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第二章 アルフェーヴェ王国の咎人
二話 対面―上に立つ者―
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今思えば、師匠の修業は効率の悪いものが多かった。よく言えばがむしゃらに取り組めたが、悪く言えばただただ疲れるものだ。
そんなとき、師匠にしては珍しくいいことを言っていた。
『つらくて苦しいときの後一歩が、必ずお前を強くする』
そして今、ピョンピョン跳ねている俺は体力的に非常に苦しいものがある。
一番の原因はこの牢屋が地下にあったこと、長い階段を登るのは修業で鍛えたといえどさすがにきつい。
他の看守がいなくて幸運だったが、まさかこんな罠(?)が残されているとは。
というかあの看守、こんな階段があるのに俺を引きずろうとしてたのか・・・・・・
「ぜえ・・・・・・ぜえ・・・・・・」
階段を上がり終え、やっとの思いで外へ出ると、目の前にあったのは大きな廊下だった。
先ほどの牢屋とは違う、煌びやかで目がチカチカする空間。こんなに立派な建物に入ったのは生まれて初めてだ。牢屋も初めてだったし貴重な体験ばかりだ。
「な、なんだあれは!?」
しかしながら、あっという間に廊下を歩く人に見つかった。気味悪がって近づいてこないが、走って追いかけられたらとてもじゃないが逃げ切れる自信が無い。
ならば逆に、近寄ってみるというのはどうだろう。
「ひ、ひぃ!?」
跳んでくる俺がよほど恐ろしく見えたのか、男はその場で足を崩し座り込んだ。だが俺が接近すると、震える足をなんとか動かして駆けだした。
「い、一夜様に報告せねば!!」
誰だか分からないが、位の高そうな名前が出てきた。さっきの男が走って行った方向に行けば会えるのだろうか。それも分からないが、行くしかあるまい。
疲労が徐々に蓄積していっている。今すぐその場で横になりたいが、『一夜』という人間に会うまでは倒れるわけにはいかない。
「き、貴様か!?」
「ホントに拘束されたままだぞ!?」
汗を垂らしながら廊下を右折すると、4メートル近くある大きな扉を発見した。その両脇には、鎧を身につけた男が一人ずつ立っており、俺を見た瞬間腰の剣を抜いて構えた。
さっきの男の報告を受けたのか、俺が来ることは知っていたようだ。適性は『騎士』だろうか、それならこの格好で勝つのはさすがに厳しい。
――だけど戦闘は、勝つのが全てではない。
扉の前の男たちは近づいては来ない。俺が扉まで来たら迎撃するつもりなのだろう。
受け身は基本後出し、そんなことでは俺は止められない。
「あっ!?」
足をもたつかせ、前方に転けるフリをした。顔が少しずつ床に近づいてゆく。
そのタイミングで、後ろに拘束された両手で魔法を発動させた。
「積炎破!!」
炎系魔法二式、積炎破。範囲攻撃になりやすい炎を集中させ、速度を生み出す魔法。
それを無理矢理地面に放つことで、体を強引に浮かせた。かなりのスピードで扉へと向かっていく。頭だけは扉に衝突しないよう気をつけながら、扉に当たる瞬間に全身の力をこめた。
バンッ、と大きな音が響くとともに全身に激痛が走る。先の床に転がり、なんとか突破できたのを確認できた俺。
顔を上げたその先にいたのは――
「ハハハ!まさか本当にここまで来るとは!」
「おまえか、一夜ってやつは」
手を顔に当てながら高笑いする男。高そうな鎧に身をまとった金色の髪をした若い男。
――男は、不敵な笑みを浮かべてこういった。
「様をつけんか、アルフェーヴェ王国の王の前だぞ?」
そんなとき、師匠にしては珍しくいいことを言っていた。
『つらくて苦しいときの後一歩が、必ずお前を強くする』
そして今、ピョンピョン跳ねている俺は体力的に非常に苦しいものがある。
一番の原因はこの牢屋が地下にあったこと、長い階段を登るのは修業で鍛えたといえどさすがにきつい。
他の看守がいなくて幸運だったが、まさかこんな罠(?)が残されているとは。
というかあの看守、こんな階段があるのに俺を引きずろうとしてたのか・・・・・・
「ぜえ・・・・・・ぜえ・・・・・・」
階段を上がり終え、やっとの思いで外へ出ると、目の前にあったのは大きな廊下だった。
先ほどの牢屋とは違う、煌びやかで目がチカチカする空間。こんなに立派な建物に入ったのは生まれて初めてだ。牢屋も初めてだったし貴重な体験ばかりだ。
「な、なんだあれは!?」
しかしながら、あっという間に廊下を歩く人に見つかった。気味悪がって近づいてこないが、走って追いかけられたらとてもじゃないが逃げ切れる自信が無い。
ならば逆に、近寄ってみるというのはどうだろう。
「ひ、ひぃ!?」
跳んでくる俺がよほど恐ろしく見えたのか、男はその場で足を崩し座り込んだ。だが俺が接近すると、震える足をなんとか動かして駆けだした。
「い、一夜様に報告せねば!!」
誰だか分からないが、位の高そうな名前が出てきた。さっきの男が走って行った方向に行けば会えるのだろうか。それも分からないが、行くしかあるまい。
疲労が徐々に蓄積していっている。今すぐその場で横になりたいが、『一夜』という人間に会うまでは倒れるわけにはいかない。
「き、貴様か!?」
「ホントに拘束されたままだぞ!?」
汗を垂らしながら廊下を右折すると、4メートル近くある大きな扉を発見した。その両脇には、鎧を身につけた男が一人ずつ立っており、俺を見た瞬間腰の剣を抜いて構えた。
さっきの男の報告を受けたのか、俺が来ることは知っていたようだ。適性は『騎士』だろうか、それならこの格好で勝つのはさすがに厳しい。
――だけど戦闘は、勝つのが全てではない。
扉の前の男たちは近づいては来ない。俺が扉まで来たら迎撃するつもりなのだろう。
受け身は基本後出し、そんなことでは俺は止められない。
「あっ!?」
足をもたつかせ、前方に転けるフリをした。顔が少しずつ床に近づいてゆく。
そのタイミングで、後ろに拘束された両手で魔法を発動させた。
「積炎破!!」
炎系魔法二式、積炎破。範囲攻撃になりやすい炎を集中させ、速度を生み出す魔法。
それを無理矢理地面に放つことで、体を強引に浮かせた。かなりのスピードで扉へと向かっていく。頭だけは扉に衝突しないよう気をつけながら、扉に当たる瞬間に全身の力をこめた。
バンッ、と大きな音が響くとともに全身に激痛が走る。先の床に転がり、なんとか突破できたのを確認できた俺。
顔を上げたその先にいたのは――
「ハハハ!まさか本当にここまで来るとは!」
「おまえか、一夜ってやつは」
手を顔に当てながら高笑いする男。高そうな鎧に身をまとった金色の髪をした若い男。
――男は、不敵な笑みを浮かべてこういった。
「様をつけんか、アルフェーヴェ王国の王の前だぞ?」
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