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第五章「タイセツだと思うから」
⑤
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「あ、甘崎く」
甘崎君の手が熱いのは、きっと熱のせいだ。そう分かっていても、どうしようもなくドキドキしてしまう。
「この間は、ごめん」
「え…っ」
「凄く嫌な態度だったと思うから」
下がった前髪のせいで、甘崎君の目元はよく見えない。だけど頬っぺたが真っ赤で、私にまでそれが移ってしまったかのようだった。
「そ、そんなことないよ!私の方こそ、甘崎君に嫌な思いさせちゃって…」
「嫌な思い?」
「甘崎君の作ったクッキーを勝手に他の人に食べさせちゃったのに、その上作り方まで教えてもらおうなんて、図々しいよね。本当に、ごめんなさい」
甘崎君の方を見られなくて、私は目を伏せた。彼に触れられたままの手が視界に入って、どうしようもないくらいにドキドキしてしまう。
「違う、そんなこと思ってない」
「えっ?」
「怒ってるわけじゃなくて、俺は…その…」
甘崎君がパッと手を離して、自分の前髪を触る。そこから覗いた瞳がうるんでて、いつもと違う彼の表情にまた心臓が跳ねた。
「とっ、とにかく!俺は怒ってないし、クッキーだって一緒に作りたい」
「甘崎君…」
「い、いや作りたいっていうか…だから…」
普段学校では真面目でクールな甘崎君が、顔を真っ赤にして慌ててる。それがなんだか可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
思い返せば甘崎君と関わるようになってから、彼の意外なところを「可愛い」と思うことが多い気がする。
今の照れてる甘崎君も凄く、可愛い。
「ありがとう、甘崎君」
私自身も頬っぺたが熱くて、それを手で押さえながらそう口にする。
「甘崎君のそういう気遣い屋なところ、尊敬する」
「い、いや俺は別に」
益々顔が赤くなる甘崎君に、なんだか部屋の温度が上がった気さえしてくる。
「俺だって、白石に元気もらってるし…いつもおいしそうに食べてくれるのも、嬉しい。一生懸命部活頑張ってるのも凄いと思うし、それから翠や蒼と楽しそうに遊んでるのも、可愛いっていうか…」
「あ、甘崎君っ!褒めてもらえるのは嬉しいけど、さすがに恥ずかしいよ…っ」
「ご、ごめん」
二人共赤い顔で俯きながら、モジモジする。どうしよう、なんだかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…ていうか、可愛いって言われた!
「ね、熱のせいだから気にしないで」
「そ、そっか。そういえば甘崎君体調悪いんだったね。ごめん、忘れてた」
「ハハッ」
甘崎君が笑って、私もそれにつられて頬を緩める。いつもより潤んだ瞳で見つめられると、ドキドキしてしまう。
やっぱり、二人きりだからなのかな。なんだか今日は、やけに心臓がうるさくて落ち着かない。
「あのさ、白石」
「うん?」
「俺…」
甘崎君の前髪の間から覗く瞳に、またドキッとする。彼が私の名前を呼んで何かを言いかけた瞬間、ガチャッとドアが開いた。
「お待たせ、お水持ってきたよー」
ギンガ君が明るい声で部屋に入ってきて、私はなぜかパッと甘崎君から距離を取ってしまった。
「あれ、ツバサさんも顔が赤い…もしかして兄ちゃんの風邪がうつった!?」
「う、ううん!私は平気!」
手でパタパタと顔を仰ぎながら、ごまかすみたいにアハハと笑う。
「わ、私そろそろ帰るね。もしまた何かあったら、遠慮なくインターホン押してくれていいから」
「今日は本当に、色々ありがとう」
「甘崎君、お大事に」
私はそう口にして、トレーを持って部屋を出る。空っぽになった器を見て、胸の奥がジンワリ温かくなるような気がした。
甘崎君の手が熱いのは、きっと熱のせいだ。そう分かっていても、どうしようもなくドキドキしてしまう。
「この間は、ごめん」
「え…っ」
「凄く嫌な態度だったと思うから」
下がった前髪のせいで、甘崎君の目元はよく見えない。だけど頬っぺたが真っ赤で、私にまでそれが移ってしまったかのようだった。
「そ、そんなことないよ!私の方こそ、甘崎君に嫌な思いさせちゃって…」
「嫌な思い?」
「甘崎君の作ったクッキーを勝手に他の人に食べさせちゃったのに、その上作り方まで教えてもらおうなんて、図々しいよね。本当に、ごめんなさい」
甘崎君の方を見られなくて、私は目を伏せた。彼に触れられたままの手が視界に入って、どうしようもないくらいにドキドキしてしまう。
「違う、そんなこと思ってない」
「えっ?」
「怒ってるわけじゃなくて、俺は…その…」
甘崎君がパッと手を離して、自分の前髪を触る。そこから覗いた瞳がうるんでて、いつもと違う彼の表情にまた心臓が跳ねた。
「とっ、とにかく!俺は怒ってないし、クッキーだって一緒に作りたい」
「甘崎君…」
「い、いや作りたいっていうか…だから…」
普段学校では真面目でクールな甘崎君が、顔を真っ赤にして慌ててる。それがなんだか可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
思い返せば甘崎君と関わるようになってから、彼の意外なところを「可愛い」と思うことが多い気がする。
今の照れてる甘崎君も凄く、可愛い。
「ありがとう、甘崎君」
私自身も頬っぺたが熱くて、それを手で押さえながらそう口にする。
「甘崎君のそういう気遣い屋なところ、尊敬する」
「い、いや俺は別に」
益々顔が赤くなる甘崎君に、なんだか部屋の温度が上がった気さえしてくる。
「俺だって、白石に元気もらってるし…いつもおいしそうに食べてくれるのも、嬉しい。一生懸命部活頑張ってるのも凄いと思うし、それから翠や蒼と楽しそうに遊んでるのも、可愛いっていうか…」
「あ、甘崎君っ!褒めてもらえるのは嬉しいけど、さすがに恥ずかしいよ…っ」
「ご、ごめん」
二人共赤い顔で俯きながら、モジモジする。どうしよう、なんだかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど…ていうか、可愛いって言われた!
「ね、熱のせいだから気にしないで」
「そ、そっか。そういえば甘崎君体調悪いんだったね。ごめん、忘れてた」
「ハハッ」
甘崎君が笑って、私もそれにつられて頬を緩める。いつもより潤んだ瞳で見つめられると、ドキドキしてしまう。
やっぱり、二人きりだからなのかな。なんだか今日は、やけに心臓がうるさくて落ち着かない。
「あのさ、白石」
「うん?」
「俺…」
甘崎君の前髪の間から覗く瞳に、またドキッとする。彼が私の名前を呼んで何かを言いかけた瞬間、ガチャッとドアが開いた。
「お待たせ、お水持ってきたよー」
ギンガ君が明るい声で部屋に入ってきて、私はなぜかパッと甘崎君から距離を取ってしまった。
「あれ、ツバサさんも顔が赤い…もしかして兄ちゃんの風邪がうつった!?」
「う、ううん!私は平気!」
手でパタパタと顔を仰ぎながら、ごまかすみたいにアハハと笑う。
「わ、私そろそろ帰るね。もしまた何かあったら、遠慮なくインターホン押してくれていいから」
「今日は本当に、色々ありがとう」
「甘崎君、お大事に」
私はそう口にして、トレーを持って部屋を出る。空っぽになった器を見て、胸の奥がジンワリ温かくなるような気がした。
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