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第二章 アルフェーヴェ王国の咎人
三話 王の名―責任の重み―
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「アルフェーヴェ王国・・・・・・?」
聞いたことがない。そもそもハスト村以外のことをそんなに教えられなかったわけだけど。
ここが王国でコイツが王なら、ここは城の中か。道理で内装が華美なわけだ。
「自身の村を統治する国の名も知らんとは、どれだけ愚かさを上塗りするのか」
「統治?潰されておいてよくそんなことが言え――」
全てを言い終える前に頭が床に押しつけられた。目の前の男が、俺の頭を踏みつけている。
「貴様は本当に口の利き方がなってないな」
「ってぇ・・・・・・!」
「民が王を敬うのは自然の摂理、そんなことも習わなかったのか?」
「あいにく、面倒見てくれた人に裏切られたばかりでな。今は反抗期なんだ」
「ああ、あの老いぼれジジイのことか」
そう呟くと、男は天井を見上げて豪快に笑った。
「あいつはなかなか傑作だったぞ!俺に向けて『勇者は好きにさせてほしい』と文をよこしたときは本当に笑いが絶えなかった。そして『勇者をよこさねば村の連中を皆殺しにする』と返せばこの通りじゃないか!ハハハハハハ!」
――薬で意識を失う前の村長を思い出した。
泣いていたんだ。悪意の言葉とは裏腹に、隠しきれない悲しみが表情に溢れていた。
村長は、俺を裏切ったわけではなかった。
「――なんだその目は?」
射殺すような視線が気に障ったのか、男は笑うのをやめた。
「いや、こんなに苛立っているのは生まれて初めてでな」
「なら俺にも攻撃するか?腕の鎖で、さっきの魔法で」
「しねえよ。俺は、人を傷つけるために力をつけたんじゃねえ」
力を持つということは、その力に責任を持つということ。むやみやたらに乱用するのなら、それは魔物となんら変わらない。
俺は、4人で魔王を倒すために勇者になったんだ。
「ふん。勇者としての自覚はあるようだな」
満足そうに呟くと、男は俺から離れ目の前の椅子に座った。足を組み、両腕を組んで俺を見下ろす。
「無礼な言葉遣いは許してやる。貴様が凡夫なら即死刑だが、適性が『勇者』の男を斬り捨てるなど阿呆のやることだ。もともと害を加えるつもりもなかった」
「・・・・・・今更言っても信じられねえなぁ」
足で踏まれた頭は、まだじんわりと痛む。
「貴様が勝手に無茶しただけだろう、俺の前に連れて行くと言われただろうが」
「言い方が気に食わなかった。人に会うくらい自分でできる」
男は目を丸くすると、今日三度目の破顔を見せた。
「ハハハ!貴様の中身、完全にガキのそれではないか!」
「う、うるせえ!こんな拘束で俺を制御できると思われたからムカッときたんだよ!」
「ハハハハハハ!」
「笑うな!」
腹を抱えるように笑うと、涙が出てきたのか男は目許を擦り始める。どれだけ笑い上戸なんだコイツは・・・・・・
「やはり勇者は恐怖で縛れるものではないな、とはいえ一人で行動されても困るわけだが」
「何の話だ」
「まずは正式に自己紹介しよう。光栄に思え、王に名を告げられることを」
俺の言葉など右から左。立ち上がった男は、手を胸に当て声高らかに言い放つ。
「俺の名前は神代一夜。アルフェーヴェ王国8代目王だ」
聞いたことがない。そもそもハスト村以外のことをそんなに教えられなかったわけだけど。
ここが王国でコイツが王なら、ここは城の中か。道理で内装が華美なわけだ。
「自身の村を統治する国の名も知らんとは、どれだけ愚かさを上塗りするのか」
「統治?潰されておいてよくそんなことが言え――」
全てを言い終える前に頭が床に押しつけられた。目の前の男が、俺の頭を踏みつけている。
「貴様は本当に口の利き方がなってないな」
「ってぇ・・・・・・!」
「民が王を敬うのは自然の摂理、そんなことも習わなかったのか?」
「あいにく、面倒見てくれた人に裏切られたばかりでな。今は反抗期なんだ」
「ああ、あの老いぼれジジイのことか」
そう呟くと、男は天井を見上げて豪快に笑った。
「あいつはなかなか傑作だったぞ!俺に向けて『勇者は好きにさせてほしい』と文をよこしたときは本当に笑いが絶えなかった。そして『勇者をよこさねば村の連中を皆殺しにする』と返せばこの通りじゃないか!ハハハハハハ!」
――薬で意識を失う前の村長を思い出した。
泣いていたんだ。悪意の言葉とは裏腹に、隠しきれない悲しみが表情に溢れていた。
村長は、俺を裏切ったわけではなかった。
「――なんだその目は?」
射殺すような視線が気に障ったのか、男は笑うのをやめた。
「いや、こんなに苛立っているのは生まれて初めてでな」
「なら俺にも攻撃するか?腕の鎖で、さっきの魔法で」
「しねえよ。俺は、人を傷つけるために力をつけたんじゃねえ」
力を持つということは、その力に責任を持つということ。むやみやたらに乱用するのなら、それは魔物となんら変わらない。
俺は、4人で魔王を倒すために勇者になったんだ。
「ふん。勇者としての自覚はあるようだな」
満足そうに呟くと、男は俺から離れ目の前の椅子に座った。足を組み、両腕を組んで俺を見下ろす。
「無礼な言葉遣いは許してやる。貴様が凡夫なら即死刑だが、適性が『勇者』の男を斬り捨てるなど阿呆のやることだ。もともと害を加えるつもりもなかった」
「・・・・・・今更言っても信じられねえなぁ」
足で踏まれた頭は、まだじんわりと痛む。
「貴様が勝手に無茶しただけだろう、俺の前に連れて行くと言われただろうが」
「言い方が気に食わなかった。人に会うくらい自分でできる」
男は目を丸くすると、今日三度目の破顔を見せた。
「ハハハ!貴様の中身、完全にガキのそれではないか!」
「う、うるせえ!こんな拘束で俺を制御できると思われたからムカッときたんだよ!」
「ハハハハハハ!」
「笑うな!」
腹を抱えるように笑うと、涙が出てきたのか男は目許を擦り始める。どれだけ笑い上戸なんだコイツは・・・・・・
「やはり勇者は恐怖で縛れるものではないな、とはいえ一人で行動されても困るわけだが」
「何の話だ」
「まずは正式に自己紹介しよう。光栄に思え、王に名を告げられることを」
俺の言葉など右から左。立ち上がった男は、手を胸に当て声高らかに言い放つ。
「俺の名前は神代一夜。アルフェーヴェ王国8代目王だ」
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