狼の巫女

湯殿たもと

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狼の巫女 8

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狼の巫女8



翌日朝。何やら辺りが騒がしい。かおる君に聞いてみると殺人事件があったという。こんな小さな町で殺人事件か。想像もつかない。

しかし、時間が経つと正しい情報が入ってくる。殺人事件ではなく熊か何かに誰かが喰われたらしい。

バイトに行く準備を済ませて、神社で掃除をしている雪音のところに行く。誰が喰われたのか僕たちは知らなかったので聞いておこう思ったのだ。神社には雪音の他にも人影が見えた。・・・警察か?しかし、何故。


「また熊ですか、個人的に私は狼と疑ってるんですけどねぇ~」

「狼なんていない。熊に決まっている。死体を調べれば小学生でもわかること」

「どうでしょうかねぇ、貴方の力があれば狼である証拠を消すことなんてたやすいんじゃないですか。それとも貴方が直接手をかけたのでは」

「失礼なことを言うな。私は昨日の晩は家から出ていない」

「ほう」

「とにかく私でも狼でも無い。調べても無駄。帰れ」

「帰りますよ、まぁ狼については調べる準備はできていますし」

警官が外へ出ようとするところで警官と目を合わす。いかにもおっさん、といった顔つきだった。

「あら、貴方は、藤島さんとこに泊まってる大学生ですか、診療所の院長が亡くなったのはご存知ですよね」

「院長が死んだのですかっ?」

「あらご存知無い?熊か何かに喰われたんですよ、私は狼と疑ってるんですけどねぇ」

「狼なんているはず無いでしょう。絶滅したんですから、馬鹿なこと言わないでくださいよ」

自分は狼がいることを知っている。しかし放っておいてと言われているし、ここで正直にいう必要は無い。しかし警官は自信を持って言う。

「狼はいるんですよ」

「だとしたら何故ここに来たんですか、雪音は関係無いでしょう」

「雪音さんを含めたここの歴代の巫女には超能力があると言われています。超能力で狼を操っていれば雪音さんが殺人を犯した、ということになります」

「超能力なんて証拠になりませんよ」

「しかし、何かによって人が死んでることには変わり無いんですよ。私はそれを見逃したくない。犯人を捕まえて住民の方に安心してもらいたい。狼なり熊だったら対策をとりたい。そうでしょう?」

「まあ、そうですけど。でも雪音にも狼にも院長を殺す理由が無いと思うんですけど」

・・・無いわけでは無いか?昨日あの少女が病院に連れていかれたこととか。しかし余計なことは言わなくて良い。

「あら、擁護するんですか。貴方、さっさと藤島家を出たほうが良いですよ、頭がおかしくなる前に」

「ふざけたことを言うな。雪音やかおるといて頭がおかしくっていうのか」

「なりますよ、おかしくならないのは元からおかしい人だけ」

そう言って鳥居の脇を抜けて帰っていった。

この一部始終を雪音は見ていた。雪音は目に涙を浮かべながら激怒していた。

「あそこまで言われたらただじゃおけないよ、あいつはみずほまで馬鹿にした。私だけならともかく」

「雪音、気持ちは判る。でも落ち着け。疑ってるのはあの警官だけだろ、それに事実として雪音が狼を操ったわけでも直接殺したわけでも無いんだろ、なら捕まらないし良いんじゃないのか、怒ったってなんにもならないぞ」

「人には名誉ってもんがあるの。藤島家の巫女として許すわけにはいかない」

「許すわけにはいかないって、まさかあの警官を・・・」

「え、違う違う。殺したりはしないよ、法律で裁かれるようなことはしない。安心して」

その後診療所に向かう。院長の他にけが人はなし。東京の患者も無事だったのだがこんな証言をしているのだ。

「あれは間違いなく狼です。犬のような声でうーと唸って吠えていました」

さっきの警官はうんうんと頷き話を聞いていた。まずいな。

そして、夕方には調査団が入ることに決まった。警察と隣町の猟師が明日、山に入るらしい。


夕食の時。雪音がこう言う。

「私が院長殺害の犯人だと疑われてる。でも私じゃないっ。信じてっ」

「俺は兄として、雪音を信じる」

「僕も信じる。皆の誤解を解くように頑張る」

「狼なんていないんだろ、どうせ熊の仕業だ、狼がいなけりゃ雪音が疑われることはない」

「狼はいるんだよ、僕の知る限り三頭」

「え」

「は」

「隠してた訳じゃない、ええと、そっとしておいたほうがいいかなって」

「その狼が捕まったら、雪音も疑われるってことか」

「なるほど、狼達を逃がせばいいのね、ふんふん、それくらいなら簡単」

雪音はにやそと笑みを浮かべた。


続きます。もうすぐ最終回です。
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