おとなりさんはオカン男子!

清澄 セイ

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第三章「縮んでいくキョリ」

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ピンポーン

その時、来客を知らせるドアフォンの音が部屋に響いて、私は思わずビクッと反応する。手の甲で涙を拭ってモニターを確認すると、そこには甘崎君の姿が映し出されている。

「えぇっ、何で!?」

まさか甘崎君だとは思ってなかったから、私は慌てながらバタバタと玄関へ急ぐ。ドアを開けると、いつものクールな表情を浮かべた甘崎君が立っていた。

「あ、甘崎君どうしたの?」

そう尋ねても、甘崎君はなぜか歯切れが悪い。

「いやこれ、作り過ぎたから食べるかなって。肉じゃがなんだけど」

「肉じゃが!?」

肉じゃが!まさか男子から肉じゃがをもらうなんて、想像すらしたことなかった。

差し出されたタッパーからは、ふんわりと甘い出汁の香りがする。甘崎君の作った肉じゃが、絶対美味しいに決まってる。

「でも悪いよ」

「だから、作り過ぎただけだって」

「でも…」

私は誘いを断ってクッキー作りなんてしてるのに、もらってしまっていいのかな。

中々受け取ろうとしない私に、甘崎君はぽつりと呟く。

「…何か元気、ない気がしたから」

「え…」

驚いて彼を見つめると、ふいっと視線を逸らさせる。その表情は、何だか照れてるように見えた。

「ちょっと気になっただけ」

「甘崎君…」

「これは気にしなくていいから、嫌じゃないなら食べてもらえると…」

私の瞳から、ボロボロと涙が零れ落ちる。甘崎君はギョッとしたように目を見開いて、それからオロオロと慌てはじめた。

「ごっ、ごめんね。何でもないから…っ」

「何でもなくはないでしょ!俺嫌なこと言った?」

「違う、言ってない!」

甘崎君の言葉を、私は首をブンブン横に振って否定する。本当はこんな迷惑かけたくないのに、涙が止まらない。

「どうかした?何かあった?」

甘崎君は心配そうに、私の顔を覗き込む。

「私、甘崎君に謝らなきゃいけないことがあって…っ」

「うん」

「私、私…っ」

「大丈夫、ゆっくりでいいから」

繰り返しそう言って慰めてくれる甘崎君の声色は優しくて、まるで頭を撫でられてるような気持ちになった。
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