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3章 二年目の七月
夜明けのひかり その15
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夜明けのひかり15
翌日午前、神社に向かう。作戦決行の最終準備を行うため。九尾さんに用があるので、うまく話しかけられる状況になるまで待つ。よこちゃんとひので君が買い物に出掛けていって、吹浦さんもまた別の方向に出掛けていった。今がチャンス。
「誰かいるんでしょ、出ておいで」
「は、はいっ!」
まさか先に声をかけられるとは、九尾さんはものすごく鋭かったっぽい。
「君は吹浦のとこの妖怪だね」
「はい。湯殿たもとといいます」
「私に用があるんでしょ」
「実はかくかくしかじかというわけで・・・・・・」
私は今までの出来事、そして考えてることをすべて説明した。客観的に見ればとんでもない話ではあるけど、うんうんと聞いてくれた。
「先のタイムスリップの話とかは解らないけど、ひーくんが欲しいんでしょ、それは協力してあげるよ」
「ありがとうございます!」
「いいっていいって」
九尾さんはかなり寛容な方だった。もっと厳しいかたを想像してたけど、そんなことは無かった・・・・・・名が残るような強い妖怪だから余裕があるのだろう。
夕方。山の上の町で私は出かける支度をして待っていた。いや、支度はお昼には終わったのだけど、そのままそわそわして部屋のなかを歩き回っている。しかも作戦まであと四時間もあった。落ち着いていられない、という感じ。夜ご飯もあまり喉を通らずおかわり出来なかった。え?普段から食べ過ぎ?知らないよ。
そろそろ丁度良い時間だと思い山を下る。今日は満月、そして快晴。月明かりが森を照らす。
思ったより早く神社に着いてしまった。早くどころかまだ九時にもなっていない。そわそわして早く出てきてしまった。その辺りを歩きまわって時間を潰そうとするが一時間たったところで限界を迎えた。こっそり裏口から社務所に入る。社務所とよこちゃんの実家は別なのだがこちらに住んでいる。明かりが部屋からこぼれているのでそこを避けるようによこちゃんの部屋に侵入する。よこちゃんは本を読んでいた。
「きっと待ちきれないだろうと思ってた」
と少しだけ笑みを浮かべた。ここにいてもいいと言うのでその言葉に甘える。後でお返ししないといけないね。
一階での宴会は十一時には終わりすっかり静かになった。ひので君も寝る準備をしているに違いない。完全に眠ってしまう都合が悪い。今だ。一回外に出てひので君のいる部屋の窓を叩く。するりと窓が開く。
「こんばんは」
「誰?」
「夜風が涼しいですよ、遊びましょ」
違和感のあるセリフを口に出す。これは湯田川さんの案で不思議っぽさを全面に出した方が良いという。
「東海ひので君」
「なんで名前知ってるのさ」
「知ってるものは知ってるからね」
ひので君は黙ってしまった。少ししてから私はことばを繋ぐ。
「遊びに行こう」
「今から?夜中だよ」
「行こうよ、ほら」
ひので君はジャージて寝ていたのでそのまま連れ出した。手を引いて山を登る。念入りに草刈りをしたり石を取り除いたから暗くても歩きやすい。
「大丈夫?ついてこれる?」
「ちょっと休ませてくれ」
いったん休憩。山の中、静か環境で静かに休む。前にひので君と会ったときは大荒れだったけれど今日は本当に穏やかだった。こうこうと森を照らす満月、涼しい夜風。
休憩を終えいよいよ妖怪の町へ。ひので君はこの真っ暗な町を見てどのように思うだろうか。顔を覗くと寂しそうな顔をしていた。寂しいというか不安なのかもしれない。知らない人に真夜中の山道を歩き回らされたうえに変なところにつれてこられたらそうだよね。敵意を持っていないことを証明したいのだけど。
「さっそく何かしましょ、縄跳び?竹馬?」
このアホの子みたいな発言は湯田川さんから提案されたもの。気持ちをほぐすのにこういう発言をしたらいいと言われたのだけど。
「みんな寝ているじゃないか、それに俺も眠い」
「それじゃ私の家に泊まっていきなよ」
「そうするか」
やっぱり気が立っているようだった。私の部屋にはあらかじめ布団を二人分用意しておいたのでとなりに寝る。
ひので君と少し話したけど、すぐ眠ってしまった。
続きます。
翌日午前、神社に向かう。作戦決行の最終準備を行うため。九尾さんに用があるので、うまく話しかけられる状況になるまで待つ。よこちゃんとひので君が買い物に出掛けていって、吹浦さんもまた別の方向に出掛けていった。今がチャンス。
「誰かいるんでしょ、出ておいで」
「は、はいっ!」
まさか先に声をかけられるとは、九尾さんはものすごく鋭かったっぽい。
「君は吹浦のとこの妖怪だね」
「はい。湯殿たもとといいます」
「私に用があるんでしょ」
「実はかくかくしかじかというわけで・・・・・・」
私は今までの出来事、そして考えてることをすべて説明した。客観的に見ればとんでもない話ではあるけど、うんうんと聞いてくれた。
「先のタイムスリップの話とかは解らないけど、ひーくんが欲しいんでしょ、それは協力してあげるよ」
「ありがとうございます!」
「いいっていいって」
九尾さんはかなり寛容な方だった。もっと厳しいかたを想像してたけど、そんなことは無かった・・・・・・名が残るような強い妖怪だから余裕があるのだろう。
夕方。山の上の町で私は出かける支度をして待っていた。いや、支度はお昼には終わったのだけど、そのままそわそわして部屋のなかを歩き回っている。しかも作戦まであと四時間もあった。落ち着いていられない、という感じ。夜ご飯もあまり喉を通らずおかわり出来なかった。え?普段から食べ過ぎ?知らないよ。
そろそろ丁度良い時間だと思い山を下る。今日は満月、そして快晴。月明かりが森を照らす。
思ったより早く神社に着いてしまった。早くどころかまだ九時にもなっていない。そわそわして早く出てきてしまった。その辺りを歩きまわって時間を潰そうとするが一時間たったところで限界を迎えた。こっそり裏口から社務所に入る。社務所とよこちゃんの実家は別なのだがこちらに住んでいる。明かりが部屋からこぼれているのでそこを避けるようによこちゃんの部屋に侵入する。よこちゃんは本を読んでいた。
「きっと待ちきれないだろうと思ってた」
と少しだけ笑みを浮かべた。ここにいてもいいと言うのでその言葉に甘える。後でお返ししないといけないね。
一階での宴会は十一時には終わりすっかり静かになった。ひので君も寝る準備をしているに違いない。完全に眠ってしまう都合が悪い。今だ。一回外に出てひので君のいる部屋の窓を叩く。するりと窓が開く。
「こんばんは」
「誰?」
「夜風が涼しいですよ、遊びましょ」
違和感のあるセリフを口に出す。これは湯田川さんの案で不思議っぽさを全面に出した方が良いという。
「東海ひので君」
「なんで名前知ってるのさ」
「知ってるものは知ってるからね」
ひので君は黙ってしまった。少ししてから私はことばを繋ぐ。
「遊びに行こう」
「今から?夜中だよ」
「行こうよ、ほら」
ひので君はジャージて寝ていたのでそのまま連れ出した。手を引いて山を登る。念入りに草刈りをしたり石を取り除いたから暗くても歩きやすい。
「大丈夫?ついてこれる?」
「ちょっと休ませてくれ」
いったん休憩。山の中、静か環境で静かに休む。前にひので君と会ったときは大荒れだったけれど今日は本当に穏やかだった。こうこうと森を照らす満月、涼しい夜風。
休憩を終えいよいよ妖怪の町へ。ひので君はこの真っ暗な町を見てどのように思うだろうか。顔を覗くと寂しそうな顔をしていた。寂しいというか不安なのかもしれない。知らない人に真夜中の山道を歩き回らされたうえに変なところにつれてこられたらそうだよね。敵意を持っていないことを証明したいのだけど。
「さっそく何かしましょ、縄跳び?竹馬?」
このアホの子みたいな発言は湯田川さんから提案されたもの。気持ちをほぐすのにこういう発言をしたらいいと言われたのだけど。
「みんな寝ているじゃないか、それに俺も眠い」
「それじゃ私の家に泊まっていきなよ」
「そうするか」
やっぱり気が立っているようだった。私の部屋にはあらかじめ布団を二人分用意しておいたのでとなりに寝る。
ひので君と少し話したけど、すぐ眠ってしまった。
続きます。
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