ふるさとの花

湯殿たもと

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ふるさとの花4

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ふるさとの花4


八月二十三日。今日は晴れて暑くなりそうだ。窓を開けて風通しを良くした教室で勉強を教えていると突然に村長がやってきた。少ししゃべっていた僕たちはしんとなる。それを見た村長はほほほと笑う。

「明日は学校は始業式の準備があるから夏の補講は今日でおしまいじゃ」

男子児童がうおおと喜ぶ。宿題さえ終わってしまえば最後の日くらい思い切り遊びたいだろうな。宿題はこの夏の補講のお陰で(?)無事終わり、二学期を迎えられそうで良かった。

いつも通り最後まで残ったのは僕と百花のふたり。

「明日は午前中からお祭りまで一緒にいようよ」

「お祭りの準備をしなきゃいけないけどそれ以外は大丈夫だよ」

「約束だよ?」

いつになく真剣な顔をしていた。しっかりと指切りをする。その後は少し表情が和らいだ。

お昼の時報のメロディ(野ばら)が響いて百花と別れ家に帰る。途中たまたま部活の帰りの中学生と会う。午後からの卓球部の方は爺さんが倒れて中止になったとか。

「ねぇ竜也さん、明日のお祭り一緒にいきませんか?」

「悪いな、先客がいるんだ」

「百花さんですか?」

「そうだよ」

「ああ~うぬぬ、先越された」

村山が悔しがっているのを見ていた尾花沢はいきなりとんでもないことを言う。

「あの、百花さんって誰ですか・・・・・・?」

狭い村で子供なんてあまりいないのだから知っているかと思っていたのだが。

「この村で唯一の高校生だよ」

「そうそう」

「・・・・・・?」

空気が凍りつく。いや、凍りついたのは僕だけで村山はなんとか思い出させようとして説明している。何故か頭が痛くなってきた。

家に帰って気をまぎらわせるために本を読む。午後四時半頃電話がかかってきた。電話の主は村山愛。勉強を教えてほしいという。五分後村山は勉強道具を持ってやってきた。中三なので高校入試を控えているのでそれなりに頑張っているようだ。どこの学校に行きたいかと聞いてみると僕の通っていた高校だった。この村から通おうとするとそこしか選択肢はないのだった。

「寮のある学校ならもっとレベルの高い高校もあるんだぞ、成績は良いようだし目指してみたら?」

「私はこの村でずっと暮らしていたいんです」

「そうだよね、僕もそうして高校を選んだから」

「働く事になったらきっとこの村から出ないといけないし、それまで少しでも居たいから」


静かな夜、窓の外には人を寄せ付けないが広がっている。人を寄せ付けないような暗闇を眺めながら物思いにふける。


回想 87.12

近所に住んでいたおじいさん。その息子はトラックドライバーだった。その兄さんが三重県に荷物を運ぶついでに伊勢神宮につれていってくれるというので乗せてもらったことがある。お兄さんは中学一年生の僕にいろいろなことを教えてくれた。運ぶ荷物や景色の事をまるで社会科の先生のように丁寧に教えた。

「トラックというのは日本の血液みたいなもんだ。止まったら日本は死ぬだろうな。そして夜の高速は大動脈だ。よく見ておくといい」

夜の高速道路は予想以上にトラックばかりだった。マイカーは全然走っていない。僕の住んでいる外の世界は高い建物があって多くの人々が暮らしているのは知っていたが、しかしそれを支えるトラックの群れは衝撃だった。


つづきます。

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