支度を始める。一緒に行こうと思ったけど、はーちゃんは職員室に寄るらしいから先に行ってることにした。

部活が終わったら、やっぱり“MIX″に行ってみようかなぁ。話せるようになったって言っても、そもそも会うチャンスが少ないし。

「白石」

昇降口の端の方で名前を呼ばれ、私はそっちを向く。そこには甘崎君が立っていて、私は慌てて駆け寄った。

「今から部活?」

「うん、そうだよ。甘崎君部活は?」

「俺は入ってないから」

そっか、そうだよね。家の事全部やらなくちゃいけないんだもんね。

昨日は聞かなかったけど、甘崎君のご両親もウチと似たような感じなのかな?

「昨日はありがとう」

「こちらこそ」

私達はまるで井戸端会議のおばちゃんみたいな挨拶をして、ペコリとお辞儀をしあう。

すると甘崎君が、ごそごそとカバンから何かを取り出した。

「これ。もしよかったら食べて」

「えっ!」

「クッキー。昨日、白石が帰った後に翠達が駄々こねるから作った」

シンプルな袋に入れられたそれは、中身が見えない。でも受け取ると、ふんわりと甘い香りがした。

「苦手なら持って帰るけど」

「ううん、クッキー大好きだよ」

笑顔になる私を見て、甘崎君の表情も少し和らぐ。

「でもあの時間からクッキー作っちゃうなんて、やっぱり甘崎君って凄いね」

「別に。クッキーってそんなに難しくないし」

「ア、アハハ。そうなんだ」

王寺先輩のタイプを聞いた後スマホでレシピ調べたけど、よく分からなくてすぐ諦めたとは言えない。

「ホントにもらっちゃっていいの?」

「アイツらが、白石にも渡せってうるさくて」

「そうなんだ、じゃあもらうね。ありがとう甘崎君」

甘崎君は軽く頷くと、くるっと背を向けて帰っていく。私はもらったクッキーを、大切にカバンにしまった。

何だか、さっきよりうんと元気が出た気がする。今日も、部活頑張ろう。
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