サンライズ

湯殿たもと

文字の大きさ
10 / 20
夏休み編

サンライズその10 夏休み編おまけ

しおりを挟む
サンライズその10 夏休み編おまけ



旅行から帰って来てしばらく経ったある日のこと。ジリリリンと電話が鳴る。家の電話にかけてくるのはセールスかいたずらか、と思いながら出てみると九尾の狐。またか。

「ひので君、こんどうちで夏祭りやるんだけど来ない?」

「夏祭り?」

夏祭りだったらこの前みたいな変な目には遭わないだろう。それに「うちで」と言ってるから近所だろうし。

「よし行く」

「今週の日曜日の夕方だから来てねーっ」

「おう」

電話を切ると、はるかがすぐさまやってくる。人の電話の内容を気になってしかたがないらしい。

「今度はどこ行くの?」

「夏祭りだ、一緒に連れてってやろう」

「やった!」

火祭りや闘牛祭りじゃなくて夏祭りというからには危険なことはないだろう。屋台が出て盆踊りして、そういうのだけ。姉さんも暇だというから、三人で行くことにした。


そして当日。天気は快晴。夕方からというから、涼しい部屋の中でぐうたらしてから出陣。外に出ると入道雲がどんと空を支配している。

「はるか、ちゃんと帽子かぶったほうがいいよ」

「はーい」

九尾の狐が言っていた神社は遠くない。歩いて十分、屋台が並んでいるのが見えてきた。たこやき、わたあめ、焼きそば・・・・・・などなど。かき氷を買って涼みながら歩くと九尾を見つける。鶴島さんも一緒だった。

「やっほー、どう?楽しんでる?」

「ああ、ここは屋台の種類も多いし賑やかだな」

「凄いでしょ、まあみーんな私の部下なんだけどね」

「えっ」

「ほんと?」

「マジ?」

「マジだよ」

確かに見覚えのある顔もいるような・・・・・・いや気のせいか。九尾の部下は何回か見ているが正直覚えられない。

しかし仮に九尾の部下が大量にいたとしても、間違いなくお祭りは賑わっていた。近所の人がたくさん来ていたし、中学まで同じ学校に通っていた友達にも何人も会った。

いよいよ暗くなってくると盆踊りをして、そしてその後は疲れたので人気のない神社の裏のほうに向かった。

「ここならゆっくりできそうだな、あと何食べようかな」

「ひーくん食べ過ぎじゃない?」

「まだ広島風お好み焼き食べてないぞ」

「大阪のは食べてたじゃん」

「あれは別の食べ物だろ」

「だから、食べ過ぎ」

そんな会話をしていると、この神社にも碑がたっているのを見つけた。この前の山形の神社にもあったが、ここにあるのは初めて気がついた。読んでみると、江戸時代にいた九尾の奥さんのお墓、ということらしい。ん?あいつは女だろう。女だけど奥さんがいたのか、それとも昔は男で性転換したのか。

お好み焼きはさすがに食べ過ぎなので、その日はそれ以上何も食べずに帰宅した。はるかはよく解らない謎のお面をつけていた。そんなお面売っていたっけか。

「九尾さんにもらったんだよ」

「そうなのか、良かったな」

ちょっと不気味なような気もするけど、不思議でどこか惹かれるお面だった。


後日、九尾に昔の奥さんのことを訊いてみた。

「私はそのころは男で、侍だったんだよ、でもどこにも仕えないで、いろいろやってたよ」

「いろいろって」

「んーと、あんまりおおっぴらに出来ないことかな、てか本題はそこじゃないよ、そんな暮らしの中で、身寄りのない女の子を貰ってきたの」

「それは誘拐じゃないのか」

「だって放っておいても飢えて死ぬかもしれにいじゃない」

「・・・・・・そっか」

「で、その娘を嫁にしたんだけど、十年くらいしたある日、突然いなくなっちゃったんだよ」

「・・・・・・」

「それで、探しても見つからなかったから、あのお墓を立てたんだよ、どこかで生きてるといいかな、って思ったけど、まったく手掛かりとかなかったし」

九尾はやはり、妖怪なんだなぁ、と正直思った。なんというか、人としての心が薄いというか。あまり信頼しないほうがいいのかもしれない。



続きます。次回から秋のお話です。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...