41 / 45
第六章「手作りクッキーの意味」
⑤
しおりを挟む
試合会場は熱気に包まれていて、汗が止まらないくらい暑い。私ははーちゃんや他の一年生達と一緒に、喉が枯れるくらい声を張り上げて先輩達の応援をした。
いつもの体操服とは違うユニフォーム姿が、凄くカッコいい。特に部長の美山先輩のペアは、難なく三回戦に進出を決めていて、砂埃が舞うコートの中でもキラキラと輝いていた。
私もいつかあんな風に、堂々とコートに立てるようになりたい。もしも試合に出られたら、甘崎君応援に来てくれたりするかな…
なんて、こんな場所でも彼のことを思い出しちゃうなんて。
「はーちゃん、私ちょっと飲み物買ってくるっ」
気温とは関係なく顔が熱くなったから、少し落ち着こうと思って私は一人自販機までやってきた。
「あれ、白石さん」
「お、王寺先輩!お疲れ様ですっ」
「お疲れ様」
そこで偶然、王寺先輩がスポーツドリンクを買ってる所に出くわした。赤と黒のユニフォーム姿の先輩は、いつもより何倍にも増してかっこいい。
思わずポーッと見惚れてたけど、私は慌てて胸の前で拳を握り締めた。
「次の試合も応援してます!頑張ってください!」
先輩達の話では、王寺先輩のペアも三回戦に進出したらしい。私が応援するのは主に女子コートの方だけど、心の中では常に王寺先輩にエールを送ってる。
「ありがとう。白石さんにそう言ってもらえると、次も勝てそうな気がしてくるよ」
さすが王寺先輩。こんな時でも私を気遣ってくれるなんて、ホントにいい人だ。
「じゃあ私、行きますね」
「待って白石さん」
王寺先輩が、パシッと私の手を掴む。驚いて、思わず手に持っていたペットボトルがゴトッと地面に落ちた。
「お、王寺先輩」
「試合が終わったら、練習も落ち着くと思うから。そしたら今度、二人でどこか出かけない?」
「あ、あの…」
視線を左右にさまよわせる私を見て、王寺先輩はパッと手を離す。もう触れられていないのに、その部分だけが熱い。
私が地面に落としたペットボトルを拾って、王寺先輩はニコリと笑った。
「ごめんね、急に誘ったりして。白石さんの顔見たら言いたくなっちゃって。返事は今度でいいから」
「あ…はい」
「試合、頑張ってくるね」
王寺先輩は軽く片手を上げると、そのまま去っていく。どうして即答できなかったのか自分でも分からないまま、手の中の少し潰れたペットボトルをジッと見つめた。
「ツバサ今日はお弁当?自分で作ったの?」
お昼の時間になり、甘崎君からもらったお弁当を広げる。丁寧に保冷剤までつけてあるそれに、私は丁寧に手を合わせた。
「まさか、違うよ」
「じゃあ、お母さん?」
「まぁそんなところ」
心の中ではーちゃんに謝りながら蓋を開けると、フワッといい匂いが鼻をくすぐった。
「ハンバーグだ…」
私の好きなもの。前に甘崎君が作ってくれた時大げさなくらいに喜んで、呆れながら笑われたっけ。
口いっぱいに広がるデミグラスソースの甘い味に、私の胸は苦しいくらいにドキドキしてしかたなかった。
いつもの体操服とは違うユニフォーム姿が、凄くカッコいい。特に部長の美山先輩のペアは、難なく三回戦に進出を決めていて、砂埃が舞うコートの中でもキラキラと輝いていた。
私もいつかあんな風に、堂々とコートに立てるようになりたい。もしも試合に出られたら、甘崎君応援に来てくれたりするかな…
なんて、こんな場所でも彼のことを思い出しちゃうなんて。
「はーちゃん、私ちょっと飲み物買ってくるっ」
気温とは関係なく顔が熱くなったから、少し落ち着こうと思って私は一人自販機までやってきた。
「あれ、白石さん」
「お、王寺先輩!お疲れ様ですっ」
「お疲れ様」
そこで偶然、王寺先輩がスポーツドリンクを買ってる所に出くわした。赤と黒のユニフォーム姿の先輩は、いつもより何倍にも増してかっこいい。
思わずポーッと見惚れてたけど、私は慌てて胸の前で拳を握り締めた。
「次の試合も応援してます!頑張ってください!」
先輩達の話では、王寺先輩のペアも三回戦に進出したらしい。私が応援するのは主に女子コートの方だけど、心の中では常に王寺先輩にエールを送ってる。
「ありがとう。白石さんにそう言ってもらえると、次も勝てそうな気がしてくるよ」
さすが王寺先輩。こんな時でも私を気遣ってくれるなんて、ホントにいい人だ。
「じゃあ私、行きますね」
「待って白石さん」
王寺先輩が、パシッと私の手を掴む。驚いて、思わず手に持っていたペットボトルがゴトッと地面に落ちた。
「お、王寺先輩」
「試合が終わったら、練習も落ち着くと思うから。そしたら今度、二人でどこか出かけない?」
「あ、あの…」
視線を左右にさまよわせる私を見て、王寺先輩はパッと手を離す。もう触れられていないのに、その部分だけが熱い。
私が地面に落としたペットボトルを拾って、王寺先輩はニコリと笑った。
「ごめんね、急に誘ったりして。白石さんの顔見たら言いたくなっちゃって。返事は今度でいいから」
「あ…はい」
「試合、頑張ってくるね」
王寺先輩は軽く片手を上げると、そのまま去っていく。どうして即答できなかったのか自分でも分からないまま、手の中の少し潰れたペットボトルをジッと見つめた。
「ツバサ今日はお弁当?自分で作ったの?」
お昼の時間になり、甘崎君からもらったお弁当を広げる。丁寧に保冷剤までつけてあるそれに、私は丁寧に手を合わせた。
「まさか、違うよ」
「じゃあ、お母さん?」
「まぁそんなところ」
心の中ではーちゃんに謝りながら蓋を開けると、フワッといい匂いが鼻をくすぐった。
「ハンバーグだ…」
私の好きなもの。前に甘崎君が作ってくれた時大げさなくらいに喜んで、呆れながら笑われたっけ。
口いっぱいに広がるデミグラスソースの甘い味に、私の胸は苦しいくらいにドキドキしてしかたなかった。
0
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)
天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。
+:-:+:-:+
ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。
+:-:+:-:+
「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。
+:-:+:-:+
「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。
+:-:+:-:+
寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです!
+:-:+:-:+
2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。
+:-:+:-:+
未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ぼくのだいじなヒーラー
もちっぱち
絵本
台所でお母さんと喧嘩した。
遊んでほしくて駄々をこねただけなのに
怖い顔で怒っていたお母さん。
そんな時、不思議な空間に包まれてふわりと気持ちが軽くなった。
癒される謎の生き物に会えたゆうくんは楽しくなった。
お子様向けの作品です
ひらがな表記です。
ぜひ読んでみてください。
イラスト:ChatGPT(OpenAI)生成
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる